【トレード】日計りについて①
昨日のコラム見ると「日計り」について自分が否定的と思われるかもしれません。
でもそんなことはないんですよ。
だって自分も最後の方は「日計り」メインでやっていましたから(笑)
でも「日計り」で安定的に収益を上げることが昔ほど簡単ではなくなった…という事実には目を向けるべきだと思っています。
かつては市場にはそれなりの隙間があり、速度も遅かった。
大してマーケット分析する努力をしなくても、色んな研究をしていなくても、ある程度のセンスがあれば勝てました。
「環境の優位性」は我々ディーラーにこそあったのです。
でも近年では、それがどんどん難しくなっている。
株価の動きはどんどん早くなり、アローヘッド、コロケーション、プロキシミティなど超高速に取引執行を行える環境が整備され、HFTがかなり入り込んでおり、アルゴリズムなどもどんどんブラッシュアップされている。
人間が目で認識し、指を動かし、注文を入力するという目視での取引をする間に、何百回となく取引を繰り返せる存在がある。
呼値適正化も目視で取引している人たちにとっては不利に働きやすい。
昔ながらの板読みなどに依存していると生き残るのは難しくなる。
前に通用していたテクニックやパターンが通用しなくなってきている。
そういった事実は認識しておくべきでしょう。
結果として、日計りに依存していた多くのディーラーたちが淘汰されていったのですから。
だからといって日計りが全部否定されるものではないと思っています。
飛びぬけてセンスがある人や、板情報などに振り回されずにうまく適応できた人などもいるし、実際にウチでも日計りベースで収益を上げ続ける力を持っているディーラーもいますから。
ただこれからその道でいこうと思っているのなら、現在の市場の状況がどうであるかをよく理解したうえで、その戦い方、見るべきものなども最適化していく必要があります。
ロクに経験も実績もない状態で「勘に頼る」なんて言ってるとあっという間に淘汰されるでしょう。
経験も実績も十分にある凄腕ディーラー達ですら、かつてのように簡単には勝たせてもらえなくなっていると実感しているはずです。
板の動きに振り回されないためのアプローチ。
・トレーディング・スパンを長くする。スイングや中長期トレードにシフトすることで、HFTと同じ土俵で戦うことはなくなり、環境依存ではなくなっていくため、HFTの動きはノイズ程度に過ぎなくなる。
・テクニカル分析なども含めて、板の動きに振り回されないよう自分なりのルールなどを再構築する。
・プログラムによる解析、自動発注などを用いて対応力を引き上げる(HFTのような高速なインフラを持たない以上、レイテンシー勝負のストラテジーではワークしないことに留意)
…etc。
適応のしかたはそれぞれだと思います。
ただ相当色んな努力をしなければ、日計りで安定的な収益を上げ続けることは難しくなっていくのは確かでしょう。
今後、市場の分散化が日本でも進んでいくと思われます。
東証に集中していた取引が、PTSやダークプールに流れていく比率が増えていく。
NYSEほどシェアが落ちるとは思いませんが、その分散化もポイントになります。
東証の板だけ見ていればOKという時代でもなくなるし、SOR(スマート・オーダー・ルーティング)などを使っていると、かえって東証にある板を取られてしまったりということも増えるかもしれない。
市場間競争が一定のレベルであることは全体を見れば好ましいことであるとは思いますが、市場の分散化は米国で起きた様々な問題を日本でも引き起こす可能性が高まるということでもある(「フラッシュボーイズ」に書かれていたようなことや、ダークプールなどで起きていた問題)。
それらがまた日計りの運用者にとっては、目には見えづらい環境変化につながっていく。
それまで取れていた玉が取れなくなるなんてことも増えていくかもしれません。
日計りはどうしても環境に依存しがちなスタイルです。
その環境優位性はすでにHFTに奪われ、個人投資家との環境の差異もほとんどなくなってしまった。
その中で勝ち続けるということは、真の実力がなければ難しい。
でも違う視点で考えてみると、日計り運用者に対するニーズってしっかりあるのです。
ロングショートは売り買いのポジションを常時保有する以上、資金を使う。
日計りなら、オーバーナイトでの資金負担は最小化できる。
自己資本に対する負担も最小化される。
しかも夜間の欧米時間帯に暴落が生じてもリスクはない。
日計りで安定的なリターンを出せる運用者。
これはある投資家層にとっては喉から手が出るほど欲しい人材かもしれません。