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【ビジネス】投資や運用の世界に飛び込む前に②

今回、若い方々とのオンラインで話したり、飲み会をやったりしてお話しする機会がありました。
皆さん、運用者としての未来を目指している方々です。
彼らのような存在は、日本の資産運用業界や市場にとっての財産です。
未来ある若い人材が、その夢を実現していくために、その選択肢を増やしていってあげることがとても大切だと感じました。

ウチのグループでも小さいながらも人材採用や育成に取り組んでいます。
証券会社の自己売買部門を通じて採用育成に取り組み、実績を上げた人材、そしてストラテジーがファンドに適合している人材については、本人が望み、CIOである自分が認めた場合には運用会社(ヘッジファンド)側のPM(ポートフォリオ・マネージャー)として転籍を認めています。
実際に現在のPMのうち一人は、全く異なる業界からのチャレンジ組の一人です。
※席に限りがありますので、募集を一時停止する場合がありますのでご了承ください。

個人投資家としての未来を目指すのも。
ディーラーとしての未来を目指すのも。
ポートフォリオマネージャーやファンドマネージャーとしての未来を目指すのも。

どれも個人の選択でいいと思います。
どれが正解で、どれが間違っているとかいう話でもないですし、どっちがレベルが高いとかそういう話でもないです。
どこの世界にも尊敬できる人もいますし、そうではない方も…。

ただ運用者としての未来を目指す若い方々に少し考えてみてほしいと感じたことがありました。

運用の世界はものすごく幅が広いです。
株だけではなく、債券や為替、暗号資産、商品…投資対象となる資産も様々です。
個人、ディーラー(プロップ・トレーダー)、ファンドマネージャー、ポートフォリオマネージャー…その職業としての在り方も様々です。
短期運用、中長期運用、ロングオンリー(パッシブ、アクティブ、日本の投資信託のほとんどがそういった運用であり相対評価でリターンを目指すものが多い)、ヘッジファンド(株ならばロングショートが主流ではありますが、実に様々な運用戦略がこちらには存在しており、こちらは絶対評価でリターンを目指すものが多い)、エンゲージメント(アクティビスト)、PE(プライベート・エクイティ)。様々な戦略、アプローチが存在します。

ちなみに…そういったプロの運用者、機関投資家や金融機関、ヘッジファンドなどを一括りに「機関」とか称して悪いことしてる、相場を裏で動かしている怪しい存在的な言い方している人もいましたが、知識のある人から見るととても恥ずかしい話だと思うのであまり言わない方がいいとは思いますよ。。。

そういった「機関」の人たちは金融当局や取引所の監督下、規制下でレギュレーションを守りながらやらなければならないですし、違反すれば厳しい処分を受けます。そういった規制・レギュレーションもよく知らずに売買している人たちがそういった話をされていることには強い違和感を覚えます。確かに残念ながら、そういった機関の人たちが処分を受けると報道されてニュースにもなりますし、金額も大きいので目立ちますし、影響もそれなりにあることも事実ですが、そういった人たちはごく一部に過ぎません。


ちょっと話が逸れました…。

若いうちは経験も知識もまだ少ないはずです。
それが当たり前なんです。
その少ない知識や経験の中で、あまりにも早く自分の未来を決めつけないで欲しいなと感じました。
様々な方に会い、様々な書籍やSNS、情報を得て知識や視野を広げ、そのうえで自分の未来を選択していって欲しいと願っています。

広い視野や見識をもって、自分自身が望むものを見つけていった方が、より良い未来に繋がる可能性が高いでしょう。
だからあまり狭い世界に閉じこもらず、色々とと見聞きして、学んでいって欲しいと思います。



