FC2ブログ

【コラム】フィスコ『週刊展望』2005年12月~タイコム証券のオプション売買

先のコラムでオプションの売りによる巨額損失…で、タイコム証券経由の注文のことを取り上げました。

建て玉・手口から推計したもので書いていましたが、実際に多額の損失が出て、大証では証拠金に関わる管理体制などが検討・改善されたほどです。
残念ながら、歴史は繰り返されました…のが今回の個人投資家の巨額損失。
安易なプレミアム取りの怖さをまざまざと見せつけられました。

ちなみに先日取り上げたニック・リーソンの事件(リーソンは先物の買いが極端に多かったのでそちらに目がいきがちですが)でも1990年代の勧角証券(会社が傾きかけて第一勧銀から増資で救済してもらってます)でもオプションの売りによる巨額損失が発生しています。

繰り返し言いますが、オプションが危ないのではなく、『ガンマ・リスク』を軽視した安易な運用をやる側に問題があります。

このコラムでも書いていますが、阪神淡路大震災、ベアリングス・ショックの急落時に自分はオプション・ディーラーとして、ショート・ガンマ(オプションの売り)をやっていました。

若手だったので額は小さいながらも、そのカバーと先物でのヘッジで切り抜け、きっちり利益につなげ、厳しかった上司に褒めてもらったことを覚えています。
初めて、オプション・ディーラーとして自分に自信が持てた出来事でした。

オプションの売りは10回に9回は勝てる。
でも1回の損失で全てを飛ばす。

とよく言われます。
その1回をいかにして切り抜けるかが運用者としては重要なのです。
9回の勝ちに奢り、漫然と思考停止状態でポジションを取っていれば、その1回で全てを飛ばすどころか、お釣りが返ってくるでしょうね。

市場参加者や証券会社がこの出来事で『オプションの売りは危ない』となってしまうのは残念でなりません。

そのポジション・リスクがどこにあるのかを考えないでポジションを取っていることに問題があるのだということを伝えたいと思います。


当時、展望で書いたコラムを転載します。
2005年12月のものです。


フィスコ『週刊展望』2005年12月より

『オプションの売りは怖い怖い?』
 やっぱり波乱要因(?)でしたね。タイコム証券の動きは…。基本的に先物・オプションの手口は公表されているので名指しで書いちゃいます(^_^;)

 先日も『同社の動きに要注意!』と書いたのですが、ホントにそうなってしまいました。以前からディープ・アウトの(=権利行使価格の遠い)オプションをエライ枚数(数千~数万枚)売りまくる同社でしたが、前回に引き続き、今回もエライ目に会っているようです。結果として15000円台乗せの原動力になっちゃいましたね、同社の買いが…(^_^;) ちなみにその日は先物3000枚買って、ついでに(?)15000円コールを4000枚以上踏んで(買って)…さらに翌日先物を5681枚買い越し…。たった2日で先物換算1万枚以上買ってりゃ、そりゃ上がるでしょ…(^_^;)

例えば日経平均株価が14000円のときに15000円のコール・オプションを売ったとしましょう。15000円コール・オプションということは、日経平均株価を15000円で買う権利なわけですから、当然、その権利の買い方は日経平均株価が15000円を超えない限りは儲からないことになります。

ただ同社はその権利を売っているわけですから、逆に15000円を超えられたら困るわけです(15300円でも15000円で売ってあげなきゃいけなくなる)。実際に売り建てたのは13000円台だったと思いますが、その時点ではまだ15000円という値段は遠く、『どーせそこまでは行かないだろう』というノリで売っていたのかもしれません。

当然、そのオプションのプレミアム(値段=価値)はまだ非常に安い状態にありました。例えば10円で2万枚売ったとしましょう。となると最大期待収益は2億円(15000円以下であれば価値がなくなりゼロになる。そしてそれを売っているのだから10円×2万枚分儲かる)となります。が、日経平均株価が15000円を超えてきてしまえば雪ダルマ式に損失は拡大していくのです。しかも流動性の問題が出てくる。

プレミアム(値段)が安い間は注文がいっぱい並んでいるから買い戻すことも可能ですが、値段が上がってくると当然板が薄く(注文数量が少なく)なり、買い戻そうにも買い戻せなくなるのです。その頃にはオプションの価格は200円とかに跳ね上がっています。先ほどの例でいけば190円×2万枚で38億円の損失になるわけです。期待できる最大利益が2億円なのに損失はその十数倍にも拡大する…それがオプションの売りの怖さなのです(オプションの売りは利益限定・損失無限)。


私もスタートはオプションのディーラーでしたし、阪神淡路大震災やニック・リーソンがやらかしたベアリングス・ショックも経験しました。そのときはうまく乗り切ることが出来ましたが、どちらのときもオプションを売っていましたし、その怖さは十分に経験しています。

