【トレード】向き合うべきもの⑦
自分がディーラー人生の中で一番苦しんだ時期の話だ。
その後、▲6400万円の損失を二度ほど出したけれど、そのときはこの時期の経験があったから、乗り越え方、立て直し方が自分なりにはわかっていた。
もちろんそれなりには追い込まれたし、苦しかったけれど、あのときに経験したプロセスをもう一度やるだけのこと。
2007年9月に▲6486万円の損失を出した翌月には1億2104万円の利益。
2008年3月に▲6154万円の損失を出した翌月には6195万円の利益。
と短期間で立て直すことが出来ている。
相場という世界と向き合い
勝ち負けのある世界で戦い
それを生業とする以上、負けるとき、苦しいときは必ずある。
なぜ負けたのか?
一つは相場を見誤ったから。
それは当たり前のことだ。
相場の分析が適切にできていて、見通しがしっかりと当たっていればよほど売買のやり方が下手くそじゃない限りは勝つ。
でも100回トレードして100回当てるなんてことは不可能だ(HFT的なものは微妙だけど)。
必ず間違えるときがある。
いや間違えるときがあっていい。
逆に間違えることがあるのが当然だ。
全ての材料や情報を把握し、予測しきることなんて不可能なのだから。
負けたときに自分の中に沸き起こる様々な感情。
それとしっかりと向き合い、自分を見失わないことこそが大切だ。
感情で相場を張るな。
徹底的に研究し、分析し、その判断に感情を挟むな。
勝ったときのことだけを想像するのではなく、負けたときのことも想像しておきなさい(特にオプションのストラテジートレードは重要)。
そして負けたときの対処は予め決めた通りに『対処』すること。
自分のリスク許容度をしっかりと把握しておきなさい。
個人であるなら、自己資金の全てを失っていいわけはないだろう。どこまでならやられてもいいのか?どこまでなら立て直す余力を残せるのか?
ディーラーなりファンドマネージャーなり、他人様の資金でリスクを取っている人は自分が出来るかどうかだけではなく、会社なり投資家なりに与えられたリスク許容度を理解し、それに対しては誠実にそれを超えないように勝負をしなさい。
金額の多寡に関わらず、他人様の資金を受託してリスクを取った時点で、プロの運用者としての矜持を持ち、それに恥じないように自分に厳しく向き合いなさい。
プロである以上、勝って当たり前。
儲けられなくて情けない。
損を出したら申し訳ない。
他人様のお金で、他人様のリスクでギャンブルするような真似は絶対にするな。
それだけの裏付けと根拠を持った勝負なら、結果として負けてもしょうがない。
でも自分の感情や都合で無茶なリスクを取るようなトレードはしてはいけない。
謙虚に、でもしっかりと矜持を持って仕事をしていきなさい。
周囲の人に感謝を忘れず、周囲に応援してもらえるディーラーでありなさい。
常に自分に厳しく在ること。
そうでなければ相場という荒波の中で自分を見失い、あっという間に消えていくだけのこと。
どんなに辛くても、苦しくても、歯を食いしばって自分と相場と向き合い続けなさい。
悔しさで眠れない日々も、恐怖とプレッシャーで吐いたことも、誤魔化さずに向き合い続けて糧としなさい。
そういう仕事を自分は選んだのだから。
そしてそれを乗り越えたときに本当の意味での強さを勝ち取ることがきっと出来るはずなのだから。
自分が自分自身に投げかけ続けていた言葉だ。
若い世代の運用者達に少しでも感じてもらえるものもあるかもしれない。