【相場雑感】日本時間はなぜ動かない?②
要因①…運用の短期化
このグラフは日中の値幅を終値比で算出し(指数の絶対水準が違うため)、その水準に対してどれぐらいの比率の変動が日々あったのかを示したものです。20日移動平均にしてあります。
期間は1990年初から現在。
当然、日経平均30000円していたようなときの1%は値幅としてはかなり大きい。同じ1%でも今は100円、当時は300円ですから。その格差を是正するために終値比率を用いたのですが…。
それでも概ね低下傾向にあることが見て取れます。
大体、1%~3%で2005年までは推移していたのですが、2005年以降は1%すら切ることが多くなってきました。
ちなみに2005年~現在の間で変動率が急激に上昇しているのはリーマン・ショックのときです(直近の上昇は東日本大震災)。
当然、指数の絶対水準が切り下がっているのですから、値幅はかなり小さくなり100円を切ることもザラになってきました。
それを『安定的』と評価される人がいるとすれば、正直困ったものです。
なぜ2005年以降、急速に値幅が縮小していったのか…。
その理由の一つに『運用の短期化』があります。
この時期、『株ブーム』と言われた頃に個人投資家(ネット・ディーラー、専業トレーダー)が急速に増加しました。
本屋にはカリスマ・トレーダーの皆さんの著書が並び、『○○円を○○億円に増やした』とか『負けない方法』とやらを伝授していました。
そして証券ディーラーの派手な生活振りが喧伝され、自前の資金がない若い人たちの多くがディーラーになりたいと安易にこの世界に入ってきました。
もちろん中には努力をし、勉強をし、今では各社の柱になるような人たちもいます。でもその多くが安易な気持ちで運用を考えていたのです。
そしてディーラー、デイ・トレーダーの多くが『日計り』という超短期売買に傾斜していきました。
会社によっては損に対して非常に保守的なスタンスを取り、その結果『一カイ二ヤリ』というやり方が証券ディーラーの主流になっていきました。
つまり買ったらすぐに売ることを考えているような人たちの売買がかなりの部分を占めるようになったのです。
2003年ぐらいから、それまで認められてきた夜間取引(携帯電話から売買していた)が禁止になり、会社からじゃなければ売買出来ない、そして管理者が立ち会わなければ売買出来ない…と日系証券はその頃からより日中のみの売買に傾斜していました(外資系は今でもやっているところが多い)。だってオーバーナイトしても朝までヘッジも何も出来ないんですから。
売買代金のかなりの部分が短期運用(日計り)によるものになっていき、ボラティリティは低下していきます。
そしてここ2~3年程度の間、証券取引所はシステムの高速化を進め、HFT(超高頻度売買)のファンドを積極的に誘致してきました。
彼らはマーケットメイクと称して、市場に流動性を供給してはいるものの、板上に多くの注文を出しながら一瞬にして取り消すということも高頻度(^^ゞ
結果、市場は見た目の流動性(板は厚くなった)は増したものの、取り消し率は増加し、板の信頼性は薄れ、そして『一カイ二ヤリ』ばかりをおっかけてきた地場証券ディーリングの多くがダメージを受けていったのです。
これは投資主体別売買代金シェア(5週平均)を外国人投資家、個人投資家、金融機関別に示したものです。
ちょうど2005年前後に急激に個人投資家の売買代金シェアが拡大し、そしてライブドア・ショックとともに急速に低下していったことが示されています。
そして金融機関は継続的に低下傾向。外国人投資家は継続的に増加傾向。
外国人投資家のシェア増加に関しては、特にアローヘッドが稼働して以降、増加した部分はHFTによるところも大きいと思われます。
市場売買代金のかなりの部分を日計りやHFTといった超短期運用が占めるようになっていった結果、一日の間にポジションを傾ける参加者の比率が低下し、結果として『おしくらまんじゅう』のような板の取り合いという状況につながっています。
その日のうちに反対売買する人ばかりでは、そうなるのも当たり前。逆にいえば、クレディ・スイス経由の先物売買に見られるように、一日の間に大きくポジションを傾ける人が増えれば、ボラティリティはそれなりに出てくるのでしょう。
その一つの障害になっているのが、夜間取引が出来るかどうか。今の日系証券はほとんど出来ないところばかり。結果、オーバーナイト・リスクは積極的には取りづらく、ほとんどを日計りで終わらせることが多くなっています。
そしてディーラーは『相場を取る』という取り組みをしなくなっていき、結果として運用の質も低下している気がします。
長いスパンでの運用をもっと出来るようにしていかなければ、HFTなどのコンピュータ取引には勝てない。
値幅の縮小、そしてシステム面での不利…勝ちづらくなる理由には事欠かないのですから。

このグラフは日中の値幅を終値比で算出し(指数の絶対水準が違うため)、その水準に対してどれぐらいの比率の変動が日々あったのかを示したものです。20日移動平均にしてあります。
期間は1990年初から現在。
当然、日経平均30000円していたようなときの1%は値幅としてはかなり大きい。同じ1%でも今は100円、当時は300円ですから。その格差を是正するために終値比率を用いたのですが…。
それでも概ね低下傾向にあることが見て取れます。
大体、1%~3%で2005年までは推移していたのですが、2005年以降は1%すら切ることが多くなってきました。
ちなみに2005年~現在の間で変動率が急激に上昇しているのはリーマン・ショックのときです(直近の上昇は東日本大震災)。
当然、指数の絶対水準が切り下がっているのですから、値幅はかなり小さくなり100円を切ることもザラになってきました。
それを『安定的』と評価される人がいるとすれば、正直困ったものです。
なぜ2005年以降、急速に値幅が縮小していったのか…。
その理由の一つに『運用の短期化』があります。
この時期、『株ブーム』と言われた頃に個人投資家(ネット・ディーラー、専業トレーダー)が急速に増加しました。
本屋にはカリスマ・トレーダーの皆さんの著書が並び、『○○円を○○億円に増やした』とか『負けない方法』とやらを伝授していました。
そして証券ディーラーの派手な生活振りが喧伝され、自前の資金がない若い人たちの多くがディーラーになりたいと安易にこの世界に入ってきました。
もちろん中には努力をし、勉強をし、今では各社の柱になるような人たちもいます。でもその多くが安易な気持ちで運用を考えていたのです。
そしてディーラー、デイ・トレーダーの多くが『日計り』という超短期売買に傾斜していきました。
会社によっては損に対して非常に保守的なスタンスを取り、その結果『一カイ二ヤリ』というやり方が証券ディーラーの主流になっていきました。
つまり買ったらすぐに売ることを考えているような人たちの売買がかなりの部分を占めるようになったのです。
2003年ぐらいから、それまで認められてきた夜間取引(携帯電話から売買していた)が禁止になり、会社からじゃなければ売買出来ない、そして管理者が立ち会わなければ売買出来ない…と日系証券はその頃からより日中のみの売買に傾斜していました(外資系は今でもやっているところが多い)。だってオーバーナイトしても朝までヘッジも何も出来ないんですから。
売買代金のかなりの部分が短期運用(日計り)によるものになっていき、ボラティリティは低下していきます。
そしてここ2~3年程度の間、証券取引所はシステムの高速化を進め、HFT(超高頻度売買)のファンドを積極的に誘致してきました。
彼らはマーケットメイクと称して、市場に流動性を供給してはいるものの、板上に多くの注文を出しながら一瞬にして取り消すということも高頻度(^^ゞ
結果、市場は見た目の流動性(板は厚くなった)は増したものの、取り消し率は増加し、板の信頼性は薄れ、そして『一カイ二ヤリ』ばかりをおっかけてきた地場証券ディーリングの多くがダメージを受けていったのです。

これは投資主体別売買代金シェア(5週平均)を外国人投資家、個人投資家、金融機関別に示したものです。
ちょうど2005年前後に急激に個人投資家の売買代金シェアが拡大し、そしてライブドア・ショックとともに急速に低下していったことが示されています。
そして金融機関は継続的に低下傾向。外国人投資家は継続的に増加傾向。
外国人投資家のシェア増加に関しては、特にアローヘッドが稼働して以降、増加した部分はHFTによるところも大きいと思われます。
市場売買代金のかなりの部分を日計りやHFTといった超短期運用が占めるようになっていった結果、一日の間にポジションを傾ける参加者の比率が低下し、結果として『おしくらまんじゅう』のような板の取り合いという状況につながっています。
その日のうちに反対売買する人ばかりでは、そうなるのも当たり前。逆にいえば、クレディ・スイス経由の先物売買に見られるように、一日の間に大きくポジションを傾ける人が増えれば、ボラティリティはそれなりに出てくるのでしょう。
その一つの障害になっているのが、夜間取引が出来るかどうか。今の日系証券はほとんど出来ないところばかり。結果、オーバーナイト・リスクは積極的には取りづらく、ほとんどを日計りで終わらせることが多くなっています。
そしてディーラーは『相場を取る』という取り組みをしなくなっていき、結果として運用の質も低下している気がします。
長いスパンでの運用をもっと出来るようにしていかなければ、HFTなどのコンピュータ取引には勝てない。
値幅の縮小、そしてシステム面での不利…勝ちづらくなる理由には事欠かないのですから。