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【市場雑感】健全な市場を育てるために…

「クオート・スタッフィング」、「ゲーミング」…こんな言葉は数年前まで日本の株式市場で聞かれることはほとんどなかった。
どちらもHFTが行う「行為」。「(運用・投資)手法」とは個人的には認めたくない。

「なんで奴らはやりたい放題なんですか?俺たちは取消ですら厳しく注意されているのに!」
後輩や部下のディーラー達から何度も聞いた台詞だ。
注文状況を示す「板」は確かに酷い有り様だ。寄り前や引け間際なんて酷いものだ。
大量に出ていた注文が一瞬にして消える。目視でやっているディーラー達からすればたまったものではない。

東証の約定率はアローヘッド稼動前の40%台から20%台まで低下した。これはそれだけキャンセルが増えていることを意味する。一方でディーラーは迂闊に取消すら出来ない。
「市場は不平等だ」と感じるディーラーや個人投資家は多い。それがHFT悪玉論の根底にあり、強い反発、市場への不信の原因になっている。

同じ土俵で戦わないことが基本。彼らの発注・取消に振り回されていたらストレスしか残らない。
ただ市場全体の約定率を2割も押し下げてしまったHFTの功罪については客観的な視点で再評価して欲しい。

当然、HFTの中にも健全なもの、市場の流動性の向上に資するものもある。しかし、中には最初に挙げたような行為を積極的に行うものや、さらに悪質な市場の透明性・公平性を損なう存在もある。

彼らの行為に業を煮やし、それに対抗しようとして処分を受ける個人投資家やディーラー達。もちろんその行為は罰せられるべきだし、ミイラとりがミイラになってしまうのは愚かなことだ。部下達には「彼らがやっているから」ではなく、証券市場を担う一員として胸を張れる勝負をしろと指導している。
ただ今の市場が本当に公平性を保てているのかどうか?監督官庁や取引所の方々にも自問自答して欲しいと思う。

そこに何か欠落したものがあるから、HFT悪玉論が消えないのではないだろうか?
本来、テクノロジーの進歩を活かした収益モデルは素晴らしいものだ。しかし、監督・管理側の能力をはるかに上回ってしまった彼らは野放し状態になってはいないか?米国のように監督監視体制の強化に多額の資金を投じることも、欧州のように(過度なキャンセルに)規制をかけることもこの国の市場はしていない。
健全なHFTを守るためにも、多様な参加者によって形作られる健全な市場を育てていくためにも、真剣に議論し、考えるべき時なのだと思うのだが…。

最近、周りで起きる様々なことを見ていて強くそう思う。

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プロフィール

tetsu219

Author:tetsu219
元証券ディーラーです。
二十数年ディーラーやって、シンガポールにも一時期行ってヘッジファンドを立ち上げてみたりと色々やってきて、とある証券会社でディーリング部長になり、今はシンガポールでヘッジファンドの設立・経営をやっています。

基本仕事ネタです。
更新は気が向いたときだけ(^^;
でもこのブログを通じて運用を志す若い世代の人たちに何か伝えられること、その一助になればと思っています。

初期は限定記事にしていましたが、今は開き直って全部公開にしてますのでお気軽に(笑)

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