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【トレード】リターン?リスク?

損をする「リスク」のある運用をあえてする理由は「リターン」が期待できるから。
「リターン」を求めなければ、あえて「リスク」をとる必要はない。

当たり前のことです。
だけど多くの人が、「リスク」と「リターン」の捉え方、向き合い方を間違えがちです。

「いくら稼ぎたい」
「どれぐらいの利回り(リターン)を出したい」

というのは、あくまでも自分の希望に過ぎませんし、いくら以上稼いだらダメという一線はありません。
一方で、

「いくらまで損失を許容可能か」
「どれぐらいの損失(リスク)を出したら終わってしまうのか」

自分の生活や人生を守るうえでも、他人のお金を運用するならその責任を負ううえでも、明確にその一線が引かれるものです。

個人投資家であれば、余裕資金の範囲で失っていい資金なのか、預貯金がなくなる程度の話で済むのか、借金抱えて人生変わってしまうような話なのか。
独身なのか、家族がいたり子供がいたりするのか。ライフサイクルによっても、そのリスク許容度は変わってきます。
まずは自分が背負っていいリスク額がいくらなのかを明確にすることが第一歩になります。

ディーラーであれば、会社が定めた損失限度管理のルールがあります。
ファンド・マネージャー(ポートフォリオ・マネージャー)であっても、それぞれの運用会社のリスク管理ポリシーがあったり、投資家側の求めるリスク管理があります。

これらは投資家や会社の資金を守るためでもある一方で、複数の運用者で運用を行っている組織の中で、リスクの自己管理がちゃんと出来ない運用者が一人でもいるせいで、組織が追い込まれたり、ちゃんとリスク・コントロールができている他の運用者に迷惑をかけさせないための一線でもあります。そして何よりリスクの自己管理が未熟な人材本人を守るためにも必要な一線でもあるのです。

他人のお金でリスクを取るという責任は重いものです。
そのルールは厳守しなければなりません。

リターンは限界が決まっていないけれど、リスクは限界が決まっている。

当たり前のことなのに、このことをちゃんと理解できていない人があまりに多い。
リスク側に明確な一線がある以上、そのリスク許容度を前提にどこまでのリスクを取れるかが決まってくる。
結果として、そこから得られるであろう期待値(リターン)もそのリスク許容度に依存する。

若い運用者や経験の少ない人の多くが、その前提が自分の中で整理できていない。

そういう人が常に主張するのは「リスクを取らなきゃリターンは取れない」。
当たり前のことです。そんなことは百も承知です。

かといって過大なリターンばかりに目がいき、明確な一線が定められているリスクを軽視していれば、どこかのタイミングでその一線を越えてしまい、退場せざるをえなくなる。

リスクとの向き合い方が出来ていない人ほど、いざやられると一気に追い込まれ、取り返そうという焦りから無理なタイミングで無茶なリスクテイクをする。後になって、冷静かつ、客観的に見れば愚かなタイミングで、雑なポジションテイクであっても、それを自覚をする余裕すら失う。

損をすることはあって当たり前なんです。
損をしちゃいけないなんてことはありません。
相場を見誤ること、相場観が間違えることなんてしょっちゅう起こりえることなんです。
そうならないようにいくら必死に色んな知識や情報を得ても、それでも間違えることはあるし、想定外のことが起きるのがマーケットです。
大事なことは損をしたときのリスク・コントロール
これがちゃんと出来ている人は、それなりの確率で勝ててさえいれば、自ずと利益が積みあがるし、生き残っていける。
自己都合でリスクを振り回す人は、ある相場でたまたまうまくいっても、再現性も継続性もなく、どこかで退場させられていく。

自身のリスク許容度、会社やファンドで定められたリスク許容度を理解すること。
それがリスクを取る前提条件であることを忘れないでください。

そのうえで合理的なリスク・コントロールを行っていれば、自分を見失うようなトレードや、ギャンブル的な運用はしなくなっていくはずです。結果として、冷静な判断力を維持できて、相場に振り回されることも減り、勝率も上がってくる。運用ならば、無用なボラティリティが抑制され、シャープ・レシオは改善していくはずです。


