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【ビジネス】セミナーにて

昨日はトムソン・ロイター主催の株式セミナーにモデレーターとして出席してきました。




第一部は越智議員によるアベノミクスについてのお話。


第二部に自分と自分からお願いしたパネリストお二人とのパネル・ディスカッション。




この企画をご提案いただいたとき、マクロや政策面のお話を市場の現場に近い自分が話したところで大した説得力はないだろうなと思い、あえて違う側面から切り込みたいと提案させていただきました。




『呼値変更』




今年1月14日にフェーズ1が実施され、TOPIX100銘柄のうち5000円以上の銘柄が対象となりました。


そして7月にはフェーズ2が実施され、そのときには0.1円刻みの呼値が導入されることとなります。


http://www.tse.or.jp/rules/comment/b7gje60000048plb-att/130514_kabu-_j.pdf




『呼値の単位の段階的な適正化について』


とタイトルには記され、呼値縮小のニーズが高まっているために実施するとのことでした。




確かに昨年末にかけてPTSのシェアが増大傾向にあり、、その価格改善効果を評価する向きが多かったのは確かです。機関投資家などのバイサイドの方々にとってはメリットのある変更かもしれません。




一方で、板が十分の一になることで薄くなり(表面的な流動性の低下)、板の動きは激しくなり、目視で板を見て売買することが困難になってしまいました。


それはディーラーやデイ・トレーダーにとっては大きなデメリットとなりました。


HFTやマーケットメーカーにとってもスプレッドの縮小は利幅の縮小につながります。


短期運用者にとってはかなり致命的な影響を与えかねない変更だったと感じています。




小数点という概念が入ることで発注系だけではなく、ミドル・バックのシステムにも対応や変更が迫られる。


結果としてシステム投資を市場参加者に強いることにもなります。


個人投資家に0.1円刻みを喜ぶ人がどれだけいるのでしょうか?


この変更を行う前に市場参加者と十分な対話がなされたとは正直思えないのです。


ヒアリングなどは実施されましたが、正直結論ありきであったようにすら感じています。



取引所の方々を前に否定的な話もいたしましたが、考えてほしいのです。


市場参加者との対話の重要性を。


0.1円刻みによる価格改善効果がメリットとして認識され、バイサイドの方々がPTSを使う場面が増えた。


それはそれでいいじゃないですか?

ただ個人投資家も幅広く参加している取引所までが人間が目視で売買することが困難になるほどの変更を行うことには疑問を感じざるをえないのです。


HFTや一部の機関投資家のニーズによる変革ではなく、取引所こそ裾野である一般投資家との対話を大切にしてほしい。




世界トップレベルの個人金融資産を持つこの国で海外投資家のシェアが過半を超え、外人動向に一喜一憂している現状を悔しいと思ってほしい。


株式市場をもっと身近なものにし、一般の投資家にも楽しんでもらう。


国内の運用者を育て、国内の金融資産を活性化し、金融・運用ビジネスを強くする。




この国の持つ個人金融資産は見方を変えれば資源だと思うのです。


それを活かすだけの金融・運用ビジネスが育っていない。


市場の活性化はただ株価を押し上げればいいというものではない。


市場参加者の多様性を保持し、国内市場参加者のすそ野を広げ、育てていくことこそが本質的な市場活性化なのだということに取引所の皆さんにも政治家の方々にも考えて欲しい。



取引所の方々には耳の痛いお話をしてしまいましたが、そういった意見もあるということに真摯に耳を傾けてくださったことには感謝しています。

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プロフィール

tetsu219

Author:tetsu219
元証券ディーラーです。
二十数年ディーラーやって、シンガポールにも一時期行ってヘッジファンドを立ち上げてみたりと色々やってきて、とある証券会社でディーリング部長になり、今はシンガポールでヘッジファンドの設立・経営をやっています。

基本仕事ネタです。
更新は気が向いたときだけ(^^;
でもこのブログを通じて運用を志す若い世代の人たちに何か伝えられること、その一助になればと思っています。

初期は限定記事にしていましたが、今は開き直って全部公開にしてますのでお気軽に(笑)

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