【ビジネス】絶滅危惧種と呼ばれて①
先日、とある業界の忘年会で初めて会う年配のベテラン個人投資家さん(元証券会社)にこんなことを言われた。
『へぇ、まだディーリングって生き残ってるところあるんだ?』
苦笑いするしかなかったですね(^_^;)
そう…確かに我々は絶滅危惧種と揶揄されていた時期があります。
そして恐らくはそのリスクは変わっていない。
今はまだアベノミクス相場で延命されたに過ぎない。
また相場が一巡し、閑散となったときにそのリスクは必ず顕在化する。
この数年間で変わることが出来ていないのであれば…。
絶滅危惧種と揶揄されたのは2010年から2012年ぐらいまでにかけて。
言い方を変えれば、2010年1月の東証アローヘッド稼働からアベノミクス相場が始まるまでの間だ。
では何故アローヘッド稼働によって地場証券のディーリングは壊滅的な打撃を受けたのか?
アローヘッド稼働によって、取引所の注文約定処理のスピードは飛躍的に向上し、高速な取引環境が実現した。
それによってシステムを駆使するHFT(超高頻度取引)業者が一気に日本の市場になだれ込んできた。
そして板(注文状況)を見ても目視では認識しきれないほどのスピードで取引が行われるようになった。秒→ミリ秒→マイクロ秒→ナノ秒という世界が我々の目の前に突然現れた。
それまで地場証券のディーリングはほとんど日計り、板張りという超短期取引に依存していた。一カイニヤリと呼ばれるような手法だ。その背景にはマネジメントの理解のなさから来る過剰な制約と、ディーラーはその環境の中でやるしかなかったということ、そしてあまり考えないで済むやり方に依存してしまっていたことが背景にある。
日計りのみであれば、資金負担はそれほどいらないし、自己資本に与える影響も限定的だ。リスク管理やポートフォリオ分析などもそんなに考えないで済む。管理上楽なやり方だったし、分からないことはやらせないという方向で舵をとっていたマネジメントが多かったのは事実だろう。
そしてディーラーにとっても、オーバーナイトリスクを取らずにいれば、欧米市場の動向もさほど意識しないで済むし、銘柄研究や分析、市場動向の分析もそこまでやらなくても、まぁ日々動く銘柄見つけてやるか、得意銘柄に集中してればいいのだから楽っちゃあ楽なやり方だ。ただ板を見て戦えばいい。極端なやつはチャートもロクに見ない、日経平均が今いくらかなんて気にもしないなんてやつもいたぐらいだ。
ただそれはHFTも同じ。
彼らは日経平均がどうなるかなんてさほど気にはしていないはずだ。その水準が高いか安いかなんて興味はないだろう。オーバーナイトリスクもほとんど取らない。
そう、ある意味一カイニヤリはHFTが得意とする手法と真っ向からぶつかる手法だった。
超短期で人間が認識できないほどの速度で取引を繰り返すHFT。人間が瞬きする間に何十回、何百回もの取引が繰り返される。環境の優位性は圧倒的に彼らに分があった。
同じ土俵でアナログ、手動で彼らと戦っていれば厳しくなるのは当たり前の話だ。
そうして2000人から最盛期には3000人はいると言われた地場証券のディーラー達の多くが淘汰され、市場から消えていった。現在は数百名ってとこだろう。
そりゃ絶滅危惧種と呼ばれるのもしゃあない(^_^;)
続く…