【市場雑感】空売り規制緩和について
11月5日から空売り規制が緩和される(空売り=株を借りてきて売る行為)。
これまで空売りを行う際は下値をたたけず、売り指値を並べて出来るのを待つしかなかった。
結果として、売りたい時に売れず、下げ相場になると現物株ディーラーは一気に苦しくなることが多かった。
山一倒産などに揺れた1997年の金融市場。
空売りへの規制導入はその翌年の1998年に遡る。市場は山一の次を探し、都銀の何行かが標的となった(それを払拭するために都銀の合併が進んで今のメガバンク3行体制につながっていく)。そのときに活発に行われたのが「空売り」。
相場の下落や過度な売り仕掛けを防ぐために空売り行為への規制が導入される(1998年旧大蔵省によって直近公表価格未満での売却を禁止、注文時に空売りを明示、確認を義務化)。
そしてITバブル崩壊後の下落局面で、規制はさらに強化された(2002年金融庁により、株価の下落局面では直近公表価格以下での売却を禁止、株価の上昇局面では直近公表価格未満での売却を禁止(現在のアップティック・ルール)、貸株料も有料化、空売り明示義務を信用取引にも適用)。
リーマン・ショック時にも空売り規制は強化される。「ネイキッド・ショート・セリング(株を借りてくるなどの手当てなしに売る行為)」の禁止。
基本的には相場の下落局面で下落を抑制するために導入されるという形で規制は強化されてきた。
といっても上昇局面になったからといって緩和されることはなく、ショート(売り)から入る取引は規制され続けてきた。
結果として下げ相場でリターンを取りづらくなり、運用による収益が不安定化したため、相場低迷期では多くのディーラーが淘汰され、いくつもの証券会社が消えていった(とはいえデリバティブなどを使って対応力を向上させることは出来たはずだし一因に過ぎないが)。
その価格規制がようやく緩和される。
一定の範囲内に限ってだが価格規制が緩和される。
今の現役世代には価格規制がない相場を知らないディーラーも多く、11月5日は少し相場が荒れるかもしれない。
ただこの規制緩和は大きな前進。そもそも市場の価格形成を規制によって歪めるのは決していいことではないと思うから。
売りが規制により抑制されれば、その後の上昇局面はつまらないものになる。売り自体が減ってしまえば「踏み上げ、ショート・スクイーズ(売り方のパニック的な買い戻し)」が入りづらくなる.
さらに急落局面では売り方の買戻しが入るからそれなりに戻りも出てくるし、売り場も作られる。
その売り自体が抑制された状態で崩落が起きれば…。
相場のダイナミズムを維持するためには必要以上の規制は少ない方がいい。
「売りで儲ける」というと一般の人には悪い印象になるかもしれないが、相場は上がりもすれば下がりもする。その中で戦い続け、勝ち続けることを職業にしているものとしては必要な行為でもあり、また正当な売買手法の一つでもある。
「売り」はとても勇気がいる行為だ。何故なら「買い」は最悪その企業が倒産してもゼロにしかならないが、「売り」は青天井。5倍にも10倍にもなるリスクがある。
下のリンクは希代の売り屋として知られたジェシー・リバモア。ウォール街のグレートベア(相場の世界ではベア(熊)は弱気、ブル(牛)は強気)。
彼は4回自己破産し、3度の結婚、そして最後は自殺している。
まぁ売りでばかりやられたわけではないし、その都度復活するのがまたすごいとこなんだけど、それぐらい売りっておっかないってことで^^;
http://www.monex.co.jp/Etc/00000000/guest/G1400/sinyo/faq_11.htm
http://ja.m.wikipedia.org/wiki/ジェシー・リバモア