【市場雑感】ユーロの矛盾。ギリシャくんだって可哀想?
落ちこぼれのギリシャくんには困ったものです。
EUグループの皆さんにご迷惑をおかけして、優等生のドイツくん、フランスくんに面倒ばっかりかけて。
と一般的にはこういう状況なんですが…。
今日はちょっと違う切り口で考えてみましょう。
ユーロ組というひとつのクラスがあります。
このクラスにはドイツくんというとっても偏差値の高い優秀な生徒がいます。
でもその一方でギリシャくんという偏差値がかなり低い落ちこぼれくんもいます。
17人でひとつのクラスを作っており、その格差はかなりのもの。
勉強するためには教材を買うお金が要ります。
でもそのお金を持っている子と持っていない子がいるのですが、そこはあくまで自己責任でなんとかしなさいという状況。
お金持ちのドイツくんはお金をかけて勉強して偏差値上げられるけど、お金がないギリシャくんは勉強するための教材も買えずに落ちこぼれていったのです。
一方で、ドル組、円組、元組などのクラスもあるのですが、このクラスはたった一人の生徒しかいません。
つまりそのクラスの中での実力差は全くありません。
クラス間での競争はそれぞれのクラスの偏差値の平均値で行われます。
ユーロ組なら17人の平均値ということです。
学校全体でテストを行いました。
そしてその順位毎に賞金がもらえることになっています。
そのお金を元手にまた勉強できるのです。
ドル組、円組、元組のみんなは『ユーロ組には余裕で勝てるだろ』とタカをくくってテストに臨みます。
だってユーロ組の偏差値はそんなに高くはないのですから。
ところが実際に結果を見てみると…
ドイツくんやフランスくんがエライ上位に来ているではありませんか。
当然、ギリシャくんあたりは最下位でしたけど(^^ゞ
ユーロ組の偏差値は低かったのに…ドイツくん、フランスくんは美味しいところを持っていってしまいました。
そしてガッツリ賞金をもらい、それでまた勉強して偏差値を上げていくのです。
国家間の貿易において通貨がこの偏差値にあたります。
通常はひとつの国がひとつの通貨を使っているので、その通貨はその国の経済力を表しています。
強く景気のいい国の通貨はより高くなり、弱い国の通貨はより安くなります。
その通貨価値を元に競争が起きるため、より弱い通貨の国は他の国に対して安くモノを作り、輸出が出来るようになっていきます(価格競争力を持つ)。
一方で強い国の通貨は高くなるため、その国で作られたものは割高になり、海外であまり売れなくなってしまいます(競争力の低下)。
日本が円高(円の価値が高くなる)で苦しんでいるのは日本経済を支える輸出産業(トヨタやソニーなどの自動車や電機)が競争力低下に苦しんでいる結果です。
本来であれば、その通貨価値の変動によって国家間のバランスが取られていく…はずなのですが、ユーロはそういうワケにはいきません。
経済力も競争力も大きな格差がある17カ国が共同で使う通貨です。
非常に強い経済力を持つドイツ。
しかし、そのドイツが使う通貨はユーロであり、これは弱小国も含めた17カ国の経済力を元にして評価されています。
つまりより安い通貨価値で他の国々と競争できるため、ドイツの輸出産業にとっては有利な状況が生まれるのです。
その効果もあってドイツは景気のいい状態が続いています。
一方でギリシャのように弱い国が本来の経済力よりも割高な通貨を使うことで競争力はより低下し、厳しい状況へと追い込まれていきます(日本においても地域格差の問題などはありますが、それはまたおいといて…)。
さらにユーロ各国は同じ通貨を使っていても、財政政策は各国が独自に行っています。
国の借金である国債はそれぞれの国の信用力を元に金利が決められています。そういった面では格差があるままなのです。財政政策においては強い国はより安い金利で、弱い国はとても高い金利でお金を借りなければいけないのです。
先の例でいえば、元々それなりにお金もあるドイツくんはさらに勉強するためにお金を借りているけど銀行の低利融資を使えて、信用力のないギリシャくんはサラ金に駆け込むというところですかね(^^ゞ
今、話題になっているユーロ共同債はそれをクラスみんなの平均的な信用力(偏差値)で借りれるようにしましょうということです。
そして偏差値の低い子たちも勉強できるようにしましょうということなんですが…。
肝心のドイツくんはそんなの嫌だと言ってますね(^^ゞ
またまた超大雑把な解説ですが、第2の池上彰を目指すということで(笑)とりあえず昨晩の話題に上っていたユーロ共同債をネタに練習がてらちょっと書いてみました(^^ゞ
ちなみにユーロ組の生徒たちはこんなメンバーです。
アイルランド
イタリア
エストニア
オーストリア
オランダ
キプロス
ギリシャ
スペイン
スロバキア
スロベニア
ドイツ
フィンランド
フランス
ベルギー
ポルトガル
マルタ
ルクセンブルク