【トレード】向き合うべきもの⑥
『自分なりに挑戦して失敗しかけたけれど、結局はプラスで終われた。12月こそは勝負だ。』
より強い気負いをもって12月に入った。
そして月初からリズムはガタガタになり、自分自身のコントロールも出来ていないまま玉を振り回すようなトレードになっていた(後から振り返るとよく分かる)。
そしてあの日のトレードを振り返ると、完全に自分を見失っていた。
フセイン捕縛のニュースを見て勝負にいくまではいい。
ただいくらその勝負でリターンが出ているとはいえ、まだ月間ではマイナスの状態だった。
にも関わらず先物とハイベータの銀行株に過剰なリスクを取り、そのままオーバーナイトリスクをとった。
出来れば全部、少なくとも半分以上は利確するべきだった。
いいときの自分ならばそうしていただろう。
なぜか?
日経平均株価はすでにそのニュースを織り込む形で急騰している。
今晩の米国株式市場が大幅高になる前提でた。
つまり材料の先食いをしている状態だった。
ならばある程度は利益を確定しておき、米国市場の動向次第で対応できるぐらいの軽さにしておくべきだった。少なくとも月間でマイナスの状態だったのだから。
それが出来なかった。
なぜか?
損を取り返したいという欲があったから。
▲1800万円まで拡大していた損失。
あと▲300万円というところまで来ていた。あとちょっとでプラ転。
ただ損を取り返して楽になりたいという気持ちが判断を鈍らせた。
そしてただ欲のまま希望的観測にすがり、夢を見て…絶望させられた。
明らかにマーケットのせいではなかった。
うまくいかなくなった理由は自分の中にこそあった。
ようやくこの損失の原因を自分の中に見つけ出すことができた。
そして年が明けた一月。
ロットを大幅に引き下げ、自分のトレードを毎日一つ一つ丁寧に振り返りながら、自問自答し続けた。
ちゃんとフラットな判断が出来ているか?
感情で相場を張ってはいないか?
コントロール出来ているか?
一歩ずつ一歩ずつ、損を取り返していく。
そりゃ早く取り返して楽になりたい。
でもそれはあくまで自分の都合でしかない。
『損を取り返したい』からといって、相場が思ったように動いてくれるわけはないのだから。
そんな気持ちがなかったといえば嘘になるけど、意思の力で抑え込んだ。
『こうなったのは自分のせいだ。全ては自業自得。苦しいと思う気持ちを噛みしめながら、プロとして胸を張れるトレードを取り戻してみせる。』
自分に言い聞かせ続けた。
その月は726万円のプラス。
ただ間の悪いことにその会社が2週間売買停止の処分を受けた(原因は他部署だったが、そんなことは関係なく止められた)。
ようやく少しずつ自分のトレードを取り戻し始めたところに2週間の強制的な休み。
また焦りが強くなりはじめた。
焦るなと自分に言い聞かせてはいたものの、結局2月は一進一退で▲267万円の損失。
このトンネルを抜け出せないまま自分はディーラーとして終わってしまうのではないかとすら思っていた。
自分と向き合い続けた2ヶ月間だった。
そして迎えた年度末の3月。
期末にかけてはトレードも色々と制約を受ける。
月末までめいっぱい勝負できるわけじゃない。
『焦ったってしゃあないな。来期改めて立て直していくつもりでコツコツやっていこう。来期勝負が出来るようにするために(数字だけではない)手応えを得るための月にしよう』
そんな気持ちだったと思う。
すると肩の力が抜けたのか、急にリズムが噛み合い始めた。
そしてその月は4329万円の利益を出し、ようやく長い長いトンネルを抜けた。