【ビジネス】証券ディーラーとはどんな世界なのか…に追記
「証券ディーラーとはどんな世界なのか。就職の仕方やリスクについて。」
http://methane-trade.main.jp/stock/2016/07/13/kabu-dealer/
とても分かりやすく実体験を踏まえて書かれていましたね。
ただいくつかの証券会社でディーラーをやってきて、現在の会社ではディーリング部長をやっている自分の立場から少しだけ理解しておいて欲しいことがあります。
ディーラーにさえなれれば、どこの会社でやっても条件や環境は一緒というわけではないということ。
報酬体系なども様々ですし、取引環境は驚くほど会社によって違いがあります。
雇用形態としては概ね『正社員』『(少ないけど基本給のある)契約社員』『(基本給なしの完全歩合の)契約』などに分けられます。
正社員での採用はほとんどが新卒に限られるでしょう。中途での正社員採用はウチは多少やっていますが、あまりないと思います。基本給は少し厚め、雇用は安定するものの、結果が出なければ異動のリスクはあり、成功報酬は契約ディーラーに比べると低くなります。早い段階から実績を出す自信がなかったり、経験や知識が少ないうちはこっちを選択しておいた方が安全ではあるでしょうね(ほとんどそういう形で中途採用してくれる会社はないでしょうけど)。
『(少ないけど基本給のある)契約社員』は最も一般的な形になります。成功報酬は各社各様ですが、売買利益から一定のものを差し引いた実利に対して40%前後が一般的だと思います。
『(基本給なしの完全歩合の)契約』はかなり限られてはいますが、成功報酬が最も高い契約形態であると思います。ただし、基本給はないので負けると諸々大変です…(^^; またこの雇用形態の場合に多いのは(会社によっては)損失は自腹(差し入れた保証金などから差し引かれる)って場合が結構あります。
個人投資家でやるのとディーラーでやるのとメリット・デメリットは必ずあります。
個人投資家は自分のお金でやるので儲かれば税金払えば残りは全て自分の稼ぎです。ただ負けて飛ばせばお終いだし、職歴は無職になってしまうのでその後の人生、就職を考えたときのリスクは小さくないです。面接やっていても十年近くも個人やっていて履歴書には「職歴なし」、自己資金飛ばしてしまったのでディーラーやりたいと受けにくる人も少なくないです。でも自分のお金飛ばしてしまったような人に会社の大切な資金を預けたいとは思わないですよね(^^;
ディーラーであれば、雇用関係が発生しますので職歴にはしっかりと残ります。運用資金もかなり潤沢(会社によりますけど)です。ただし、稼いでも報酬率に従った報酬しか得られず、さらにそこから所得税を課されるということで実際の手取りは…(^^;
運用環境はどうでしょう?
個人は何をやるにも自己責任の範囲なので自由です(市場のルールは守ってね)。株やろうがFXやろうが商品やろうが…。また好きな証券会社に口座を開けることもできます。
一方で、ディーラーは原則として自社でしか売買は出来ませんし、その会社が対応している商品などしか取引できません。会社によっては個別株は出来ても派生は出来ないとか、個別株でもジャスダックは出来ないとか、派生は出来ても個別株はほとんど出来ないなんて会社もあります。またオーバーナイトもほとんどさせてもらえない会社、売りをやらせてもらえない会社もあります。取引手法に関してもかなり制限をかける会社が少なくないですし、ちょっとした損が出ただけで売買を止められてしまう場合も多いようです。
自分がディーラー(プレーヤー)だったら、えらい窮屈だなと感じてしまうでしょうね(^^;
大切なことは『自分がやりたい運用が出来る環境がそこにあるのか?』。それが全くない会社で制約だらけの中でトレードしても数字は残せないし、転職もままならなくなります。全くの未経験の人には難しいかもしれませんが、自分が結果を残すために必要な環境があるのかどうかは自分の未来を左右する問題ですからよく調べてみてください。
ネット証券が台頭し、取引環境においてディーラーの優位性がほとんどなくなってしまってから(下手すると劣後してるかも)、ディーラーになる必要性は少なくなってしまっているかもしれませんね(こんなことディーリング部長が言っていいものかなぁ…w)。
それ以外にも運用者としてはヘッジファンドや機関投資家としてのファンドマネージャーという道もあったりもします。ボルカールールの影響で大手や外資系、銀行系などグローバルな事業展開をしている金融機関では自己売買(それらの場所ではディーリングとは言わずプロップ・トレーディングというのが一般的)はほとんどなくなってしまいました(トランプ氏が勝ったので流れは変わるかもしれませんが)。
運用者としての道を夢見ても、現在の日本は狭き門になっているという事実は確かです。
ディーラーというのは運用をやっていくうえで一つの選択肢に過ぎません。
自分の相場観で純粋に勝負したいと思う人にとっては数少ない貴重な選択肢の一つではあります(その自由度は会社による)。
「他人のお金」で市場でリスクを取る以上、運用のプロとして恥ずかしくないだけの知識やスキル、収益力を身につけていって欲しいと思います。そして自分の可能性をより広げていって欲しい。それは簡単な道ではありません。中途半端な気持ちなら来ない方がいいでしょう。学ぶ努力を怠らず、様々な知識を身につけていく。5年、10年、20年…と運用者として生き残っていくためには経験も知識も沢山身につけなければなりません。
一流のプレーヤーと言われる人は、ディーラーでも個人投資家でもヘッジファンドマネージャーでも自分に厳しく、努力を怠らない人がほとんどだと思います。そういう意味ではどういった道を選ぶにせよ、相場の世界、勝負の世界で勝ち続けて生き残りたいのであれば、学ぶべきことは沢山あるのですから。
日本で純粋に、アクティブに運用の道をトライできる場所が少なくなってしまった現状を何とかしたいと思い、自分も現在の会社で採用・育成に真剣に取り組ませてもらっています。
この世界を志す若い世代に扉を開き、一人でも多くのプロの運用者を育てていくこと。
そんな思いは変わらずにいます。未経験者採りすぎて一時的に未経験者採用は止めていますけど…(^^;
中途の未経験者で当社に来て、大きく成長し始めている若手も何人かいます。
彼らが『ディーラー』で在ることを誇れるようにしてやりたいと部長としては思うのです。