【ビジネス】ディーラーという仕事の変遷⑤
もう一つ、とても残念な影の部分があります。
若い世代を育てる。
それが失われていってしまったこと。
『契約』という不安定な雇用の下ではディーラー達は自分のメリットにならない後輩の育成なんて前向きにはなりづらい。
そしてディーラーの移籍が当たり前になっていったことから、人を育てる努力をしても簡単に他社に移られてしまうために各社ともに未経験者の採用や育成に後ろむきになっていった。
そんな時代にあってもA証券やY証券、M証券は新卒や未経験者の採用・育成を続けてきており、リスペクトすべき会社だと思っています。
でもほとんどの会社でその姿勢は失われていった。
未経験者の採用をしても、そのうち何人が一人前になるか?
まぁよくて3割。
最悪1割かもしれません。
特に日計りや短期売買の世界は、センスやメンタルに依存する部分も多々あり、教えるのが難しい。
そして一人採用して育成するにはそれなりにお金もかかる。
ディーリング部門として収益性が低くなっていった中で、移籍されるリスクも考えれば後ろむきになってしまう気持ちは分からなくはない。
ただそれが一番やってはいけないことだと思います。
新しい時代に向けて、若い世代に扉を開き、育成を真剣に取り組んでいくこと。
新しい世代が育っていくことが、組織に、業界に活力を与える。
自分はかつて現役時代にある会社で契約ディーラーであるにも関わらず、上司に交渉して未経験者の採用枠を与えてもらっていました。
面接し、採用し、日々指導もしていました。
そんな中から今でも活躍してくれている後輩がいます。
みんな他社ですが(笑)
でも彼らの出発点になれたことを誇らしく思っています。
現在、ディーリング部長として未経験者の採用・育成に取り組んでいます。
未経験者採りすぎて一時停止中ですが…(^^;
でも新しい世代のディーラー達が成長していける場所を作る。
それが組織の、会社の、業界の未来にもつながっていくと思っています。
これまで時代の変遷の中で失ってはいけないものがいくつも失われていきました。
ディーリング業界が衰退し、絶滅危惧種とまで揶揄されていくまでの原因は、アローヘッドやHFTのせいではなく、我々自身の中にこそあります。
今、自分は失われたものを取り戻すために働いているのかもしれません。
ディーラーが前を向ける環境を作り、若い世代を育て、個々が夢を追えるようにしていくこと。
失われてしまった大切なもの。
それを取り戻し、さらに新しい時代に向けた道を開いていく。
それは一番いい時代にディーラーをやらせてもらってきた自分たちの世代の責任なんだと思っています。