【ビジネス】MarketForum②
年に2~3回ぐらいだったかな。
数十名規模の業界交流会と主催するようになっていた。
各社のディーラー中心に調査・情報担当者の方々にも声をかけていた。
後者の方はディーラーとしたの道が閉ざされかけたときに繋がりを得た人達だ。
その交流会は自分にとっても大きなプラスになった。
かつてのチームから離れ、いち契約ディーラーとしての道を歩き始めた自分。
実績も一人前と言われる水準は十分クリアできるようになっていた。
気がつけば、そのディーリング部の中では最年少ながらトップの成績を出せるようになっていた。
その中にいるとトップ・プレーヤーだエースだとチヤホヤされる。
最初は心地よく感じた部分もなかったといえば嘘になるが…。
所詮は井の中の蛙であることをその業界交流会は思い知らせてくれた。
月3千万程度は稼げるようになっていただろうか?
でも同業他社にはもっと上がいた。
そして自分より年下ながらあっという間に自分を追い抜いていったようなディーラーも他社にはいた。
自分がよりハングリーに在り続けられたのは、業界内にそういった友人であり、ライバルといえる存在を何人も得られたからだ。
そんな彼らと出会えた場所がその業界交流会だった。
その後、自分が所属していた会社で色々とあって、『これ以上、この会社、このディーリング部にいると自分が成長できない』と感じたときに移籍を決断し、その相談のメールを送ったのは『この人は自分よりもすごい』と思えるディーラー2名に対してだった。
業界交流会での出会いは結果として、移籍のきっかけになった。
ただそれは引き抜きなどではなく、所属会社が十分戦える環境を用意できていなかったからだ。
ディーラー・運用者であれば、もっと成長したいと思うのは当たり前のこと。
自分にとってその器は小さすぎたのだろう。
周囲のディーラーが損失を出して、自分がカバーする。
そんな状態だった。
月3千万の利益を月半ばで出していて、今月は勝負の月だと思ったときに、当時の部長に言われた。
『今月、部の数字がマイナスになりかけてかけているんで、ポジション閉じて利益確定してトレード止めてもらえないだろうか?』
部長会だか役員会だかで詰められていたのだろうが、それだけ結果を出しているのに何なんだよと思いながらも、本当に困った顔をしていたからしかたなくその要請に従った。
でも翌日、損失出しているディーラー達が何人もオーバーナイトしていた。
もちろん抗議した。トレード止めるならまず損を出しているやつらからだろうと。
部長曰く『これはお願いであって命令じゃないから…』
それが決定打だった。
これ以上、このチームにいたら自分は勝負できないし成長できない。
もっと強いやつらが沢山いるところにいこうと決意した瞬間だった。
そして業界交流会で知り合った2人のディーラーにメールを送る。
そこの会社の本部長に会い、移籍はあっという間に決まった。
自分がその後、月間億を超えるリターンを出せるようになっていったのは、その会社に移籍し常に刺激を与えてくれる強いディーラー達がいてくれたからだ。
そして残念ながら、いや当然かもしれないが、自分が抜けた元の会社はその年度末にディーリング部を閉鎖した。
もちろん葛藤もあった。
自分のせいだったのだろうか。
自分を責めもした。
確かに元の会社にもお世話になった方も何人もいる。
その会社に尽くせ。
恩義を返せと。
という人もいるだろう。
確かに自分の我儘なのかもしれない。
でも恩返しはした。
十分に収益を上げ、貢献もしてきた。
自分の人生を、その未来をより切り拓いていきたいと望むことがいけないことなのだろうか?
人は誰かのモノではない。
先輩、上司、会社…様々なものに自分は若い頃から振り回されてきた。
利用されたり、道を閉ざされかけたりもした。
彼らにとっては自分が何を望んでいるのかなんて興味はなかっただろう。
もちろんそうではない人達もいた。
そういった人達は自分のために力を貸してくれこそすれ、利用しようとはしなかった。
その人の人生はその人のものだ。
誰かのものではないし、誰かに利用されるべきでもない。
その人が望んで誰かのために何かをしようと思えるのなら、それは素晴らしい。
でもそれは押しつけや強制であってはいけないのだと自分は思っている。
今の自分には沢山の後輩や部下がいる。
でも彼らの人生は彼らのものだ。
会社からも上司である自分からも自由であって欲しいと思う。
彼らが望んでここにいたいと思えるように舵取りをするのが自分の責任であり、仕事なのだと思う。
そして彼らの思いを利用したり、閉ざそうとする存在があるのなら戦ってやろうと思う。
あんな思いは自分の後輩や部下にはさせたくはないから。
そして業界交流会の意味合いも自分にとっては変化していった。
『後輩達、若いディーラー達が沢山の方々と出会い、その視野を広げ、その可能性をより高めていって欲しい。』
自分がかつて多くの友人やライバルを得たように。