【ビジネス】FIAJアルゴセミナー
昨日はFIA-Japanが主催するアルゴセミナーに行ってきました。
前半はメンバー企業を中心にアルゴの現状に関するプレゼンテーション。
後半はパネルディスカッションで、HFT(超高頻度取引)の中心的な存在であるゲッコー(ジョン・ファイルズ)、個人向け自動売買システムの開発を手掛ける高槁さん、ブローカーからニューエッジのイヴァン・マルコヴィッチ。そしてオレ…^_^;
やっぱりゲッコーの話は興味深い。彼らは値段も見ていないし、デイ・エンドではポジションを残さない。徹底したマーケット・メーカー。ただコロケーションなどを利用して、圧倒的な環境の優位性を持つことによって、低リスクでさやを抜いていく取引だ。
しかし、彼らにとって東京市場はまだまだ十分な環境ではないとのこと。処理速度や取引慣行などもそうだろう。大証がJ-GATE稼働後、値付けなどのルールを変えたのは、グローバル・スタンダードに合わせることでそういった連中がより入りやすくすることを意図している面もある。
いくつかの異論は出ていたが、東京市場のアルゴによる取引は20~30%程度と言われる(実際はもう少し多いと思うけど)。欧米は50%超。ある方のプレゼンでは、米国の2004年ぐらいの状況が現在の日本と言っていた。つまり、これから日本でもアルゴによる売買量はより増加していく。数年のうちに過半を占めるようになるだろう。そしてこれは避けられない時代の流れだ。
そういった環境の変化にどう対応していくか。
それが我々の課題でもある。
アルゴリズム・トレーディングと一言でいっても色々とある。
自分なりの定義は大きく3つ。
①ブローカー・アルゴと呼ばれる注文執行の最適化を目的としたもの。
②HFTやアービトラージなど、サヤ取り的なアプローチを主としたもの。
③それぞれのストラテジーやロジックを元に収益を得ることを目的としたもの。
①は元々、ブローカーにおいて機関投資家など顧客からの大量の注文執行をより効率的に行うことを目的として開発が進んだ。VWAPやTWAPなどが代表的なもの。
これはブローカーにアカウントを開いて、その顧客となればほぼ無料で利用できる。ただ『これを使えば儲かる』という代物ではない(結構、勘違いしている人も少なくない)。
これはあくまで注文執行時にマーケット・インパクトを抑え、最適な執行を行うためのもの。つまり、ある程度の銘柄数をある程度の金額で買ったり売ったりするときに使う。ポジション・トレード向けのものだ。もし日計りで使おうというなら、期待ほどの効果は得られないだろう。だって日計りでやっている人たちは、自分の判断が『最適』と思ってやっているはずなのだから…(^^ゞ
②はゲッコーに代表される低リスクで板を抜く手法が多い。市場間やオプションと先物、限月間などのスプレッドを取りにいくのもそれに近い。この手法でリターンを得ていくのはリスクも少なくて簡単だけど、とてもハードルが高い。そのハードルとは資金量。あくまでサヤ取りである以上、薄利多売の世界だ。そしてそのサヤは極小と言っていいほど縮まっている。90年前半の日経平均での裁定取引では数百円抜けることもあったという。それが今では…。それほど効率的になってしまった市場では、期待収益は限定される。それがこなせるのは資金量が豊富でその調達コストも安いところだけ。そして何より装置産業化しており、コロやサーバー、システムに多額の設備投資をしなければならない。マイクロ秒レベルでの競争になっている世界だ。そして勝てるのは上位1~2社。
③はこれからの発展が期待される世界。高橋さんのようにそういったアプローチをしている方はいるし、研究している人はいっぱいいる。ただ一定のロジックに基づいて自動的に発注・管理を行うソリューションが必要になる。そしてそれを安価に使えるようになれば普及は進むだろう。
考えなければいけないのは、自らがロジックを持っており、それを具現化したアルゴを作りたい人と、ロジックを持っておらず優秀なアルゴに投資をしたい人の区別。
例えば、マネックスが取り扱っている株ロボ。非常に優秀な成績を残しているし、投資家にとっては魅力的な商品の一つだ。
一方で、専業トレーダーやディーラーという人達は自らのロジックを持っており、これをどうアルゴ化し、執行の効率化・安定化を図っていくかがポイントになる。
.NETやC++やJAVAなどの開発環境を使えるならば、それに接続可能なAPIを持つ発注ソリューションがあれば実現可能だ。しかし、全てのトレーダーにそれを求めるのは無理というもの。どちらかといえば、そんな芸当が出来るヤツはごく一部だろう。だとすれば、そのハードルを下げ、それほど詳しくない人でも直感的に出来る環境が望まれる。それがビジュアル・デザイン・ツールと呼ばれるGUIをベースとした開発環境だ。ただまだかなり高い…(-_-;)
