【マーケット】続・株価指数銘柄入れ替え
NYダウからGEが外れるという話を書きました。
「Dow Jones Industrial Average」
という名前にあるとおり、NYダウは、元々ダウ・ジョーンズ社が銘柄選定および算出を行っていた株価指数です。
今ではその所有権が譲渡され(2010年にCMEグループに譲渡)、現在ではS&P ダウ・ジョーンズ・インデックスによって算出されています。
日経平均株価(日経225)は、指数名にもあるように日本経済新聞社がその権利を保有し、銘柄の選定および算出を行うものであり、登録商標や知的財産権は日経新聞社に帰属しています。
取引所が、その日経平均株価を原資産とした派生商品などを上場するにあたっては、一定の利用料を日経新聞社に支払っていたりします。
前回のブログで取り上げた2000年4月の「日経平均採用銘柄の大量入れ替え」はちょっとした事件という印象を受けています。
それによって株式市場にとんでもない影響が出たからです。
その辺は自分が書いた書籍でも取り上げていますので、そちらをご覧ください(笑)
「株式ディーラー」プロの実践教本 百戦錬磨のディーリング部長が伝授する Kindle版
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で、それで終わりってのもなんなんで…(^_^;)
このところ話題になっている「NT倍率」の観点から、そのときの市場の動きや、それが与えた影響を見てみたいと思います。
下記のチャートは1999年~2001年のものです。
1999年年初を100として、日経平均株価とTOPIXの動きを点線で示し、青の線でNT倍率の推移を示しています。
期間①としているところはTOPIXが日経平均株価をオーバーパフォームし、NT倍率が低下しています。
この期間のこの差は、指数構成銘柄の違いによるものが主因となっています。
当時は「ITバブル」全盛期。
時価総額1位2位がソフトバンクや光通信という状況。
TOPIXにはこれらの銘柄が含まれますが、日経平均株価には含まれていない。
ITバブルを代表する銘柄群がいくら急騰しても、日経平均株価には何の関係もないために、TOPIXが上昇していっても、日経平均株価がついていけない状況となりました。
日中のボラティリティもTOPIXの方があるため、同じ先物やるにしても日経平均先物ではなく、TOPIX先物でやっていないとかなり厳しい状況でした。
で、期間②としたのが問題の日経新聞社による「日経平均株価採用銘柄の大量入れ替え」によって日経平均株価が大きなダメージを受け、TOPIXをアンダーパフォームしてしまった時期です。
完全にITバブルに取り残された日経平均株価を時代にマッチした株価指数に変貌させようと、一気に入れ替えを実施したのですが、これが市場には大変な影響を与えました。
この仕組みを理解している人にとってはビック・ディールのチャンスになりましたけど、理解していない人は右往左往するか、エライ目にあったか…。
詳細は書籍の方にもある程度書いてあるので、そちらでお願いしたいのですが、ざっくり書くと、
①除外される銘柄群が大きく売り込まれ(指数にまだ採用されている状態)
②新規組み入れ銘柄が大きく買い上げられ(指数にまだ採用されていない状態)
③②で思いっきり割高な状態になったまま入れ替えが実施される
④指数入れ替え特需で割高な状態になった新規採用銘柄群の株価がバリュエーションの調整により大きく調整する(指数に採用された状態)
⑤IT株指数と化した日経平均株価は、ITバブル崩壊とともにさらに組み入れられたIT関連株の下落に拍車がかかりアンダーパフォーム
といったところでしょうか。
それ以外にも、当日の動きとしては裁定業者による先物の売りやらなにやら、とんでもない需給要因があったことはあったのですが。
NT倍率は、2000年4月の高値12.36から、2001年10月には9.45まで下落します(▲2.91)。
しかも、2000年4月14日12.36から、4月25日10.97までは、わずか7営業日で▲1.38の下落。
こう書くと実戦でNT取引やっていない人には実感が沸かないかもしれません。
4月14日
日経平均株価 20434.68円
TOPIX 1653.7
NT倍率 12.36
4月25日
日経平均株価 18272.33円(▲2162.35←まさに暴落)
TOPIX 1665.28(+11.58←上昇している)
NT倍率 10.97
もし4月25日のTOPIXを基に、4月14日時点のNT倍率で日経平均株価を換算してみると…
20577.7円
実際の日経平均株価は18272.33円ですから、実に▲2305.37円も日経平均株価だけの急落がこの短期間に生じたことになるんです。
そして、その要因がこの「日経新聞社による日経平均採用銘柄の大量入れ替え」にあったのです。
同じ計算方法で、その後の影響(④⑤)まで考慮すると、ざっくり▲3000円ほどの悪影響がこの入れ替えによって日経平均株価にもたらされてしまったのです。
まぁさすがに日経さんも、こんなことはもうやらかさないと信じてはいますが(^_^;)
指数連動型(パッシブ)で運用している資金は、とても大きな金額になっています。
指数構成銘柄に変更を加えるということは、ときとして株式市場に大きな影響を与えることもあるという一例です。
先日、取り上げた日東電工の取引に関する処分事例も、指数構成銘柄の入れ替えに伴うものでした。
先物も含め、株価指数が株式市場に与える影響はとても大きなものになっていますし、一度「株価指数」について学んでみておいても損はないと思いますよ。