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【雑感】機械だから、人間だから…

下記のニュースをリツイートしたところ、結構コメントつきで引用リツイートされる人も多かったので雑感を。

 

「フラッシュボーイズ」が話題になった頃、HFTは悪だ、アルゴは悪だとの論調がすごく増えた。

一方で、取引所からは有識者やら学者さんやら、頭のよさそうな方々からの論文を公表したりしながら、「HFTは流動性を供給していて貢献している」とか擁護する論調が目立った。

 

実際にあまりにもHFTの注文取消し比率が多く、それに振り回される人が増えて、HFTやアルゴは見せ玉が多いという声が多くなった。

それに対抗しようとして、人間側が同じようなことをすると相場操縦やら作為的相場形成で捕まる事例も実際に起きた。

当時、一部の市場関係者からは「システムがやっているものだから恣意性がない」ということで機械が執行しているものについては問題ないという、ちょっとびっくりするような意見も聞こえてきた。
そのプログラム書いているのは人間なんだし、そこに悪意や恣意性があれば問題だろと個人的には反論していたのを思い出した。
さすがに今ではそんなことを言う人はあまり聞かなくなったけど。

相手がそういうことをやっているからといって、同じことをやってはいけない。
それが他の市場参加者からの注文を誘引する目的であっては絶対にいけない。
そんなつまらないことで運用者としての将来をダメにして欲しくはないから。

 

自分はHFTを否定もしない。
かなり大手のHFT業者のアジア責任者と話し合ったこともある。
一度、HFTの人たちを紹介してもらって飲み会を開いてもらって色んな話を聞きもした。
概ね、まっとうなHFTの人たちだった。

すべてが悪ではない。

 

とはいえ、一部には悪質な発注・訂正・約定を繰り返すHFTもいる。

ディーラーや個人にも悪質な取引をする者がいるのと同じこと。

アローヘッドが稼動し、HFTが日本市場に本格参入して以降、取引所の約定率はおそらく著しく低下したはずだ。

それぐらい取消しが増えたのは事実だと思う。

一方で、人間の取引においても、短期トレードであればあるほど、取消しを行うケースは増えやすい。ごく短い時間に小さな値動きを取りにいくとき、注文出してみて空振りすれば取り消すこともあるだろう。

だから超短期での高速取引を行う彼らの取消し比率がある程度高いのは理解できる面もある。

 

機械だから、人間だからではなく、同じ視点で公平に監督・監視を行い、必要な処分を行い、市場の健全性を保つことが一番大切。

ようやく金融庁もHFTに対する監督体制の強化に乗り出した。

最近、証券各社は説明会を受けて、自社および顧客でそれに該当する場合は登録を行わなければならないとの通達され、その対応に追われている。

それで監督体制が十分だとは思わない。

超高速に取引所、PTS、ダークプールに渡って注文の出し入れを繰り返し、それも複数のブローカーを使う彼らの取引の全容をどこまで把握できるのか?

本来ならば、そこまで監督できてはじめて公平なのだろうと思う。

手で注文出し入れしている人間だから監督しやすくて、処分も出しやすいってのじゃ多分みんな納得できないだろうから。

 

でも規制は一歩前進している。

悪質なHFT業者を排除しようという動きもちゃんとある。

 

「呼び値適正化」

これが実施されたとき、反対したのは個人投資家やディーラーだけではなく、HFTも結構反対していたのはどれだけ知られているのだろうか?


とにかく…
繰り返しになるけど、腹は立っても、「やつらがやってるんだから」と作為的相場形成や相場操縦につながるようなつまらない取引だけはしないで欲しい。

そんなことで可能性を沢山もったみんなの運用者人生が終わってしまうのは、あまりにももったいないから。

生身の元UBSトレーダー、アルゴリズム欺く-見せ玉注文で刑事訴訟

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-04-17/P7BF2Y6KLVR401

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プロフィール

tetsu219

Author:tetsu219
元証券ディーラーです。
二十数年ディーラーやって、シンガポールにも一時期行ってヘッジファンドを立ち上げてみたりと色々やってきて、とある証券会社でディーリング部長になり、今はシンガポールでヘッジファンドの設立・経営をやっています。

基本仕事ネタです。
更新は気が向いたときだけ(^^;
でもこのブログを通じて運用を志す若い世代の人たちに何か伝えられること、その一助になればと思っています。

初期は限定記事にしていましたが、今は開き直って全部公開にしてますのでお気軽に(笑)

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