【ビジネス】運用と投資
昨日の日経新聞一面に出ていた『マーケット波乱のマグマ』という記事。
興味深く読みました。
ダスキン企業年金基金の幹部が
『運用資産の100%をヘッジファンドなどのオルタナティブ(代替資産)に投資している』
とのコメントをしていたそうだ。
とても意味のある動きだ。
日本で個人投資家が一般的に投資するものとしては、預金、株、債券、為替、外債、投資信託…など。
最後の投資信託はその時期テーマに沿って売りやすいものを組成して販売することが多い。要するにセールス・トークがつけやすいもの。
典型的だったのが『野村日本戦略株ファンド』。
ITバブル終盤にIT関連株を中心に投資し、1兆円をかき集めるとして話題を呼んだ。
そしてその投資信託が設定されたあたりでITバブルは終焉を迎える。
確かドコモの最高値が設定日翌日だったような…(^^ゞ
その戦略Fの基準時価は4579円。設定して以来、半値以下になっている。
それでもなお投資信託はベンチマークと比較して、それより悪くなければ問題ない…という。
投資信託の意味って何だろう?
『運用のプロに任せる。』という意味じゃないのだろうか?
そしてその結果が『相場が下げてるから損が出てもしょうがない。』でいいのだろうか?
一方で、株や為替や債券に投資家が直接投資していくのは難しい。
特に一定以上の資産規模なら、インフレ率や経済成長を勘案し、適正な資産配分を行い、損が出ようが利益が出ようが一喜一憂せずに、ただ資産配分を維持していく…なんてことが多い。
それで効率的なリターンが得られるのかどうか?
今回のダスキン企業年金幹部の発言は重要な意味を持つ。
ヘッジファンドへの投資。
従来は年金などはヘッジファンドへの直接投資はあまりせずに、ファンドオブファンズなどを経由して、プロの目でファンドを選んでもらって間接的に投資するというスタイルがほとんどだった。
しかし、リーマン・ショックで資産をふっ飛ばすようなファンドがいくつも出て、年金などの機関投資家も姿勢を変化させつつある。
『絶対リターン』
あんまり好きな言葉ではないが、常にプラスを求める運用。上昇相場でも下落相場でもこう着相場でも…。
この実現こそがプロの運用だろう。
ベンチマークが云々ではなく、常に相場から収益を勝ち取っていく運用。
ヘッジファンドはそういった運用が求められる。
そして実は我々ディーラーも同様。
常にプラスを求められる運用という意味では同質のもの。
規模やコストの差からその手法はかなり違ってくるが、『絶対リターン』を目指すという面では全く同じ。
今、日本ではベンチャー的なヘッジファンドは非常に少ない。
法的な規制が投資家保護を目的にかなり高いハードルを課していることと、コストが非常に高いこと、そして運用というビジネスへの理解が足りないこと…様々な要因がある。
昨年、一部上場企業のオーナーと会食する機会をいただいた。
その方は数百億円規模の資産家でもある。
そこでおっしゃっていたことが未だに心に残っている。
『日本で投資したくても、受け皿になるようなファンド自体がない。』
大きな規模の資産運用を、期待される以上の利回りで回せる運用組織(ヘッジファンド)がないということだ。
日本には1400兆円と言われる個人金融資産がある。
これは日本にとっては『資源』だ。
原油もない、資源のないこの国だが、世界有数の個人金融資産という資源がある。
この資源が国内で有効に活用され、回り始めたとき、日本を変える起爆剤にすらなりえるだろう。
アジアの金融センターとしての立場を取り戻すことが出来るはずだ。
そのためには多くの変革が必要。
法整備、規制緩和(参入しやすくする一方で罰則の強化を行い、投資家保護の維持に努める措置は必要)。シンガポールや香港に負けないぐらい運用ビジネスへの門戸を広げる必要がある。またマーケットの24時間化の中で、労働基準法の対応なども必要になる。次世代を育てるという意味では投資教育も重要だろう。欧米や韓国を見習っていくべきだ。そうでなければ『投資=ギャンブル』という低い意識の運用者ばかりになってしまうし、投資家の意識も変えていく必要がある。
運用者側はもっと多様な運用を心掛け、大規模資産運用に耐えうるスキルを身につける必要がある。欧米のヘッジファンドは数千億~兆円規模。世界有数の個人金融資産を誇る日本なのに、日本から出てヘッジファンドの多くは百億円未満の小規模。
『運用のプロ』としての自覚、変革が今必要なのだろう。そして個人金融資産や年金などの受け皿になりえる運用組織(ヘッジファンド)がいくつも日本から生まれるようになっていけば、運用を取り巻くビジネス(プライム・ブローカーなど)は日本にその拠点を戻すだろう(今は香港かシンガポールがほとんど)。
冒頭で取り上げた記事は小さな変化かもしれない。でも投資家(企業年金)が投資対象を変えようとしていることは大きな意味を持つ。いずれシーダーといわれる投資家がもっと出てくれば、日本でもファンド設立が活発化していくだろう。運用者と投資家、それをつなぐ人たち…それが一つになったとき、日本の金融ビジネスはとっても面白くなるはずだ。
昨日、ちょっと書きかけて書かなかった夢の一端はこんなとこかな(^^ゞ
興味深く読みました。
ダスキン企業年金基金の幹部が
『運用資産の100%をヘッジファンドなどのオルタナティブ(代替資産)に投資している』
とのコメントをしていたそうだ。
とても意味のある動きだ。
日本で個人投資家が一般的に投資するものとしては、預金、株、債券、為替、外債、投資信託…など。
最後の投資信託はその時期テーマに沿って売りやすいものを組成して販売することが多い。要するにセールス・トークがつけやすいもの。
典型的だったのが『野村日本戦略株ファンド』。
ITバブル終盤にIT関連株を中心に投資し、1兆円をかき集めるとして話題を呼んだ。
そしてその投資信託が設定されたあたりでITバブルは終焉を迎える。
確かドコモの最高値が設定日翌日だったような…(^^ゞ
その戦略Fの基準時価は4579円。設定して以来、半値以下になっている。
それでもなお投資信託はベンチマークと比較して、それより悪くなければ問題ない…という。
投資信託の意味って何だろう?
