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【コラム】フィスコ『展望』寄稿文

ブログで取り上げましたが、フィスコさんのコラムでも取り上げたので紹介します。

個人的にはこういった出来事で『オプションは怖い、危ない』ではなく、『オプションのリスクを軽視していることが怖い、危ない』のだということを知ってもらいたいと思います。

しっかりとしたストラテジー、そして想定外のことが生じたときにどうヘッジし、ポジションをコントロールしていくか、それが出来ていればオプションほど有用な商品はありません。

調べてみて改めて思いましたが、▲10%以上の相場急落は1970年から今までで9回。つまり4~5年に一度はあるということです。運用を続けていれば何度かは経験する(自分も9回中7回経験しています)。

『こんな暴落したんだから損してもしょうがない。』

ではいけないのです。
色々と掲示板見ていても、天災だからしょうがないとか、急落に巻き込まれた…とか、自分の判断に対する自省が少ないと感じています。

『しょうがない損失』

と言ってしまえばそれで終わりです。
確かに損が出ることはしょうがないと思います。でもそれを反省し、次に活かす努力をしなければ、同じことを繰り返します。

もっと損を最小限にとどめることが出来なかったか?
プレミアム取りにいくのに過剰なリスクを取っていなかったか?
先物でのヘッジ可能な状態で証拠金にも余裕を残しておくべきだったと思いますし、24時間取引が可能な今の時代ですから、証券会社サイドには24時間対応可能な体制を構築しておく責任もあったと思います。

権利行使価格の遠いオプションだから、相場観や戦略、リスク管理手段を持たずに思考停止状態でも大丈夫…なんてことはないのです。
マーケットでリスクを取る以上、全てのポジションに対して『コントロール』する必要があります。

自分はストラテジーによるポジションを作る時(会社がなかなかやらせてくれないですけどね…日系証券は(-_-;))、必ずルールを決めておきます。

テクニカルに基づく場合が多いですが、この価格を切ったらデルタがどの程度になるから、先物を何枚売る。プット・サイドはこの時点で買い戻す(もしくは買い戻しながらさらに下を売り直す)、そしてここを切ったらオーバーヘッジする…etc。

そしてそれが可能なレベルで自分の初期ポジション量は抑えておく必要があります。
安いプレミアム売るから大量に売りたくなる…安易な発想です。
そのガンマ・リスクを理解していましたか?
もしそれを知らずに枚数×プレミアムで『いくら儲かる』なんて発想をしていたのなら、こういった損失を出しても自業自得としか思えません。

こういったことは全て事前に考えておかなければいけないことです。
その瞬間にその決断が全てできるほど人間はタフじゃないですから(^^ゞ

でもそれが出来ていればオプションはとても有用な商品です。
動いても儲かる。
動かなくても儲かる。
自分の相場に対するストラテジーを最も反映させることが出来る商品です。

今回の件でオプションを危険物扱いし、市場参加者が離れてしまうことがないことを願っています。
危険なのは十分な知識や対応策を持たずにリスクを取ることにあります。

せっかくの機会ですから、考えてみてください。
そういった気持ちで今回だけ、執筆当日の原稿を転載します。

                        しがないディーラー


以下、フィスコ『展望』へのコラム


まず被災者の皆様へ心よりお見舞い申し上げます。

先週、日経平均株価は暴落となりました。地震、津波、そして原発…危機は一時的なものにとどまらず、被災地のみならず東京からも人が西へと逃げだしていく光景や、店から物がなくなるなどパニック的な様相となり、市場も崩落状態に陥りました。週後半には持ち直す動きを見せましたが、そういった中で個人投資家が大変な損失を出したことが明るみに出ています。ひまわり証券が多額の立替金発生をきっかけに証券事業廃業を決定、松井証券で35億円、カブ・ドットコム証券で39億円、マネックス証券でも13億円の回収不能が出ているようです。

恐らくかなりの部分が『オプション取引』によるもの。ここ数年、オプションによる安易なプレミアム取り(権利行使価格の遠いオプション(以下、ディープ・アウト)を大量に売る)をする人が増えていました。知人から聞いた話では1億円の証拠金で10億円もの損失を抱えてしまった人がいるそうです(年収は400万円程度とのこと)。

オプションで一番怖いリスクは『ガンマ・リスク』。普段はなりを潜めていますが、相場が動き出した途端に牙をむいて襲いかかってくるリスク指標です。安易に『そこまでは下がらないだろう』という発想でディープ・アウトのオプションを売る。プレミアム(=オプションの価格)が安いから枚数を多く売りたくなる。しかも、相場変動時のヘッジ手段や対応策を考えておかないで…。結果、想定外の巨額損失を生みだす。

過去に何度も繰り返されてきました。オプションによる巨額損失。2005年~2006年にかけてはタイコム証券経由のコール・オプションの大量売り、そして相場上昇での損失が話題になりました。安易に安いプレミアムのオプションを大量に売る行為がどれだけ危険なことなのか…。

オプションのリスクを理解しているプレーヤーならば、何らかのヘッジ手段を持たず、先物でのデルタ・ヘッジもままならないようなポジションは抱えません。証拠金限界までオプションを売ってしまい、損失が出ている状態では先物でのヘッジもままならないでしょう。結果、お祈りするしかなくなります。

そして『オプションの売りは危ない』と決めつけられて敬遠されてしまう。そうではないのです。そのリスクをしっかりと理解し、相場を考え、その状況に合わせてしっかりとストラテジーを作っていけば、オプションほど有用な商品はありません。ただその本質を理解もせずに安易に使うと想定外の損失を生みだすことになるのです。


しがないディーラーのブログ


この表は1970年からのデータを元に週間下落率ランキングを示したものです。今回の下落は2144週中9位に位置する暴落です。しかも週間安値はもっと下でしたから、かなりの下落であったことは確かです(改めてリーマンショックの大きさを痛感しましたが…)。

だから大きな損失が出てもしかたないかもしれません。ただ単純計算で4~5年に一回は1週間で▲10%以上の下落は発生していることになります。そして今は昼夜問わず先物売買が可能ですし、イブニング・セッションも23:30まで可能です。CMEでは日経平均先物を24時間売買可能です。つまりいきなり値段が大きく飛んでしまう…のではなく、ある程度の連続性を持って急落しているわけで、その間に先物でのヘッジなどは可能なはずでした。

オプションのストラテジー戦略において、最も怖いのは価格の連動性が途切れた状態で、コントロール不能なまま相場が急変動することです。

損失を出した個人も受けていた会社側も、市場の24時間化が進む中で、対応手段を講じていなかった…もしくはその機会を活かせなかったことは残念です。

この機会に本当のリスクがどこにあったのかを皆さんも考えてみてください。

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プロフィール

tetsu219

Author:tetsu219
元証券ディーラーです。
二十数年ディーラーやって、シンガポールにも一時期行ってヘッジファンドを立ち上げてみたりと色々やってきて、とある証券会社でディーリング部長になり、今はシンガポールでヘッジファンドの設立・経営をやっています。

基本仕事ネタです。
更新は気が向いたときだけ(^^;
でもこのブログを通じて運用を志す若い世代の人たちに何か伝えられること、その一助になればと思っています。

初期は限定記事にしていましたが、今は開き直って全部公開にしてますのでお気軽に(笑)

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