【トレード】攻めと守り
毎日毎日相場と向き合う。
ディーラーにとってはそれが仕事。
でもいい時もあれば、悪い時もある。
それは当たり前のこと。
戦い続け、勝ち続けるためには、常々『コントロール』が大事だと言ってきた。
メンタル(コントロール)、リスク(コントロール)など様々な面で求められる。
損益(PL)についてもコントロールは必要だ。
でもそれを結構出来ていない人が少なくない。
分かりやすいのは、どんなときでもフルスイングしちゃう人。
いい時でも、悪い時でもぶん回し続けて、簡単にロスカットまでいってしまう。
最悪の人は、損が出れば出るほどムキになってリスクを増やす。
ギャンブルで負けがこめばこむほど掛け金増やすパターンだ。
こういう人にはハッキリと『戦い続けなければいけない勝負の世界には向かないよ』と思う。
損が出る(=相場で負ける)。
それには必ず理由がある。
自分の相場観やストラテジーと、実際の相場が合ってないから負ける。
その理由が見えてもいないのに、損を取り返したいという自分の都合だけでリスクを取り続ける(増やし続ける)。
たまたま相場に救われることもあるかもしれない。
でもそれは実力ではなく、運頼みでしかない。
合っていないときは、損を早く取り返したいという自分の中にある焦りと向き合いリスクを抑制する。
そのうえで合っていない要因を客観的に分析し、少しずつ立て直していく。
うまくいっていないときほどリスクを抑えなければならない。
いわば『守り』が求められる。
儲かっているときはガンガンいけばいい。
いわば『攻め』だ。
ただし、自分の中に育っていく慢心に対して細心の注意を払い、落とし穴にハマらないように気をつける(それでもハマる)。ハマったら、いったん手を止めるなり、攻めの手をニュートラルに戻す。
『攻め』と『守り』。
言い方を変えれば『強弱をつける』。
これって実はとても大事なことだ。
何年・何十年と戦い続け、勝ち続けたいのであれば必要になる。
守りばかりでは成長も成功もしない。
攻めばかりではどこかで消えていくことになる。
その切り替えは…
・自分自身の損失に対するキャパシティを把握する(リカバリー可能な損失にとどめる)。
・ディーラーやファンドマネージャーなら、会社なり投資家なりの損失許容度を理解し、それに達することがないようにコントロールする。
・自分のストラテジーの長所・短所を理解し、それに現在のマーケットがマッチしているのかどうかを客観的に分析する。言い方を変えると、KO狙いでガンガン勝負していいマーケットなのか、ガードを固めながら判定勝ちでもいいと割り切るべきマーケットなのかを見極める。
例えば、順張りを得意とするならば大きなトレンドにある最中はガンガン攻めていくことも容易だ。逆に攻めきれなかったり、不用意なところで逆張りをすれば儲け損なうか、ヤラレにすらなってしまう。
一方で、その手の人はトレンドの転換点やもみ合い相場になると乗り切れなくなる。ヘタをすると高値買って安値売って、安値売って高値を踏む…往復ビンタすら食らいかねない。
だから日計りであっても、相場全体の流れや見通し、現在の位置を考え、チャート上のポイントや出来高・売買代金などの市場エネルギーを見て、経済統計やイベントなどのカレンダーを把握し(例えば重要イベントの前は相場は動きづらくなり、そんな中でフルスイングしても儲けづらい)、今日をどう戦うかを考える。
外部要因や、自分が置かれている環境、自分自身の状況など様々なものを客観的に分析しながら、強弱をつけ、攻めと守りを使い分けないといけない。
それがある程度出来ていないと、損益がブレる割には利益はたいして残らないプレーヤーにしかならない。
要するにリスクとリターンが見合っていないのだ。
運用の世界ではシャープレシオで見られるもの。
自分の運用の目的や資金の性質に対して、自分自身の損益の動きが適正であるかどうかも含めて考えられてこそのプロだ。
これから運用の世界を志す人は『勝つこと』『儲けること』『成功すること』ばかり追い求めるのではなく、そういったことも理解しておいて欲しい。
相場でヘタうつ人のほとんどは『いいこと』しか想像しないでリスクを取る人達だ。
『悪いこと(負けたときのこと)』を想像できている人は最低限の守りが出来るし、ちゃんと長いこと生き残る力を持っている。もちろん負けたときを想像して怖くて手が出ないでは話にならないけど…。