【トレード】運用手法色々
運用手法ってホント色々ある。
マーケットはとても奥深く、幅広い。
商品も多様だ。
株式、債券、為替、商品。
金商法に従えば、大きくこの四つのカテゴリーに分類される。
さらに最近では仮想通貨なども加わってきている(金商法の整理はまだだと思うが、すでに投資対象商品として取り扱うヘッジファンドなども生まれている)。
日本でファンドと言えば「投資信託」というイメージだろう。
基本的には株式投資信託といえば、ロングオンリー(買いのみ)という印象だが、投資対象は日本株のみであったり、海外株も含まれていたり、パッシブ運用と言われる指数連動型のもの、アクティブ運用(銘柄選別の能力によってベンチマークを上回ることを目指す運用)と言われるもの、派生商品を使ってレバレッジをかけるものや、指数と逆に動くように設計されたインバース型など様々だ。
それ以外にも債券投資型や色んな投資信託があり、それらは日本では非常に一般的に知られている投資対象商品でもある。
海外で幅広く普及しているのは「ヘッジファンド」。
特に富裕層や機関投資家向けに展開している場合が多いし、特に日本ではなかなかリテール層には広がっていない。
もちろんそこには理由はあるんだけど、ここでの目的はそこにはないので割愛する。
ヘッジファンドの運用手法(ストラテジー)というと、それこそホント様々だ。
グローバル・マクロ
ロング・ショート
CTA
マルチ・ストラテジー
アービトラージ
イベント・ドリブン
レラティブ・バリュー
債券
ディストレス証券
…etc
HFTも広義では資産運用会社・ヘッジファンドが扱っている運用の一つと言ってもいいのかもしれない。
マーケットメイクとも呼ばれるこの運用はちょっと特殊だけれど。
日本株ヘッジファンドで圧倒的に多いのはロング・ショート。
比較的多いのがマーケット・ニュートラルという形で、売りと買いを拮抗させて相場変動によるリスクを抑制する。βを相殺し、αをリターンの源泉として運用を構築していくやり方だ。
日本人が運用している日本株ヘッジファンドは、規模も兆円規模に届いているところはなく(自分の知る限り)、残念ながらニュースとかで「ヘッジファンドの運用で相場全体が左右されてしまった」というような原因になるところは一つもないだろう。
どちらかといえば売りポジションと買いポジションを拮抗させていることが多いので、一般的に想像されているより、よっぽど堅実でリスクをコントロールした運用をしている場合が多い。
おそらく多くの人のイメージされるような日本市場に大きな影響を与えるような規模のヘッジファンドとなると、欧米のものがほぼ全てと言っていいだろう。
ただそんな彼らも投機的(ギャンブル的)にただ仕掛けているような訳ではない。
そもそもそんな投機的な運用を行っているところに投資したいというプロの投資家なんてそうはいない。
ただ如何せん規模が大きい。
彼らにとって日本市場はグローバル市場の中の一つに過ぎなくても、時価総額もそれなりに上位である以上、ある程度の資産を配分している。
流動性もあるし、国内制度も整っており、取引所のシステムも比較的信頼できる(先日問題が起きたけど)。
彼らの投資行動が日本市場に与える影響は確かに大きいものがある。
さてちょっと話がそれてしまったので話を戻して。
もしあなたが運用者として生きていくことを選択しているのであれば、将来自分が何を目指していきたいのかによって、これほどまでに運用には種類も違いもあり、どういった運用を学んでいくかでその道への可能性は大きく左右されるということだ。
だから最初に考えるべきことは沢山ある。
もし自己完結型である個人投資家としての道を望むのであれば、それが最も自由度が高く、好きなようにやれるし、投資対象商品も好きに選べばいい。仮想通貨がブームならそれに乗るもよし。株をやっていても、為替の方が面白そうだと思えばFXをやればいい。税金も一番安く済むしね。ただリスク管理をしっかりと出来ていないと人生踏み外す危険も多々ある。資産を吹き飛ばすだけではなく、レバレッジを多用しているような人は、借金抱えて終わるなんてことも少なくないだろう。自己資金を溶かしてしまったから、ディーリングやりたいとかいう人もたまに来るけど、申し訳ないが話にならないし、この仕事をバカにしないでもらいたいとすら思う。
個人投資家という道は自由度が高い分、自己責任で全て完結する。うまくいってもいかなくても自分でその結果を全て背負う覚悟がないとうまくいかないだろう。自分が知っている著名個人投資家の人たちは、みんなリスク管理をすごくしっかりされている印象が強い。そういう人たちだからこそ、成功されているんだろうなと思う。
次に自由度が高いのは地場証券のディーリング部門だろう。会社の資金力・資本力や、運用への理解、ルールや制度、運用環境の差異はある。損失限度額の設定や、リスク許容度、運用対象商品なんかは会社のマネジメントや管理部門がどこまで理解し、協力してくれるかによっても相当な違いがある。でも少なくとも会社がOKしてくれる範囲なら、短期でやろうが、中長期でやろうが、アービトラージやろうが、自分で柔軟に収益機会を狙っていける。広義では他人のお金を運用させてもらうのだけれど、「自己売買部門」と言われるメリットでもあるだろう。あくまで運用するのは会社の自己資金だから、会社がOKならそれでいいってことになる。
ただ金商法の下、かなり高度な管理体制を求められる証券会社という立場で、取扱商品や運用を柔軟に行える環境を構築するのは簡単なことではないということは頭の片隅には置いておいて欲しい。自分もここまで相当な苦労をして、経営の理解や様々な部門に協力してもらって、ようやく現在がある。
成功報酬率は、他人のお金を運用する仕事の中では異常と言われるほど高い。その業界の人たちに話すと目を丸くして驚かれるレベルだ。でも基本的には所得税の対象になるため、個人投資家のそれよりはかなり手取りは減ってしまう。運用資産規模は、その会社によって差異がある。でも一部の大物個人投資家を除いて、個人よりは大きな資金を早い段階から扱わせてもらえるだろう。
ただ残念なことに、多くの地場証券がディーリングから撤退してしまっており、ディーラー数も激減している。ましてや未経験者の採用をやっている会社は非常に少なくなってしまっている。
投資信託やヘッジファンドなどの、他人のお金を預かって運用する場合はもっと厳しい。
投資信託には目論見書があり、運用指針を明確に示し、それに従った運用を行うことで投資家に販売している。
ヘッジファンドにはPPM(Private Placement Memorandum)があり、同じようにそこには運用指針が明確に示されている。
一部、例外はあっても、基本的には投資対象商品や、どういった運用戦略でリターンを上げるのか?どういったリスク管理を行っているのかなど詳細に説明し、理解してもらったうえで投資家に投資をしてもらう。
どちらも運用戦略や投資対象商品を好き勝手に変えることは基本的には出来ない。
また投資家に説明し、理解を得るためには、自分の運用戦略や方針、リスク管理についての説明を論理的にできる必要がある。特にヘッジファンドであれば、相手にするのはプロの投資家だ。「なんとなく上がりそうな銘柄を買ってます。」「チャートがよい銘柄を買ってます。」なんて抽象的な説明ではとても相手にしてもらえない。
さらに成功報酬率はかなり低くなる。10年前は「2%、20%(トゥー、トゥエンティ)」と呼ばれて、20%の成功報酬率が一般的だったけれど、最近では15%でも高いと言われることが増えている。さらにそれはあくまでファンドから運用会社に支払われる報酬額であって、ポートフォリオ・マネージャー、ファンド・マネージャーにそれがダイレクトに支払われることも少ない。そしてそこから所得税も支払わなければならない。ただ「運用資産規模の拡大」という可能性は最も高い。そこを目指せる運用手法(ストラテジー)である必要があるけれど、それに対応できるのであれば数百億、数千億(欧米なら兆円規模)すら目指すこともできる。
他人のお金を預かる運用者としての将来を目指すのであれば、どういった商品を取り扱い、そこで何を収益の源泉として捉え、どの程度のリターン(ターゲットリターン)を目指すのか、リスクをどうコントロールしているのか、それらを論理的に説明し、再現性のある運用を行えるようにならなければならない。
シャープ・レシオ、銘柄集中度、損失管理、最大損失、その損失を回復するまでどの程度の期間を要したのか、その収益の源泉がどこにあるのか、何を取りにいってどういうアプローチをしているのか…投資家からは様々なことを問われる。
それを説明していける運用者になることが求められる。
そういう意味では、一日の間に目まぐるしく強気弱気が入れ替わるような日計りとかの短期運用では説明が難しいのも事実。
そういった面からも、もしあなたが将来ファンドなどの運用者を目指すのであれば、短期運用ではないかもしれない。
一方で、短期運用のニーズももちろんある。資本効率は高いし、勝率が安定しているのであれば、これほどありがたい存在はない。日計りだけでオーバーナイトポジションを持たずに利益を積み上げてくれる存在。自分もかつて現役だった頃に、当時の部長に「使用している現金で計算したら年率2000%を超える利回りだよ!」と嬉々として言われたことがある。でも自分が運用できる資産規模の限界は強く感じていた。
短期であれ、中長期であれ、勝つためのプロセスをどう確立し、再現性を持たせていくか。
勝てる運用者になるためにはそれが大切だ。
感情のままにリスクを振り回していたら、それは出来ない。
自分の運用を客観的に分析し、反省・修正を繰り返しながらその精度を高めていき、運用額を増やしていく。
日々、変動するマーケット。
同じ日は二度とない。
そんな中で再現性のあるプロセスを作り上げていくのは容易なことではない。
相当なハードワークが出来なければまず無理だろう。
でもそれを出来るようになるからこそ、プロの運用者であり、投資家から信頼される存在になれる。
「自分が勝負をしたいから」
「自分のお金では勝負できないから」
という理由で他人のお金で運用するのではなく、他人のお金を預かるだけの資格を得るために運用と向き合い、プロになって欲しいと願う。