【ビジネス】AIJの記事を読んで
今日の日経朝刊のAIJの記事は二つの意味で残念。
知り合いの方がいたら申し訳ないんだけど、他人のお金を預かる会社(人)として絶対にやってはいけないことだと思う。
自分のレコードを偽る。損失を隠したりごまかしたりする。
これは履歴書詐称以上に悪質な行為。
そうやって投資家や会社の信頼を裏切るような会社(人)がいるから規制が厳しくなりコストが上がる。そして投資家は若い運用者やこれから育とうとする会社に投資をしてくれなくなる。
自らが直接投資家に与えた損失以上に業界に与えるダメージは深刻。
特に国内運用ビジネスが今後非常に厳しくなることが予想されている中で起きてしまったことは本当に残念。
せっかく金融庁が運用業界活性化のために新しい運用業の法案を作ってくれたりしているのに…。
悪質な行為をする一部の運用者や運用会社のために業界全体の規制が上がり、結果として衰退していく。
世界有数の個人金融資産を誇るこの国で運用ビジネスが低迷し、衰退していくのは本当に残念。
こういった問題を乗り越え、高いモラルを持った若い運用者たちが育ち、業界を活性化させていける道筋をしっかりと作っていきたいと願う。
そしてもう一点
『株価指数のオプション売りなどで、相場変動に左右されずに安定して高い収益を目指す』
巨額損失が出た経緯は分からないけど、これを見る限りリーマン・ショックか震災のときに損失が出た可能性は高い。
これでまた『オプションの売り=危ない』になっちゃうとしたら残念。
取扱説明書をしっかり読んで用法・用量を守ればこんな有意義な商品はない。
それをロクに読まずに安易な運用をやる人は少なくない。
権利行使価格の遠いオプションを大量に売る行為。
オプションの本質的な怖さを知らない人がよくやる投資手法。
一見、権利行使価格が遠いから安全なように見える。
10回に9回以上は勝てるはず。
そしてオプション・プレミアム(価格)が安いから大量に売る(いくら稼ぐために何枚売るとかいう発想が一番危険)。
結果、ガンマ・リスクは跳ね上がり、価格が近づいてきたときにヘッジやポジション・コントロールのしようがなくなる。
そして巨額損失は生まれる。
そして10回に1回の損失で全てを失い、ヘタをすればとてつもない損失を生み出し、会社をつぶしたり、個人としてとてつもない負債を抱え込む。
自分が運用者としてやってきた中でもいくつもあった。
ベアリングスのニック・リーソン…先物のポジションばかり注目されるけど、目先の資金手当ての為にオプションの売りを大量に行い、そのポジションを守るために先物で買い支えようとした。結果、イギリスの名門銀行ベアリングスは破綻に追い込まれた。
勧角証券(現みずほインベスターズ証券)…第一勧銀から増資を仰ぎ経営支援をしてもらうところまで追い込まれた。ディーリング部は一時解散。90年代中頃は全ての権利行使価格で同社は筆頭の売り方になっていた。
タイコム証券(の顧客)…2006年の上昇相場でコール・オプションの大量売り建玉が大きな損失につながった。コールで巨額損失出した珍しい例。大証の証拠金ルールの改正などにつながった。
某個人投資家…親の生命保険を元手に相場を張り、オプションの売りで1億円ぐらいまで資産を増やしたはいいが、東日本大震災で10億ほどすっ飛ばしたらしい。こういった投資家がかなりいたため、ネット証券の多くが損金回収できずにかなりの額の特別損失を計上するはめになった。
ニアの(権利行使価格の近い)、プレミアムの高いオプションを売る方がポジション・コントロールははるかにしやすい。
タイム・ディケイ(時間的価値の減少)を取りにいくのなら、ただ売るだけではダメ。
オプションの特性やその本質を理解していないとこういったことが起こる。
でもオプションほどストラテジーを適切に反映できる商品はない。
このことが『オプションの売り=危険』につながらないことを願います。