【ビジネス】日本の運用者が進むべき道とは(MarketForum第一回セミナー④)
なんでこんなに日本市場(日本時間)動かなくなっちゃったのでしょうか?
自分はそこには様々な要因が絡んでいると考えています。
『市場の成熟』という面もあるかもしれません。
ただ日本の市場のそれだけの価格形成機能があるのならば、これほど毎日のようにギャップアップ・ギャップダウンにはならないでしょう(^^ゞ
海外市場が価格を決定し、それに追随して寄り付いたあとはこう着…これは『市場の成熟』ではなく、『主体性の喪失』だと私は感じています。
①今、市場を動かしている要因が欧米にあるから。
というのも一つでしょう。
しかし、それだけだと思ったら大きな間違いだと思います。
もっと根の深い、構造的な問題にしっかりと目を向けておかないと、日本の証券市場の活性化はとても実現できないでしょう。
日本時間の値幅の低下は2006年頃から始まっています。
その頃から、日経平均株価が上昇であれ下落であれ、1500円程度動いたときに、日本時間で生まれた値幅は大体200円~300円程度。
板は厚くなる一方なのに、出来高は増えず、値幅も出ない。
ちょうどその頃、日本では株ブームが発生しました。
株で儲け話があちこちで聞かれ、本屋には『100万円を1億円にした』とか、『絶対儲かる』とか、派手な文句が帯に書かれている本が並び、若い子たちが一攫千金を夢見て、デイ・トレーダーになったり、ディーラーになったりしました。
その多くが『日計り』という短期手法に偏った運用を選択し、結果として日本市場(時間)にはそういった短期運用者があふれかえったのです。
買ったらすぐに売ることしか考えない。
明日の相場、一週間後の相場、これからの相場がどうなるかなんてたいして考えもせず、わずかな時間に利益を確保するというやり方の市場参加者がかなり増えたのです。
結果、みんなで隙間を奪い合うような構図が目立つようになり、日本時間にトレンドは生まれづらくなりました。
たまに値幅(トレンド)が出るときは、某欧州系証券からCTAとみられる大量の先物買いや売りが入ったときだけ…なんて状態になったのです。
そしてそこにHFTの台頭。
彼らこそ究極の存在。マーケット・メイクと称してオーバーナイトではポジションを持たないし、日経平均株価の水準も気にしなければ、今後どうなるかなんて考えない。いわば装置産業ビジネス的な運用手法の持ち主です。
そして東証も大証もこぞってそういった運用者を日本市場に引きこんできた。
②市場参加者の運用スパンが短期(日計り)に偏ってしまっている。
いわゆる機関投資家もパッシブ運用が主流であり、積極的にリスクを取りにいくところは減りました。
そして銀行や企業の保有株比率は低下し、現在、日本市場の主役は海外投資家です。投資主体別売買動向をみれば、概ね50~60%超が海外投資家に占められています。
海外投資家といっても、日本の運用者がシンガポールや香港に渡って行った売買も含まれているので、純粋な海外投資家はもうちょっと少ないとは思いますが(^^ゞ
ただ外資系証券注文動向や投資主体別の売買動向から、市場の方向性を生み出しているのは外国人投資家であることは間違いありません。彼らが買えば上がる、そして売れば下がることが圧倒的に多いのですから(部門別でみると相関係数が高い)。
日本は実態経済においてもそうなってしまっていますが、外需依存になってしまっているのです。
問題はそのグローバルな運用を行う海外投資家にとって、日本市場の存在自体がかつてほど重要ではなくなってしまっているという点にあります。
かつて日本の市場は米国株式市場に次いで重要な存在でした。
しかし、世界の株式市場において、かつての主要市場の占めるシェアは低下の一途をたどっています。
アジアにおいては中国株式市場の成長、そして相対的な日本市場の低迷。
結果として、日本市場は彼らにとってリバランスの場に過ぎなくなってきているのではないかと感じています。
欧米市場が動き、それに合わせてある程度リバランスは行うものの、アクティブに参加するべき市場とは考えていない。
そんな資金に方向性を依存し、しかも彼らにとっては夜という時間帯が日本時間なのです。
③外国人投資家への依存度の高まり
そしてもう一つ。
④相場に逆行した運用を行う年金や日銀の存在
年金は元々逆張り主体です。株価が上がり、ポートフォリオ全体に占める株の比率が上がれば売り、下がれば買う。しかも今は資金流出の主体なのでどちらかといえば売り主体。
そしていつも話題に上る日銀のETF買い。
一定以上(▲1%以上が目安と言われていますが…)、下落すると株(日経平均株価やTOPIX連動型)のETFを買い、相場を支えようとします。
相場の方向性に対して大きくポジションを傾ける大きなフローがあまりない中で、相場のトレンドにはっきりと逆らう投資主体がいて(特に彼らは目先の損益など一切気にしない…)、残りが短期運用者ばかり…。
ちょっと極端な言い方をすれば、そんな構図になっているのが日本の株式市場なのです。
もっと株式投資・運用を学び、ゲームの延長線上ではなく、市場に参加する人が増えればもっと変わってくるかもしれません。
日計りに偏った参加者が、少しでも『相場を取る』参加者になっていってくれれば、もう少しトレンドが生まれてくるかもしれません。
投資に対する教育から、様々な取り組みをしていかなければならないでしょうが、日本市場を主として参加する参加者をもっと増やしていくことも必要でしょう。
韓国市場を一度見てみてください。
先物もオプションも個人の活躍が目立ちます。
そしてボラティリティもそれなりにある。
日本市場がもっと活気のある市場であって欲しい…この市場で育ってきた運用者の一人として思う今日この頃です。