金融詐欺がいまだに後を絶たない中で、「年率10%の利回りなんて詐欺だ」と決めつけるコメンテーターの言葉を目にしました。
確かに安定的にそれを実現することは容易なことではありません。
それでも月に1%(1000万円の元手で月10万)のリターンを積み上げれば、単純に年間12%(複利ならもっと)です。
金額が大きくなればなるほど、それは容易な話ではなくなりますが、投資戦略や市場、様々な要因をしっかりと考慮し、バランスを維持出来ていれば不可能な話でもありませんし、実際にそれを実現できているプロのファンドマネージャー(PM)は沢山います。

それなのに若い運用者は、無駄に損益がブレがちです。
毎回フルスイングでリスクばかりをぶん回す。
結果、月間で何%もの利益を出したり、それ以上の損失を出したり…。
ブレブレでシャープ・レシオで見たら全然安定的・魅力的には見えない運用になる。

確度の高い局面、期待値の高いトレードにはリスクを積極的にかける。
自信が持てない局面、難易度が高い局面ではリスクを抑制し、フォアボールでもデッドボールでもいいから塁に出るぐらいで十分。
市場環境や、自分自身の状況を客観的に評価したうえで、リスクに強弱をつけること。
自分自身が冷静さを失っている場面、感情的になっている場面では、自己抑制をしっかり利かせること。
お金が欲しい、稼ぎたい、損を取り返したいという自己都合でリスクを振り回さない。


未経験者を採用するにあたって、自分は面接で生活の余裕があるかどうかを聞いています。
損を出す可能性がそれなりに高い未経験者を採用する。
育成や指導にリソースをかけ、損失リスクも会社で負担してもらう。
その前提に立てば、初心者への基本給は抑えざるをえません。
最低限、生活を維持できる余裕を作るようにする。生活水準を落とすことも含めて、少ない基本給で一定期間を乗り越える余裕を作れないなら、ここには来ない方がいいと伝えています。

その余裕がないのにリスクのあるこの仕事を選べば、一日も早く成功しなきゃ、稼がなきゃと焦りが先に立ち、リスクを軽視し、リターンばかりを追いかけて、結果落とし穴にハマる。
もちろん成功すれば、年収数千万、数億円も全然得られる世界です。でもそこに至る道筋に近道はありません。
実際に生き残っている運用者は、そういった収入を得ている人が沢山います。
でも自分自身の現役時代もそうでしたが、若い頃なんてポジションも少なければ、年収も少ない。
リスクと向き合いながら、実績を積み上げ、信頼を勝ち取り、一歩ずつ階段を上った先にようやくそこに辿り着けるのだということを理解して欲しい。お金が欲しいという自分の都合ばかりではなく、他人のお金でリスクを取るということの意味を理解して欲しいと思います。


他人の資産を預かるプロの運用者になるということ。
これは他者への責任を負うということでもあります。
自分の好きなようにリスクを取りたければ、自分のお金でやってください。
他人のお金でリスクを取るのなら、まずその他者への責任を自覚し、その中でのリスク管理ルールを理解してください。
自分のお金であったとしても、リスクとの向き合い方を理解せずにマーケットの世界に飛び込むことはギャンブルでしかありません。
それが出来ないなら、リスクのある世界にはあなたは向いていないのかもしれません。
もっと自分にあった道を探した方がいいのでしょう。
結果が全ての世界で結果が出ないのは、誰のせいでもなく、自分自身のせいなんです。
同じマーケット、同じ環境で結果を出している人もいるのだから。
自分自身と向き合い、その問題点や課題を直視し、修正できない限り何度も繰り返すことになるでしょう。

運用の世界で生きていきたいという若い人材に機会を作り、その夢の実現をサポートしていきたいと思うからこそ、この世界で生きていくことの厳しさもしっかりと理解して欲しいと、心から願っています。
プロフィール

tetsu219

Author:tetsu219
元証券ディーラーです。
二十数年ディーラーやって、シンガポールにも一時期行ってヘッジファンドを立ち上げてみたりと色々やってきて、とある証券会社でディーリング部長になり、今はシンガポールでヘッジファンドの設立・経営をやっています。

基本仕事ネタです。
更新は気が向いたときだけ(^^;
でもこのブログを通じて運用を志す若い世代の人たちに何か伝えられること、その一助になればと思っています。

初期は限定記事にしていましたが、今は開き直って全部公開にしてますのでお気軽に(笑)

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