それなら、なんでそんなに危なっかしい『オプションの売り』なんぞをやるのか?それはオプションの売りは『10回に9回は勝てる』からです。キチンとしたコントロール下において丁寧な運用を心がけていればある程度の安定的な運用は可能ですし、インプライド・ボラティリティがそれなりに高ければ決して割の合わないものではないのです。

けど忘れてはいけないのは『たった一回の負けでその全てを飛ばす』のもオプションの売り(ショート・ガンマ)だということ。9.11テロの時、私の知り合いのオプション・ディーラーにはたった数百枚の売りポジションで億単位の損失を被った人も何人かいます。

恐らく、タイコム証券が建てているようなポジションでいきなり1000円高安のストップ高・ストップ安という相場の急変が生じた場合は百億超の損失が生じるでしょう。


基本的にオプションの売り方というのはかなり精神的にはディフェンシブになってしまうものです。株価の変動が常にプレッシャーとなって襲いかかってきます。どこでヘッジをかけていくか、どのタイミングで売っている権利行使価格をシフトしていくか、そういったことを事前に十分ストラテジーとして組んだうえでやっていく必要があります。

逆にオプションの買い方にとって価格変動は望むところ。積極的に逆張ることも出来ますし、大きく動きさえすればいかようにも出来ます。ただし時間の経過は売り方にとって味方となり、買い方にとってはプレッシャーとなります。

同証券のポジションはそれなりのストラテジー、運用理念を持った上でやっているのかもしれませんし、我々が見えているのはデリバティブのポジションだけですから、実際にそこまでやられているのかどうかは分かりません。

でもオプションを知るプロフェッショナルなトレーダーならまずやらないポジション・テイクです。オプションには主にデルタ、ベガ、ガンマ、セータといったリスク・パラメータがありますが、我々が特に意識するのは『ガンマ・リスク』です。大体、オプションで身を滅ぼしてきた人のほとんどが過大なガンマ・リスクを取っていました。

半年前のような動かない相場であればこーゆーポジションを機械的にやれば儲かっていたのかもしれません。でもガンマ・コントロールを無視したポジションはいつか身を滅ぼします。それが自分だけならいいですけど、巻き込まれる会社や周囲の人からみればたまったもんじゃありませんよね(実際にそういったことで訴訟なども起きている)…(-_-;)


人のトレードをどうこう言うのはあまりスキではありませんし、儲かろうとヤラレようと全て自己責任ですからスキにやってもらって全然結構なんですけど、相場は自然と同じで…時として静かなやさしい表情をしているときもあれば、時にはものすごく恐ろしい表情を見せるときもある。あまり相場を軽く見ない方がいいと思いますよ…(^_^;)

さてさて本日もややこしいお話ばかりしてしまいました。ワケのワカラン専門用語もいっぱい出てきて何を言ってんのか全然ワカランって方も多かったかもしれません(^_^;)

ま、よーするに伝えたいことは前々回にここでお話したことと同じ。相場をやるときはその怖さ(リスク)を知り、それを理解した上で取り組んで欲しい…ということ。相場も高値更新し、信用買い残も積みあがり始めています。バブルチックな雰囲気も芽生え始めてきました。『踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃソンソン』ということで、『まぁ、ここで行かなきゃどーにもならんでしょ!』っていうのもあるんですが…(^_^;)

短期的な利益や評価益を得て、みんなリスクに対して鈍感になり始めているような気がします。一時的な利益が楽観を生み、リスクを見失わせ、それが結果として将来の大きな損失につながるのです。ひと相場が終わった後にハッピーでいられる人、全てを失う人…それは様々でしょう。でも勝ち組でいたいのならば、それは忘れずにいてください。勝ち続けるのはそんなにたやすいことではありません。最近はカリスマやら天才やらがエラク増えてきましたし、『必ず勝てる』とか『絶対負けない』とか、まぁ簡単に言っちゃう人が増えてきました。でもね…簡単に儲かったものは簡単に失うこともあるんですよ(^_^;)

今回はあまりに目立ち、相場に影響を与えるような売買だったのでタイコム証券の売買を取り上げましたが、これはあくまで全て取引所から公表されている建て玉・売買手口に基づいて記述したものです。また公表されているのは先物・オプションのみであるため、全体のポートフォリオ、ストラテジーなどを正確に把握できているわけではありません。よって批判的な記述についてもある一面の売買のみを対象としているため、ポートフォリオ全体で見た運用理念とは異なる面もあるかもしれません。やってる方、違ってたらゴメンナサイ(^_^;)

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

tetsu219

Author:tetsu219
元証券ディーラーです。
二十数年ディーラーやって、シンガポールにも一時期行ってヘッジファンドを立ち上げてみたりと色々やってきて、とある証券会社でディーリング部長になり、今はシンガポールでヘッジファンドの設立・経営をやっています。

基本仕事ネタです。
更新は気が向いたときだけ(^^;
でもこのブログを通じて運用を志す若い世代の人たちに何か伝えられること、その一助になればと思っています。

初期は限定記事にしていましたが、今は開き直って全部公開にしてますのでお気軽に(笑)

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR