【ビジネス】運用の仕事…①個人投資家
運用の仕事って色んな形があります。
書籍でも少し触れていますが、少し掘り下げてみたいと思います。
まず個人投資家。
自分が証券業界に入ったころは個人投資家って逆張り指標の代名詞的な扱いを受けていた印象があります。
個人投資家の買いが極端に増えるとそろそろ天井、売りが極端に増えると底といった具合に。
証券会社の営業の在り方にも大いに問題があったかもしれません。
話題性・テーマ性で売りやすいものをという会社の販売方針に従って(かつての投資信託もその代名詞)、散々煽って、ブーム的なものに飛びつかせておいて、下げ始めても十分なフォローも、投げ時もちゃんと教えやしない営業マンもいっぱいいたんじゃないかな。そんな中でも誠実にやろうとしている人もいましたけれど。
ナンピン・塩漬けといった行為が多く見られ、相場で資産を失った人も少なくなく、「相場はギャンブルだ。危険だし、もうやらない。」という人が沢山いました。
それがITバブルの流れの中で、ネット証券が台頭し、個人投資家でも若い人たちが活発に取引をするようになっていきました。
個人投資家の取引は、どんどん「賢明な」ものになっていき、そこから成功者が何人も出てくるようになりました。
2005年、2006年の株ブームではそれが一時ブーム的なものとなり、書店には株関係の本が沢山並び、「株ドル(株アイドル)」と称される綺麗で若い女性個人投資家がもてはやされたりもしました。
ネット証券が、より高度なインフラを提供し、個人投資家が自分の判断で取引をするようになっていった中で、確実に個人投資家のレベルは上がり、トレーディングも向上しています。
かつてのように会社で運用をやっているディーラーやトレーダーがプロで、個人投資家は素人なんて今ではとても言えたものではありませんね(笑)
今では「専業(相場だけで食べている人)」「兼業(本業をしながら運用をしている人)」といった分け方をされているのでしょうか(この辺は個人投資家の皆さんの方が詳しいかと(^^;)。社会的にそれがなかなか受け入れないところはありますが、自分は一つの職業といってもいいと個人的には思っています。
市場の投資主体別売買動向においても、個人投資家は外国人投資家に次ぐ存在です。新興市場に至っては、個人投資家の方がシェアが高かったりもする。
株式市場で仕事をし、その一端を担わせてもらっている自分からみたとき、個人投資家の皆さんの存在はとても大切なものなのだと思っています。
個人投資家の場合、基本的には自己資金が運用の原資となります。
平均的に見れば、それは一応プロと言われる仕事で運用をしている人よりは小さいでしょう(ごく一部にとんでもなく大きい運用資産を持っている方もいますけど)。
メリットは
①運用の自由度
好きな商品を好きなように出来るということ(投資経験が十分でないと思われると審査が通らないなどはあるかもしれませんけど)。
株をやろうが、商品をやろうが、為替をやろうが、金利(こっちはまぁあんまりいないでしょうね)をやろうが、仮想通貨をやろうが、何をやっても構わない。
損益についても基本的には口出しされることなく、自由にやれる(これが危険な罠になることも)。
②手取りの多さ
個人でやっていると、基本的には税金のみで済みます。
ただ雑所得扱いになるものもあったりするので、そこは気をつけてくださいね。
ちなみにシンガポールは「一定の要件(①売買取引の頻度、②売却理由、③保有期間、④資金調達方法 (短期借入で運用しているか) など)を満たせば」キャピタルゲインは非課税になります。
リスクは
兼業でやっている場合は、本業もしっかりやらなければいけないし、就業時間があるため、四六時中相場に向き合っているわけにはいかなくなります。結果、日計りなどの短期運用はかなり難しくなるでしょう。出来てもスイング程度、どちらかといえばファンダメンタルズベースの中長期運用の方がマッチする。そういった制約を受けます。ただ本業がある分、失敗したときのリスクはかなり軽減されます。
専業でやっている場合は、業界的には認知されていても、まだまだ社会的には職業として認知されてはいないため、履歴書上は無職と言われがちなこと。またごく一部の大成功されている人はともかく、一時的にそれなりに稼げても、その後稼げなくなったり、資産を失ってしまう人も少なくありません。それから仕事に就こうと思っても、それは正直かなりハードルが高いと言わざるをえないでしょう。生きていくにはお金が必要です。年間500万として、それを安定的に稼ぎ続けなければならない。この目標収益だと、運用原資が5000万として毎年10%の利回りは確保しないといけないことになります。この程度ならできないことではないですが、この設定がムチャな人も散見します。もし反対に▲10%負けた年があると、生活費と合わせて▲1000万減ってしまうことになり、一気に生活が苦しくなりかねない。周囲にブレーキかけられない分、かなり不安定で過剰なリスクの取り方をしている人も沢山見受けます。
正直、毎年沢山のエントリーをいただく中で、やはり一定の比率で個人投資家としてやってきた方がいます。
中には相場でうまくいかなくなり、資産を飛ばしたり減らしたりしてしまったから、会社のお金で運用できるディーラーをやりたいと言ってくる人がいます。
それはさすがに採用できるわけないですよね?(^^;
ここまでうまく稼いできたので、より大きな資金で仕事として相場に集中して取り組んでみたいと言ってこられるなら、もちろん採用したいと思いますけど。
自分の知り合いでもリスペクトできる専業個人投資家の方は何人もいます。そういった方は総じて、無駄使いはそれほどしない。ちゃんと自分の資産管理やコントロールをしながら、運用をしています。
専業でやるのであれば、そういった将来も見据えながら必要な資金と、リスクを取っていい資金をしっかりと分別管理し、運用も適切なリスクの取り方でやっていくべきなんだと思います。
まだ若い方なら、これから結婚・出産・育児といったプロセスもあるでしょう。子供は小さいうちはそれほどお金はかかりませんが、高校・大学と成長していくと、より多くのお金が必要になります。
そういったことまで踏まえて、人生設計の中でバランスの取れた選択をしていくことも大事なことだとは思います。
まぁでも個人でやっている以上、全て自己責任と言い切れますから、思ったように好きに相場を楽しめばいいっちゃあいいんですけどね(^^;
ただ何年か先に、大好きだったはずの相場に対して後悔の念を持たずに済むようにはして欲しいなと思います。
ちょっとだけ宣伝させておいてくださいね。
出版社さんへの義理もあるので(笑)
先日発売された自分が書いた書籍のKindle版が発売されているようです。
「株式ディーラー」プロの実践教本 百戦錬磨のディーリング部長が伝授する Kindle版
https://amzn.to/2sRwsZZ ;