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【ビジネス】HFTは市場に流動性を供給し、株価の変動を緩やかにしている…だそうですが

拝読しました。

http://www.jpx.co.jp/news-releases/140520_a.html

ちょっと結論ありきな印象もぬぐえないですが、大筋としては同意できる内容だと思う。
安直なHFT悪玉論については自分も反対。
とはいえ実証データとしてHFTとして定義した条件に合致したものを全部ひっくるめて使用している時点で重要なポイントが欠けている気もする。

大筋としてはメイカー注文が多く、流動性供給し資する面があるというのは同意。
ただ取消の比率が非HFTに比べてかなり高いことが板の信頼性を失わせていることや、過当な数量および件数の発注取消を繰り返すことで、他の市場参加者の売買に影響を及ぼす面(人間が手動でやっていれば相場操縦行為)、そういった板の質の悪化によって非HFTの短期売買参加者が急速に減少した事実。
またHFTの中にも合理的かつ健全な存在も多数ある中で、一部悪質な手法を用いているHFTも存在している事実。そしてそれを取引所も当局も把握しきれていない現実。
そういった都合の悪い面には一切触れていない気がする。

テクノロジーの進歩を利用して利益を上げていくHFTという存在自体は合理的なもの。
ただ人間にも悪質な者がいるように、その全てが健全なものであるとは言えない。
しかも人間が手動でやるのに比べようもないほど高速かつ大量かつ広範囲に渡って発注・取り消しを繰り返す存在。
それを市場横断的(取引所、PTS、ダークプールなど)に監督監視する体制が日本は十分ではない。

欧米で高まるHFT否定論議。
そして欧米ではHFTのシェアは頭打ちになり、現在は低下傾向にある。
取引所がHFT誘致を積極的に進めてきた日本。
そして規制も監督・監視体制も十分ではない日本ではHFTのシェアが高まる一方。

「一部の悪質な」HFTをどう排除するのか?
それが出来なければそう遠くない将来、日本においてもHFTは悪であるという誤った認識が強まり、結果としてHFT規制論議は欧米以上に高まる恐れがある。
HFTによるみかけの流動性に依存しきった市場がそのときを迎えたときにどうなるか…。
多様な参加者による厚みのある市場を作り上げることが大切だと思う。
そのためにはどんなに実態の把握が難しいHFTでも、その実態を把握し、悪質なものを摘発し、市場から排除する仕組みを作る必要がある。



【欧米でのHFT規制および監督監視体制強化の動き】
・イタリアでHFT課税制度導入。同国株と株価指数派生商品で売買時間が0.5秒未満の取引には総額0.02%の課税。(欧州)
・ドイツではHFTの規制当局への登録を義務付け。(欧州)
・フランスではキャンセル・訂正の比率が2/3を超えた取引参加者に特別税を課す。(欧州)
・統合取引追跡システムの導入。証券取引所ごとに管理している取引データを取引所とFINRA(取引所外取引)で横断的に収集し、取引監視をリアルタイムに行うことを可能にする。(米国)
・一定の条件(①一日に200万株もしくは2000万ドル以上の売買を行っている②一か月に2000万株もしくは2億ドル以上の売買を行っている)で大口市場参加者を指定。指定された場合は識別番号(LTID)を付与され、注文発注に際して証券会社にも提示しなければならない。その識別番号によってSECは事後的に追跡・分析が可能になる。(米国)

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tetsu219

Author:tetsu219
元証券ディーラーです。
二十数年ディーラーやって、シンガポールにも一時期行ってヘッジファンドを立ち上げてみたりと色々やってきて、とある証券会社でディーリング部長になり、今はシンガポールでヘッジファンドの設立・経営をやっています。

基本仕事ネタです。
更新は気が向いたときだけ(^^;
でもこのブログを通じて運用を志す若い世代の人たちに何か伝えられること、その一助になればと思っています。

初期は限定記事にしていましたが、今は開き直って全部公開にしてますのでお気軽に(笑)

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