【ビジネス】ディーラーという仕事の変遷⑥
ディーラーの取引環境についてちょっと触れましょう。
1990年代後半。
自分のところはまだ取引システムといえるものは裁定取引用のものしかなく、個別株や派生商品のトレードは取引所端末を使って発注していました。
取引所端末に必要な数値を手入力してEnterキーを押下する。
近くに設置してあるプリンターに注文、約定通知などが返ってくる。
若手の頃は、アシスタント的なこともやらされていて、チーフがEnterキーを押下瞬間に伝票に打刻、記入していく。ほぼ同時にプリンターを見に行って上がってくる約定を声を出して読み上げる。
まぁスプレッド取引とかやられるとエライ大変でしたね(^^;
で、一人前になってしばらくして、自分にも専属のアシスタントをつけてもらっていた時期がありました。
派生商品や個別株のアウトライト、ロングショート、オプションのストラテジーでのポジション、NT…色んなトレードを一人でやっていたこともあって、とても一人じゃ伝票起票やらプリンターの確認やら追いつかなかったからです。
アシスタントのスキルってすごく大事でした。
アシスタントのミス一つで数百万の損失が出ることもあった。
最初のアシスタントは一日で辞めてしまいました。
翌朝、「自分にはとても務まらない」と一言だけ連絡してきて…。
その次に来てくれた人は本当にありがたかった。
痒い所に手が届く。
身の回りのこととかとても疎かになる傾向が強い自分(いまだにそうですが…)、普段は温和にしている(つもり)けど、マーケットが動き出すとスイッチが入って遠慮なくバシバシと注文を出す自分、負けてもそんなに荒れたりはしない方だったけど、それでも色んなストレス抱えて(対上司とかw)ピリピリしていることもあった。
でもそんなことは受け流し、気づいたら色んなサポートしてくれているって感じで。
もちろんそれは収益にも影響する。
当時はアシスタントの給与(派遣で時給だった)は自分の収益から払っていたので、会社にかけあって時給思いっきり上げてくれと交渉したぐらい(笑)
その後、トレーディングシステムが増えてくる。
総称としてはOMS(オーダー・マネージメント・システム)と呼ぶべきかな。
インタートレード社やTCS(東証コンピュータシステム)社のものが中小証券のディーリング部門に広まっていった。
そのシステムには板が表示され、ワンクリックで発注出来て、約定なども画面上でリアルタイムに確認できる。ポジション管理、損益管理、リスク管理…様々な管理機能が実装されていた。
結果、アシスタントがやるべきことはなくなってしまった。
その人にはやりがいのある仕事を作ってあげられないから、辞めてもっと働き甲斐のある仕事を選んでもらって構わないと伝え、彼女はその職場を離れた。その後、マーケットフォーラムというNPOの立ち上げを支えてくれ、仕事というつながりが無くなってもずいぶんと助けてもらってきた。
そしてほぼ現在の地場証券が持つシステム環境になっていく。
発注制御機能が充実し、誤発注防止機能や、建玉制限機能、コンプライアンス管理機能など、活発に売買するディーラーの取引内容やポジション状況を一元的に把握できるようになっていった。
それはとても便利であり、管理機能の向上はいいことでもあったが、潜在的にはいくつかの問題をはらんでいた。