【ビジネス】絶滅危惧種と呼ばれて②
そして絶滅危惧種となった我々ディーリング業界のほとんどの人がこう言った。
「アローヘッドのせいで儲からなくなった」
「HFTは悪だ。環境の優位性を使って取引をするなんてずるい。」
自分はその頃からこう感じていた。
『そんな風に言っている限り、生き残れないだろうな…。』
HFTが悪なのではない。
HFTの中にも悪質なストラテジー、手法を使っているものもいるだろう。それは人間と同じこと。
一部の悪質なHFTの行いを取り上げて、すべてのHFTが同じであるかのような批判をただしていてもダメだ。
日本もようやく規制に乗り出したけれど、これまで当局や取引所などの監督すべき立場の人たちがHFTの売買の全容を把握・監督できていない(ある意味野放し状態)であったことにこそ問題がある。結果、一部の悪質なHFTが悪さをし、市場を汚した。
彼らを知り、もっと理解しなければいけない。
自分は様々な方にお願いしてHFTの人たちとの飲み会開いてもらったり、海外に拠点を置くHFTのマネジメントの人とのミーティングなどの機会を作ってもらった。もちろん日本人なんて一人もいない。アメリカ、ドイツ、フランス、インド、中国、オーストラリア…様々な人種の人がそこにはいた。
彼らと話し、様々なことを聞けば聞くほど勝てない理由も感じられた。
実はHFTという言葉を知ったのはもっとずっと前の話だ。
2007年~2008年の頃だったろうか。決して早くはない。
欧米市場ではその存在が大きくなっており、海外市場のことを調べているとよく目にするようになっていた。
HFTが欧米市場で最も市場シェアが大きかったのっていつだか知っていますか?
それは2008年~2009年にかけてのこと。欧州では60%近く、米国においては70%近くもの市場シェアを彼らは占めるようになっていた。
つまり日本に彼らが参入してきた2010年よりも前の話だ。
ちゃんと海外市場で何が起きているかを学んでいる人、調べている人から見れば日本で起きた変化は遅すぎたとすら感じるはずだ。
例えるなら、鎖国していた日本でちょんまげに刀で闊歩していた人たちが、突然の開国(アローヘッド稼働)によって黒船(HFT)来襲によって駆逐されていったようなもの。
欧米市場で起きていることをしっかりと研究さえしていれば、テクノロジーの進歩、インフラの高速化の具現化であるアローヘッドがもたらす市場の変化は容易に想像できたはずだ。
つまり2010年以降、淘汰される側に回ってしまったのは自分たちの不勉強であり、変化する努力を怠っていたことが一番の要因だと自分は考えている。
知る努力、考える努力、未来を切り開く努力…全てが足りなかった。
そしてそれを他者(アローヘッドやHFT)のせいにする。
時代が変化し、ビジネス環境が変化していく以上、それに適応していかなければならない。
ダーウィンが言ったか言わないかは知らないけれど、よく引き合いに出るこの言葉。
”生き残ることのできる生物の種族は最も優れた生態能力を持った種族ではなく環境の変化に対応できる種族である”
それを出来ていなかったディーリング部、ディーラー達は淘汰されていくことになったのだろう。
『今までこれでやってきたんだからいいじゃん。』
『自分が何かを変えて失敗したり、問題になったら責任取らされるから変えたくない。』
何度もそんな台詞を耳にしてきた。
追い込まれたのはアローヘッドのせいでもHFTのせいでもない。
そんな思考停止が招いた必然なのだろうと思う。
続く…