とりあえずExcelからの自動発注が出来る発注ソリューションがいくつかある。この辺をいかに使っていくかが目先の課題かな(^^ゞ
今後、日系証券のディーリングが目指さなければならないと自分が思っているのは…
一カイ二ヤリは否定しない。ただそれはあくまで一つのテクニック・手法であって、それしか出来ないというプレーヤーでは今後10年20年は生き残っていけない。
しっかりとマーケットを見て、分析し、考え、相場の流れを取る。いわば『原点回帰』が一つ。そのためにはオーバー・ナイトももっと積極的にする必要があるし、ポジション・トレードやストラテジーを確立させた運用も身につけていくべきだろう。
そのために日系証券が変えていかなければならないのは、24時間取引への対応、そして海外市場へのアクセス。言い方を変えれば…多様な時間帯、多様な商品への対応だ。
相場のトレンドは夜に作られることが多い。残念なことだが、ローカル市場化したこの日本の市場ではボラティリティは限られる。ならば動く時間帯、動く商品をやればいい。そして動く市場で収益を上げられることは3月の相場でみんなが証明した。
そしてアルゴを道具として使いこなせるようになること。HFTなどの薄利多売の装置産業に限られた資金力で参入しても意味はない。しかし、様々なシステム会社が簡易な開発ツールなどの提供を進めてくれている。それを積極的に学び、活用していくこと。コンピュータの優位性(高速性、正確性、広範囲な監視など)をしっかりと自分たちの道具として使いこなせるようになることだ。
さらに将来はもっと…というものもあるが、現時点では夢のまた夢なので(^^ゞ
我々は限られた資金の中で最適な結果を出さなければならない。
時代の変化。それを受け入れ対応していくことが今必要だ。
儲からなくなったのをアローヘッドのせいにしている時点で負け。
昨日、イベントの後の飲みで今の状況を明治維新に例えて話した。
HFTなどは黒船。これまでは取引所システムの遅さが参入障壁になって、鎖国状態だった日本。ちょんまげ結って、刀で闊歩していても十分だったかもしれない。しかし、アローヘッド稼働(=開国)によって、一気に時代は動き始める。開国を否定し、攘夷攘夷と叫んでみても時代の流れは変わらない。ならば黒船(海外)に学び、それを学習し、利用する。そして日本には日本の強さや良さもある。それらを融合し、発展させていくことが必要なんじゃないだろうか。
とりあえず長々となりましたが…。
パネルではどーにも時間がないので、あまり喋れませんでしたから(^^ゞ
前半はメンバー企業を中心にアルゴの現状に関するプレゼンテーション。
後半はパネルディスカッションで、HFT(超高頻度取引)の中心的な存在であるゲッコー(ジョン・ファイルズ)、個人向け自動売買システムの開発を手掛ける高槁さん、ブローカーからニューエッジのイヴァン・マルコヴィッチ。そしてオレ…^_^;
やっぱりゲッコーの話は興味深い。彼らは値段も見ていないし、デイ・エンドではポジションを残さない。徹底したマーケット・メーカー。ただコロケーションなどを利用して、圧倒的な環境の優位性を持つことによって、低リスクでさやを抜いていく取引だ。
しかし、彼らにとって東京市場はまだまだ十分な環境ではないとのこと。処理速度や取引慣行などもそうだろう。大証がJ-GATE稼働後、値付けなどのルールを変えたのは、グローバル・スタンダードに合わせることでそういった連中がより入りやすくすることを意図している面もある。
いくつかの異論は出ていたが、東京市場のアルゴによる取引は20~30%程度と言われる(実際はもう少し多いと思うけど)。欧米は50%超。ある方のプレゼンでは、米国の2004年ぐらいの状況が現在の日本と言っていた。つまり、これから日本でもアルゴによる売買量はより増加していく。数年のうちに過半を占めるようになるだろう。そしてこれは避けられない時代の流れだ。
そういった環境の変化にどう対応していくか。
それが我々の課題でもある。
アルゴリズム・トレーディングと一言でいっても色々とある。
自分なりの定義は大きく3つ。
①ブローカー・アルゴと呼ばれる注文執行の最適化を目的としたもの。
②HFTやアービトラージなど、サヤ取り的なアプローチを主としたもの。
③それぞれのストラテジーやロジックを元に収益を得ることを目的としたもの。
①は元々、ブローカーにおいて機関投資家など顧客からの大量の注文執行をより効率的に行うことを目的として開発が進んだ。VWAPやTWAPなどが代表的なもの。
これはブローカーにアカウントを開いて、その顧客となればほぼ無料で利用できる。ただ『これを使えば儲かる』という代物ではない(結構、勘違いしている人も少なくない)。
これはあくまで注文執行時にマーケット・インパクトを抑え、最適な執行を行うためのもの。つまり、ある程度の銘柄数をある程度の金額で買ったり売ったりするときに使う。ポジション・トレード向けのものだ。もし日計りで使おうというなら、期待ほどの効果は得られないだろう。だって日計りでやっている人たちは、自分の判断が『最適』と思ってやっているはずなのだから…(^^ゞ