確かにプロの運用としての職業は狭き門です。
2008年のリーマンショックを経て、グローバルな金融機関においては自己資金による運用に強い規制がかけられ、外資系や大手では「プロップ」と呼ばれる自己資金運用が大幅に制約されることとなりました。自らの相場観で大きくポジションを取れる場所がなくなり、運用経験がない人材でもそういった部門での経験を通じて運用者として成長し、ヘッジファンドなどを立ち上げるといったプロセスがほぼなくなってしまいました。
それまでは外資系の友人達でも、プロップから何人かヘッジファンドを立ち上げた人もいましたし、Trading Orientedな人材がヘッジファンド業界にはもっと存在していました。

我々のような日系の中小証券でも、2010年のアローヘッド稼働後には「絶滅危惧種」と揶揄されるような状態に陥り、実際にディーリング業界は大幅にシュリンクしてきました。10分の1以下にまでなっていると思います。
日系からもヘッジファンドを立ち上げた友人達は何人かいます。自分自身もその一人でした。


学生や若い人材が「プロとしての運用者になりたい」と志しても、なかなかその道が見えないのが現在の日本の実情でしょう。
運用に関われる職業につける道が本当に少なくなってしまったと感じています。

だからこそ自分は若い人材の未来を繋げていくために、小さいながらもできることを全力でやっていきたいと思っています。同業他社のヘッジファンドなどでもインターンや、若い人材の採用に取り組んでいるところもあります。


若い人材の多くが個人投資家としての未来を志し、若いうちにFIREすることが目的になってしまっている気がします。
それも一つの選択だし、それが実現できれば素晴らしいことかもしれません。

でもワールドカップ(サッカー)やWBC(野球)を観ていて思うのです。
スターの存在、ワクワクさせてくれる存在がいるからこそ、憧れを生み、その未来を志す若い人材が増える。
裾野が広がることで頂点が高くなる。

いつか日本から、米国の著名投資家に並び称されるような運用者が生まれていくためには、多くの方の資産をお預かりする資産運用の世界でそれを実現していかないといけない。
次世代の資産運用の担い手を一人でも多く生み、育てる取り組み。
彼らの成長と成功の先に業界の発展もあるのだろうと。

ここ十数年で個人投資家のレベルが飛躍的に高くなったのは、著名個人投資家の皆さんの活躍や発信があったからだろうと思います。
我々、職業として運用を行う世界の人たちも、「これまでこうだったから」ではなく、「これからどうあるべきか」を考えていかなければいけないと強く感じました。

出来るだけ若い人たちが金融や運用の世界を学び、知る機会を作ること。
そのうえでその未来の選択肢を少しでも増やしていくこと。
そういった人材こそが未来を創るのですから。
それが十年後、数十年後の日本の資産運用業界において一番重要なことだと感じています。

今回、出張期間中に後輩や部下たちともランチや飲みをする機会を可能な範囲で作りました。
彼らが楽しそうに相場の話をする姿、ワクワクしている姿は本当に励みになります。
すごく陳腐な言い方になっちゃいますが、「ワクワクをいかに作るか」これが組織や業界においてとっても大切なモチベーションなんだと感じました。

勝ち負けのある世界、淘汰もあり、厳しい世界です。
全員成功させたくても、残れるのは限られた人だけでしょう。
望めば成功できる訳でもないし、成功できるのはほんの一握り。

だからこそ悔いを残してほしくない。
この世界の魅力や楽しさを沢山感じながら、夢中にその未来に向かって相場と向き合っていって欲しいと願います。
プロフィール

tetsu219

Author:tetsu219
元証券ディーラーです。
二十数年ディーラーやって、シンガポールにも一時期行ってヘッジファンドを立ち上げてみたりと色々やってきて、とある証券会社でディーリング部長になり、今はシンガポールでヘッジファンドの設立・経営をやっています。

基本仕事ネタです。
更新は気が向いたときだけ(^^;
でもこのブログを通じて運用を志す若い世代の人たちに何か伝えられること、その一助になればと思っています。

初期は限定記事にしていましたが、今は開き直って全部公開にしてますのでお気軽に(笑)

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