『運用のプロに任せる。』という意味じゃないのだろうか?
そしてその結果が『相場が下げてるから損が出てもしょうがない。』でいいのだろうか?
一方で、株や為替や債券に投資家が直接投資していくのは難しい。
特に一定以上の資産規模なら、インフレ率や経済成長を勘案し、適正な資産配分を行い、損が出ようが利益が出ようが一喜一憂せずに、ただ資産配分を維持していく…なんてことが多い。
それで効率的なリターンが得られるのかどうか?
今回のダスキン企業年金幹部の発言は重要な意味を持つ。
ヘッジファンドへの投資。
従来は年金などはヘッジファンドへの直接投資はあまりせずに、ファンドオブファンズなどを経由して、プロの目でファンドを選んでもらって間接的に投資するというスタイルがほとんどだった。
しかし、リーマン・ショックで資産をふっ飛ばすようなファンドがいくつも出て、年金などの機関投資家も姿勢を変化させつつある。
『絶対リターン』
あんまり好きな言葉ではないが、常にプラスを求める運用。上昇相場でも下落相場でもこう着相場でも…。
この実現こそがプロの運用だろう。
ベンチマークが云々ではなく、常に相場から収益を勝ち取っていく運用。
ヘッジファンドはそういった運用が求められる。
そして実は我々ディーラーも同様。
常にプラスを求められる運用という意味では同質のもの。
規模やコストの差からその手法はかなり違ってくるが、『絶対リターン』を目指すという面では全く同じ。
今、日本ではベンチャー的なヘッジファンドは非常に少ない。
法的な規制が投資家保護を目的にかなり高いハードルを課していることと、コストが非常に高いこと、そして運用というビジネスへの理解が足りないこと…様々な要因がある。
昨年、一部上場企業のオーナーと会食する機会をいただいた。
その方は数百億円規模の資産家でもある。
そこでおっしゃっていたことが未だに心に残っている。
『日本で投資したくても、受け皿になるようなファンド自体がない。』
大きな規模の資産運用を、期待される以上の利回りで回せる運用組織(ヘッジファンド)がないということだ。
日本には1400兆円と言われる個人金融資産がある。
これは日本にとっては『資源』だ。
原油もない、資源のないこの国だが、世界有数の個人金融資産という資源がある。
この資源が国内で有効に活用され、回り始めたとき、日本を変える起爆剤にすらなりえるだろう。
アジアの金融センターとしての立場を取り戻すことが出来るはずだ。
そのためには多くの変革が必要。
法整備、規制緩和(参入しやすくする一方で罰則の強化を行い、投資家保護の維持に努める措置は必要)。シンガポールや香港に負けないぐらい運用ビジネスへの門戸を広げる必要がある。またマーケットの24時間化の中で、労働基準法の対応なども必要になる。次世代を育てるという意味では投資教育も重要だろう。欧米や韓国を見習っていくべきだ。そうでなければ『投資=ギャンブル』という低い意識の運用者ばかりになってしまうし、投資家の意識も変えていく必要がある。
運用者側はもっと多様な運用を心掛け、大規模資産運用に耐えうるスキルを身につける必要がある。欧米のヘッジファンドは数千億~兆円規模。世界有数の個人金融資産を誇る日本なのに、日本から出てヘッジファンドの多くは百億円未満の小規模。
『運用のプロ』としての自覚、変革が今必要なのだろう。そして個人金融資産や年金などの受け皿になりえる運用組織(ヘッジファンド)がいくつも日本から生まれるようになっていけば、運用を取り巻くビジネス(プライム・ブローカーなど)は日本にその拠点を戻すだろう(今は香港かシンガポールがほとんど)。
冒頭で取り上げた記事は小さな変化かもしれない。でも投資家(企業年金)が投資対象を変えようとしていることは大きな意味を持つ。いずれシーダーといわれる投資家がもっと出てくれば、日本でもファンド設立が活発化していくだろう。運用者と投資家、それをつなぐ人たち…それが一つになったとき、日本の金融ビジネスはとっても面白くなるはずだ。
昨日、ちょっと書きかけて書かなかった夢の一端はこんなとこかな(^^ゞ