FC2ブログ

【トレード】損切りが出来ない人へ⑥

「リスクと向き合う」

これが最初から出来ていない人、考えようともしていない人に「損切り」が適切にできるとは思えない。
そう考えるから、投資や運用を行う前段階の基本的なことを書いた。

そのうえでリターンをどういうやり方で目指すのか。
運用戦略(ストラテジー)を決めていくこと。
「損切り」はその運用戦略によっても判断すべき基準が全然変わってしまうのだから。

自分は株クラスタの住人なので、株の視点で考えると。

まずはトレーディング・スパン(投資・運用の期間)ついて考えてみる。
日計りやスイングなどの短期でいくのか、中長期でいくのか。
それだけでもメリット・デメリット、向き不向き…様々考えられる。

【短期運用】
(運用資産規模)
少ない資金であれば、短期で収益を目指すことは十分にワークするだろう。
ただ大きな資金になれば、自らの注文執行で価格を動かしてしまい、結果として「流動性リスク」が大きなコストになってしまう。
そのためヘッジファンドや機関投資家の運用ではHFTを除いて「日計り」はあまり見られない。規模の拡大はシステム的な対応ができない限り、かなり困難だろう。
将来、ヘッジファンドのファンドマネージャーや大きな資金運用を目指すのであれば、規模の拡大が難しい短期の運用戦略はあまり向かない。
短期でやってると、どうしても「買い」と思った直後に「売り」に変わったり、結構相場に対する対応も臨機応変にならざるをえなくなる。よく言えば「臨機応変」だが、なんで買ったか、売ったかの説明はとても難しく、お金の出し手である投資家に説明するのがとても難しい。
ヘッジファンドの運用者であれば、投資家に対して自分たちがどういった投資・運用哲学を持ち、どういったリターン・リスクプロファイルを持っているのか、それをどう管理しているのかなど説明が求められる。感覚が大事な短期運用では、それを論理的に説明するのは…かなり難易度が高くなる。

(収益の源泉)
短期運用においての収益の源泉は「ボラティリティ」だ。値動きがなければ収益機会は減るし、値幅も稼げない。となると少ない資金なら中小型株中心になってくるだろう。実際に東証一部の売買シェアは圧倒的に外国人投資家が多いにも関わらず、新興市場は個人投資家が多いのはそういった背景もある。
ただし、HFTはまた別の話になる。彼らは徹底的なデータの解析と確率・統計の世界を超短期取引の中で繰り広げている。価格変動の再現性の高さや執行リスクなどをみていくため、比較的流動性の高い銘柄群を好む。逆に、相場が暴落したときなど、極端な動きになったときに、彼らがスーッと市場から消える理由もそこにある。システムによるそういったアプローチが可能ならば、話はちょっと変わってくる。

(限定的なリスクと資本効率)
ただオーバーナイトでリスクを取らないで済むことは、お金の色によるところもあるけれど、資本効率がとても高くなるし、夜間のアンコントローラブルな時間帯にポジションを持たないことが、大きなリスク低減要因にもなりえる。コンスタントに毎日収益を積み上げてくれて、オーバーナイトでリスクを持たないという運用は、ある投資家層にはとてもありがたい存在にもなる(例えば証券会社などの金融機関の自己売買など)。

(環境依存度)
でも実際には、日計りで稼ぐことは2010年以降、かなり難しくなってきたのが実情だ。アローヘッドの稼働、HFTの急激な増加(※)。日計りに依存してきた証券ディーラーの多くが、より高速な環境で優位性を持ったHFTという存在に駆逐されてきた。取引所が推し進めた「呼値適正化」も人間が目視で動きを追うことをより困難にし、機械優位になってしまった一因とも感じている。
また環境依存度が非常に高いことも理解しておいた方がいい。トレーディングシステムが速いか遅いか、板情報や価格の更新が速いか遅いか。それだけでも損益が大きく様変わりしてしまうことも少なくない。HFTレベルになれば、LANケーブルの長さという信じられない理由で揉めたりもする。
また執行コスト(手数料や場口銭)が変わるだけでコスト控除後の収益が大幅に変わってしまう。大昔(といっても自分が新人だった頃)、「有価証券取引税」なんて代物があって、「一カイ二ヤリなんてしても利益残らんから、ちゃんと相場取れ!」と上司に怒られたもんだった。有取税が復活するとは思わないけど、そういったコストが増加すれば短期取引は壊滅的なダメージを受けることもある。大手HFTなどでは、各国の取引所や制度、インフラ環境を調査する専門の担当がいたりする。参入の半年前とかにその国にいき、事前に十分な調査を行い、収益性が確保できるか調べたうえで参入を決めるところもある。

(※)自分はアローヘッドの稼働は時代の変化、テクノロジーの進歩を考えれば、正しかったと思うし、遅かったとすら思っている。もしそれがなければ、世界の取引所間の競争にJPXは大きく取り残され、回復不能な致命的な状況になってしまっていたかもしれない。問題なのは、欧米でHFTが急速に増えていたにも関わらず、そういったことを学ぶこともせずに、どん臭いシステムに守られている危うさに危機感を感じることのなかった我々にこそ問題があると感じている。

(適性)
短期で取引を行う(HFTなどを除く)。
ここで求められてくるのは、センスやメンタル、決断力といったものだったりする。スポーツをやっていた人やギャンブルが好きな人が比較的向いているのかな。

自分が興味のある商品で、やってみたいと思ったことを研究するのが一番だとは思う。
「好きこそ物の上手なれ」
結局、好きなことに取り組んでいないと、モチベーションも出てこないしね。
でもどういった投資や運用を行うかで、リスク・リターンのプロファイルも変わってくるし、取り組むべき課題や、目指すべき未来も変わってくる。

次回は中長期運用について書いてみます。

コメントの投稿

非公開コメント

No title

はじめましてこんにちは
この「損切りができない人たちへ」シリーズ、興味を持って読ませていただいています。過去の自分のトレードスタイルを振り返り、これから先どう進んだらいいのか、あれこれと考えるきっかけとして。
まだまだ迷いの中ですが(笑)

Re: No title

> はじめましてこんにちは
> この「損切りができない人たちへ」シリーズ、興味を持って読ませていただいています。過去の自分のトレードスタイルを振り返り、これから先どう進んだらいいのか、あれこれと考えるきっかけとして。
> まだまだ迷いの中ですが(笑)

コメントありがとうございます。
なにかきっかけになったり、受け取っていただけるものがあれば嬉しく思います。
プロフィール

tetsu219

Author:tetsu219
元証券ディーラーです。
二十数年ディーラーやって、シンガポールにも一時期行ってヘッジファンドを立ち上げてみたりと色々やってきて、とある証券会社でディーリング部長になり、今はシンガポールでヘッジファンドの設立・経営をやっています。

基本仕事ネタです。
更新は気が向いたときだけ(^^;
でもこのブログを通じて運用を志す若い世代の人たちに何か伝えられること、その一助になればと思っています。

初期は限定記事にしていましたが、今は開き直って全部公開にしてますのでお気軽に(笑)

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR