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【トレード】運用手法の選択

若く、これから運用者としての道を目指すあなたへの質問です。

「あなたは将来どんな運用者を目指すのですか?」

・ある程度お金を稼いで個人投資家として大物になっていきたい。
・証券ディーラーとしてより大きくなっていきたい。
・ファンドの運用者として、さらに大きな運用資金を扱えるようになっていきたい。

どれも選ぶのはあなた自身であって、どれがいいとか、悪いとか、どれが正しいとか、間違っているとかはありません。
自らの夢や未来は誰のものでもないし、自分で決めていけばいいと思います。

もしウチに入って、ウチで運用経験を積んでいったとして、その先に道が分かれてしまうことがあったとしても、それでも構わないと思っています(ディーリング部長が言うセリフじゃないでしょうけど)。
誰かに縛られたりすることもなく、自由に選べばいい。あなたの人生なのだから。
ただ人のお金でリスクを取らせてもらう以上、そこには真剣であり、誠実であって欲しいとは思いますが。

さて、さっきの答え。
人によって違うでしょうし、それが当たり前だと思います。
ただ目指すものによって、運用手法についてはしっかりと選択していかないと、その運用手法ではそっちの道には向かないとか、合わないというものも出てきます。
その辺を考えていくヒントになるようなことをお伝えできればいいなと思います。

まずはざっくりと運用期間に分けてみましょう。
・短期運用
・中長期運用

地場証券のディーリングといえば、前者の短期運用のイメージが強いでしょう。
それしか認めてくれない証券会社も多いと思います。
ただウチでは中長期運用をやっている人がかなり沢山います。
そのためには前提条件となる運用ルールが、それを許容しえるルールになっているかの確認が必要です(ウチではそのために様々なルールを再構築しました)。

短期運用は、資金の上限が比較的低い個人投資家やディーラーの運用手法としては、十分に魅力的だと思います。
保有期間が短くて、必要資金が少なければ、資金効率は高いものが得られます。
また「切った張った」の勝負というピリピリとして緊張感もより強く感じられるでしょう。
そういった面からも、メンタルコントロールがより難しいのも短期運用の特徴です。
性格的には、勝負勘のある人、スポーツやっていたり、ギャンブルが得意な人、ゲーマーの人、決断力のある人なんかに向いているといえます。

一方で、この手の手法は大きな資金の運用には向いていません。
一定水準を超えてくると、流動性という壁にぶつかり、自分の買いで価格を押し上げ、自分の売りで価格を押し下げてしまうような執行コストや、玉を捌くことが困難になるようなこともあります。
日計りで、手動で回せる資金には限界があるということは頭に入れておいた方がいいでしょう。
また取引回数が多くなるため、執行コストが高いと通用しない(見た目の利益があっても、コスト控除すると儲かっていない)。システムの執行速度が遅いだけでもパフォーマンスが悪化しやすい。環境によっても左右されがちな取引手法です。
HFTのようにシステムを駆使し、超高速なインフラを構築し、ものすごく大量の銘柄を同時多発的に執行するような環境を構築できるのであれば別ですが、目視でキーボード叩いている限り、取り扱える資金量の限界点はどうしても低くなりがちです。
短期で取引を行う際、人間が目視で監視しきれる銘柄数には限りがあり、最適に執行できる金額にも限界があるのだということを知っておく必要があります。
ひと昔前の相場環境なら、まだそれでもある程度こなせたかもしれないけれど、今はこれだけ高速化が進み、自分達より優位な環境を持つHFTなどが存在している時代です。
短期運用で高い勝率を残すのって実はかなり難易度も上がっているのです。扱う資金が大きくなればなるほど、そのコントロールは難しくなります。
もし将来、ファンドなどの運用者になりたいと思っていながら、短期運用はあまり向いていません。
個人投資家として成功していきたいとか、証券ディーラーとして一線で活躍していきたいというのであればいいと思いますが、もしファンドの運用者になりたいと思うのであれば、取り組むべきは長期運用でしょう。

長期のアプローチには様々あります。
ただほとんどの地場証券のディーリング部門には月間損失限度額というものが設定されています。
会社によっては、一日の限度額すら決めているところもある。
そういった会社で長期運用するのは現実的には無理でしょう。
まずは長期運用を許容しうる運用ルールになっているかの確認が必要です。
ただ月間損失限度額などのルールは、ある意味会社や組織を守るためにもある程度必要なものだったりします。
ディーラーの中には、稼いだ分は飛ばしても構わないと本気で思ってしまっているディーラーも少なくありません。
会社側にかかっている様々なコスト(人件費やオフィス、什器、システムなどの費用)を気にしてくれるディーラーの方が少ないのが現実です。
リスクを振り回し、全部飛ばしてしまえば、その間に払った給与や報酬、その間の運用にかかった様々な会社の負担は全部赤字として会社に残ります。
そんなディーラーばかりになってしまえば、会社の収益は不安定になり、結果として組織を維持できなくなったりしてしまう。
一部のそういったディーラーによって組織が大きなダメージを受けないように一定のセーブをかけることも必要な面もあるのです。

もしそういったルールがあると、長期運用でもロングオンリーなどの「純粋な投資」という観点だけで戦うのは難しいでしょう。
どうしても下落相場では損失が出てしまう。
結果として、ロングショートなどによってβリスク(相場の方向性による変動リスク)を抑制し、α(銘柄選別の能力)によって収益を上げるようなヘッジファンドなどが行っている絶対リターン追求型の運用にしていく必要はあります。
この運用手法であれば、保有期間が長い分執行リスクやコストがリターンに与える影響は限定的になり、規模の拡大は追いやすいと思います。
もしあなたが将来ヘッジファンドの運用者になっていきたいと願っているのであれば、やはり長期運用を志向した方がいいでしょう。
一方で、「投資としての長期運用」をしたいと思うのであれば、おそらくは個人として取り組んでいった方がいいかもしれません。月間損失限度額などの制限がある以上、ロングオンリーでは厳しい局面がどうしても出てきてしまうから。

派生商品については、うちはそれだけ別に切り分けて育成に取り組んでいますが、これも実はアプローチによって様々な可能性を持っています。
先物の切った張ったの短期売買。
アービトラージ的な運用。
オプションなどを駆使した運用。
そしてマクロ的な視点からの大きな運用。

鞘取り的な運用や短期的な運用だと、これもまた運用資産の限界点は低いので、ファンドにはあまり向いていないでしょう。
個別銘柄のロングショートなどのアプローチが、どちらかといえばミクロのファンダメンタルズに着目するのに対して、派生(指数)の運用でみるべきファンダメンタルズはマクロのファンダメンタルズであったりします。
海外の先物などももっと柔軟に取引できる環境と運用者が増えてくれば、数少ないグローバルマクロの視点を持ったヘッジファンドマネージャーはこちらから生まれてくるのかもしれません。

それぞれの運用手法によって、何に着目し、リターンを得ようとするのかも違ってきます。
そして資産運用の世界では、預かる資金の性質によっても影響されます。
自分が目指すものと、自分の得意とする運用をいかにマッチングさせていくかも、夢を実現するうえではとても大事な一歩です。

その会社が許容してくれるリスクの取り方や、運用ルール。
その中でどういった選択肢が取りえるのか。
自分の個性、性格に向いているのはなんなのか。
そのうえでどういった道を目指していくのか。
それにより向いている運用手法がなんなのか。
様々なことを整理して、選んでいかないといけません。

「あなたはどういった運用がしたいのですか?」

おそらく最初に聞かれるこの質問。
まだ何も知識も経験もない以上、判断していくのは難しいかもしれません。
でもその中で先輩達と相談しながら決めていかなければならない。

まぁしばらくやってみている中で、違うと思えば変更することができないわけではありませんが、あなたの未来を決めるとても大事なことだから。
よく考えて、後悔のない決断をしていって欲しいと願います。

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プロフィール

tetsu219

Author:tetsu219
元証券ディーラーです。
二十数年ディーラーやって、シンガポールにも一時期行ってヘッジファンドを立ち上げてみたりと色々やってきて、とある証券会社でディーリング部長になり、今はシンガポールでヘッジファンドの設立・経営をやっています。

基本仕事ネタです。
更新は気が向いたときだけ(^^;
でもこのブログを通じて運用を志す若い世代の人たちに何か伝えられること、その一助になればと思っています。

初期は限定記事にしていましたが、今は開き直って全部公開にしてますのでお気軽に(笑)

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