②はゲッコーに代表される低リスクで板を抜く手法が多い。市場間やオプションと先物、限月間などのスプレッドを取りにいくのもそれに近い。この手法でリターンを得ていくのはリスクも少なくて簡単だけど、とてもハードルが高い。そのハードルとは資金量。あくまでサヤ取りである以上、薄利多売の世界だ。そしてそのサヤは極小と言っていいほど縮まっている。90年前半の日経平均での裁定取引では数百円抜けることもあったという。それが今では…。それほど効率的になってしまった市場では、期待収益は限定される。それがこなせるのは資金量が豊富でその調達コストも安いところだけ。そして何より装置産業化しており、コロやサーバー、システムに多額の設備投資をしなければならない。マイクロ秒レベルでの競争になっている世界だ。そして勝てるのは上位1~2社。
③はこれからの発展が期待される世界。高橋さんのようにそういったアプローチをしている方はいるし、研究している人はいっぱいいる。ただ一定のロジックに基づいて自動的に発注・管理を行うソリューションが必要になる。そしてそれを安価に使えるようになれば普及は進むだろう。
考えなければいけないのは、自らがロジックを持っており、それを具現化したアルゴを作りたい人と、ロジックを持っておらず優秀なアルゴに投資をしたい人の区別。
例えば、マネックスが取り扱っている株ロボ。非常に優秀な成績を残しているし、投資家にとっては魅力的な商品の一つだ。
一方で、専業トレーダーやディーラーという人達は自らのロジックを持っており、これをどうアルゴ化し、執行の効率化・安定化を図っていくかがポイントになる。
.NETやC++やJAVAなどの開発環境を使えるならば、それに接続可能なAPIを持つ発注ソリューションがあれば実現可能だ。しかし、全てのトレーダーにそれを求めるのは無理というもの。どちらかといえば、そんな芸当が出来るヤツはごく一部だろう。だとすれば、そのハードルを下げ、それほど詳しくない人でも直感的に出来る環境が望まれる。それがビジュアル・デザイン・ツールと呼ばれるGUIをベースとした開発環境だ。ただまだかなり高い…(-_-;)
とりあえずExcelからの自動発注が出来る発注ソリューションがいくつかある。この辺をいかに使っていくかが目先の課題かな(^^ゞ
今後、日系証券のディーリングが目指さなければならないと自分が思っているのは…
一カイ二ヤリは否定しない。ただそれはあくまで一つのテクニック・手法であって、それしか出来ないというプレーヤーでは今後10年20年は生き残っていけない。
しっかりとマーケットを見て、分析し、考え、相場の流れを取る。いわば『原点回帰』が一つ。そのためにはオーバー・ナイトももっと積極的にする必要があるし、ポジション・トレードやストラテジーを確立させた運用も身につけていくべきだろう。
そのために日系証券が変えていかなければならないのは、24時間取引への対応、そして海外市場へのアクセス。言い方を変えれば…多様な時間帯、多様な商品への対応だ。
相場のトレンドは夜に作られることが多い。残念なことだが、ローカル市場化したこの日本の市場ではボラティリティは限られる。ならば動く時間帯、動く商品をやればいい。そして動く市場で収益を上げられることは3月の相場でみんなが証明した。
そしてアルゴを道具として使いこなせるようになること。HFTなどの薄利多売の装置産業に限られた資金力で参入しても意味はない。しかし、様々なシステム会社が簡易な開発ツールなどの提供を進めてくれている。それを積極的に学び、活用していくこと。コンピュータの優位性(高速性、正確性、広範囲な監視など)をしっかりと自分たちの道具として使いこなせるようになることだ。
さらに将来はもっと…というものもあるが、現時点では夢のまた夢なので(^^ゞ
我々は限られた資金の中で最適な結果を出さなければならない。
時代の変化。それを受け入れ対応していくことが今必要だ。
儲からなくなったのをアローヘッドのせいにしている時点で負け。
昨日、イベントの後の飲みで今の状況を明治維新に例えて話した。
HFTなどは黒船。これまでは取引所システムの遅さが参入障壁になって、鎖国状態だった日本。ちょんまげ結って、刀で闊歩していても十分だったかもしれない。しかし、アローヘッド稼働(=開国)によって、一気に時代は動き始める。開国を否定し、攘夷攘夷と叫んでみても時代の流れは変わらない。ならば黒船(海外)に学び、それを学習し、利用する。そして日本には日本の強さや良さもある。それらを融合し、発展させていくことが必要なんじゃないだろうか。
とりあえず長々となりましたが…。
パネルではどーにも時間がないので、あまり喋れませんでしたから(^^ゞ