【市場雑感】セレクト・バンテイジ社について
先日、金融庁から課徴金6万円の処分を受けたセレクト・バンテイジ社について。
過去に同社(事業譲渡前のスイフト社)はイギリスで約13億円の制裁金を課されている。「見せ玉(大きな買い(または売り)注文を出して市場に買い(売り)が優勢のように見せかけて相場操縦を行う行為)」による相場操縦行為での制裁金だ。
同社の陣容は『中米コスタリカに本拠地を置き、中国、欧州、南米に230のオフィスを構え、約2800人のデイトレーダーを雇って、各国の証券取引所に注文を出す……。』だそうだ。
今回の処分対象となった売買は酉島製作所とホシザキ電機の2銘柄。『平成24年4月12日から同月24日までの間、72の取引サイクル』とのことだ。
海外で10億円を超える制裁金を受けている組織。システムを使った取引を主としているとの話だ。ちょっと考えれば相場操縦行為の対象となった銘柄がこの2銘柄、この期間に限られているわけがない。規模からいっても、他国の事例からいっても。
海外で10億円超の制裁金を課されながら、日本ではわずか6万円。
しっかりと全容を洗い出し、二度とこの国の市場でそういったことが出来ないレベルでの制裁をしっかりと課して欲しいと思う。
個人投資家やディーラーは『手動』だから簡単に捕まえられる。
システム取引は広範囲かつ高速であり、膨大なデータ量かつ全容を解明するのが困難だから捕まらない…では話にならない。
そういった悪質なところをしっかりと排除できないと健全な市場は守っていけない。
そういったところを野放しにしてきたから『HFTは悪だ』とか『アルゴ=見せ玉の温床』みたいな見方が増えてしまった。
取引所の発注システムでは『残数量取消条件(Immediate or Cancel = Fill And Kill) 即時約定できる数量を全て消化したら、残数量は自動的に取り消されます。』『全量執行条件(Complete Volume = Fill Or Kill)』などの条件付の発注が出来る。
要するに注文入れて出来なければ残りは取り消すということが自動かつ正当な発注機能として認められている。
一方で、人間が手動で発注して空振りし、放っておくのは怖いからすぐに取り消すとどうなるか? 一部の証券会社の自己売買部門ではそれだけで注意・処分を行っているところもある。自己売買部門はそれほどまでに厳しい条件下(取消しすらままならない)で戦うことを求められている。
HFTをはじめとしたシステム取引についてはどこまでその監督・監視ができているのだろうか?
外形的要件、頻度などからしっかりと悪質かどうかを見極めなければいけない。しかし、その基準の明確化は簡単ではない。証券会社側のコンプライアンスの考え方一つで恐ろしいほどのギャップが生じている。そして容易に全容が把握できる手動売買と膨大な量の売買を超高速で行うシステム売買とで同じ基準で監督・監視が出来ているとは思えない。
個人投資家にもディーラーにも悪質な者はいる。
プログラムにも悪質なモノはある(ソースコードの提出ですら米国では議論になった)。
公平かつ公正な市場をいかに守っていくか。
欧米で10億円超の制裁金を課されたプロップファームに対して、日本は6万円の課徴金。
これではやったもの勝ち。
そういった悪質なモノ達が『美味しい市場』と感じることがないように、この国の市場を健全なものにしていって欲しいと願う。
セレクト・バンテイジ社に関する記事
http://diamond.jp/articles/-/49943
金融庁の勧告内容
http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2014/2014/20140218-1.htm
実際に行った売買
http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2014/2014/20140218-1/01.pdf