【ビジネス】ディーラーという仕事の変遷④
ディーラーの契約化・成功報酬の行き過ぎた高騰が招いた光と影。
行き過ぎた成功報酬の高騰は会社の利益を目減りさせていきました。
組織としての体力を奪っていってしまったのです。
あくまで報酬率は会社とディーラーの取り分の調整でしかありません。
本来ならば収益自体を増やす方向でビジネスをしなければいけないのに、ディーラーの取り分ばかりを増やした結果、会社はリスク許容度を失っていった。
結果として
『損を出すな』
としょっちゅう言われるようになる。
ディーリングは市場でリスクを取ってリターンを得る仕事です。
リスクを削ればリターンも削られる。
ただむやみにリスクを削れば、収益水準自体も低くなって当然なんです。
自分は若手の頃、月一千万をアベレージで稼げてようやく一人前だと言われて育ちました。
一人前のディーラーとしてはそれが最低限。
月に数千万、いや億オーバーの利益を出す。
そんな姿勢でいられました。
自分は月間で▲6400万の損失を二度ほど出したことがあります(月間損失限度額はつけてないですよ)。
でもその当時の会社の社長がわざわざ「気にしないでいい」とメッセージを伝えてくださいました。
翌月にはその倍の利益を計上し、その年も年間でみればかなりのリターンを出すことが出来ました。
でもそれは会社のリスク許容度の大きさと信頼があったからこそできたことです。
今思えば自分は幸せな時代にディーラーをやらせてもらっていたのでしょうね。
それが出来たのは会社がそれだけのリスクを許容してくれていたからです。
もちろん自分もそれに応えてきた自負はあります。
でも今の時代、それだけのリスクを許容してくれる会社がほとんどなくなってしまった。
今の時代、月一千万アベレージで稼げれば各社のトッププレーヤーレベルでしょう。
それは彼らのレベルが低いのではなく、環境がそうさせているのだと思います。
今、トップレベルの運用が出来ているディーラー達が、自分たちの時代にディーラーやっていたら…「こいつらなら当時のオレより稼ぐだろうな」と感じさせてくれるやつらもいます。
彼らの可能性をより形につなげていくためには
適切なリスクマネジメントをしなければならない。
収益力、プロのディーラーとしてのスキル、ストラテジー…様々なものをしっかりと見極めながら、『適切にリスクを付与する』ことができるかどうか。
ただ『やられるな』と言えば勝負できなくなる。
リスクが取れなきゃリターンは取れなくて当たり前。
リスクを取りたくないのなら市場で運用するようなビジネスはやるべきじゃない。
運用の世界であれば当たり前であるべきこと。
そんなことすら失われてきてしまったのです。
ディーリング部の閉鎖・撤退が相次ぐのも当然の帰結というべきでしょう。
それも影の一つです。