【ビジネス】自己資本規制比率について
平成24年12月末時点での総合取引参加者の自己資本規制比率が公表されている。
いつも思う。
『何故ここまで自己資本規制比率を高くしておかなければならないのだろう?』
1990年代後半。
『山一ショック』が業界を震撼させた。
四大証券の一角が自主廃業に追い込まれ、三洋証券、北海道拓殖銀行、日債銀…。
安全と思われていた大手金融機関が次々とバブルの後遺症から倒産に追い込まれていった。
その時期、金融機関の安全性をみるうえの指標として自己資本規制比率が重要視されるようになった。
当然、高ければ高いほど安全性が高いといえる。
ただ本当にそれがビジネスの上で何よりも優先されるべきなのか?
対顧客でビジネスを展開しているのであれば、「ウチは安全な金融機関です」と示す意義は高い。
しかし、地場証券の多くは自己売買(ディーリング)を主としており、営業が業務の中核になっている会社は少ない。
またあれから10年以上も経っている現在、自己資本規制比率が高いからその会社を使うという顧客はそれほど多くはないのも事実だ。
実際にこの一覧を見てみるとほとんどの大手証券や銀行系証券、外資系証券の自己資本規制比率はそこまで高くはない。
ほぼそれらの全てが500%を下回っており、多くは300%~400%程度で安定的に推移している。これらの会社の多くはそのレベルに落ち着くようにしっかりとコントロールされている場合が多い。
そして上位に並ぶ会社を見ると中小地場証券が1000%超でずらりと並ぶ。
これが意味するもの。
見方を変えれば、それだけビジネス・リスクを取っていない証左でもある。
ディーラーにはこの数字を高くしたいから月末はポジションを残すな、期末は絶対にポジションをゼロにしろという規制をほとんどの地場証券が行っている。
しかし、1000%超の自己資本規制比率達成のために収益機会を奪ってまで現金化する必要があるのだろうか?
価格に歪みが出やすい期末などはディーラーにとってはビジネスチャンスにもなる。
そこを過剰に高い自己資本規制比率維持のために制約かけるのはあまりにももったいない気がする。
資本を元にビジネスを行い、リターンを得るのが企業活動であるならば、これは株主にとって決して褒められた経営とはいえないのではないろうか?
資本を寝かして安全な状態に保持していることで自己資本規制比率を高めた結果、ビジネス自体が消極的になり、リターンが得られず赤字に陥っているのなら、これはビジネスの在り方を間違ってしまっているのではないだろうか?
確かに数値は高い方が監督官庁は評価してくれるだろう。
しかし、そこを気にし過ぎてビジネス自体を委縮させているようでは収益黒字化は遠のく一方だ。
結果、赤字を続けて資本を毀損し、株主に損失を与えているのならそろそろ発想の転換を図るべきではないだろうか?
自分も経営に対してよく訴えていることだが、自己資本規制比率を保つべき水準を明確にし、そのうえでもう少し積極的にビジネスリスクをとっていくべきだと思う。