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【トレード】ロスカットの考え方

若手と話していて、感じたこと、伝えたいことなどをちょっと書いてみようかと思います。

「ロスカットの考え方」

これが重要であることは相場経験豊かな方がほとんど共通して話すことだと思います。
リターンを目指す裏にはリスクが常にある。変動し続けるマーケットで運用するということは、そのリスクとどう向き合うかがとても大切なことなんです。

運用する人の全てが、儲けたい、稼ぎたい、利益を上げたいという動機を持って始めていることでしょう。

初心者の人は、「儲けたい」という気持ちはあるから儲かるときの想像や分析は出来ていても、「損はしたくない」から損したときの想定や対応は軽視してしまいがちです。自分にとって不都合なことは軽視しがちであったり、向き合おうとしない…これは人間の性ともいうべき傾向なのでしょう。

でも変動し続けるマーケット、不確実性の中でリスクを取り続ける以上、見誤ること、間違えることは必ず起きるし、間違えていいんです。それよりも間違いを認められないことの方が危険です。「リターン(利益)」を求めるとき、「リスク(損失)」とは常に背中合わせだということを理解することが、この世界で長く生き残っていくためには大切なことなんです。そのリスクが顕在化したとき、それで再起不能な損失を出したり、一発退場させられるような状況にならないように、自分自身を守るためにも必要な行為が「ロスカット」ともいえるでしょう。


「ロスカット」を考えていくとき、考慮しなければならないことは沢山あります。

一番容易なルール設定は「何%損したらロスカットする」というようなシンプルなルール作りでしょう。これは様々な要素をしっかりと考えることが出来ない、もしくは分からない。ケースバイケースで判断することが出来ない。そういった人には一つの選択肢としては有効だと思います。

ただそれを決めるにしても、自分の目指す取引の時間軸(どれぐらいの期間で、どれぐらいの変動を目指してリターンとリスクを取っているのか)などをしっかりと考慮できていないと、ロスカットばっかりつけて終わってしまうか、ロスカットルールの意味を持たないルールになってしまうでしょう。

以前、ある会社で長期運用と短期運用のロスカットルールの%設定を同じにしていた管理者の人がいました。正直、実戦で戦っている者からしたらナンセンスです。「長期運用は短期的な値動きに一喜一憂せずにやる」と言いながら、ロスカットルールは短期のものと同じルールを使っている。申し訳ないですが、運用目的と整合性が取れない素人丸出しのロスカットルール設定です。

せめて取引の時間軸や、ターゲットとするリターン(どれぐらいの変動を期待しているのか)に見合ったルール設定をすることが最低ラインでしょう。ただし、全ての取引が基本的に共通した時間軸やターゲットリターンであることが前提になります。自分自身のトレードがある程度パターン化されている場合には一つのやり方ではあるでしょう。


もう少し掘り下げて考えていくと

ロスカットを考えていくうえで考慮しなければいけない要素には、

  1. 投資(運用)の目的と、自分のリスク許容度…ディーラーであれば会社、ファンドマネージャーであれば投資家の許容度も考慮する必要があります
  2. その運用の期間とターゲットとするリターン…短い時間軸で変動する幅と長い時間軸で変動する幅は当然違います
  3. 一つ一つのポジションの根拠…目指す収益の根拠がどこにあるのか。短期的な値動き(うねり)を取りにいくのか、市場の需給変動や資金の流れの変化を取りにいくのか、企業価値と市場評価のミスマッチを取りにいくのか、企業業績の変化を取りにいくのか、企業の成長を取りにいくのか…etc

①は全ての大前提です。

自分も仕事柄、友人や知人から投資をやりたい、運用をやりたいという相談を受けることがあります。必ず最初に話すのは、運用をする原資の内容や、その人のライフステージの中でその資金がどういった目的を持ったものなのかをディスカッションすることです。土台となる資金の性質を踏まえて、リスク許容度や必要とされる流動性や換金性について、その人自身の理解を深めることが、はじめの一歩だと考えています。

いつ必要になるか分からないような資金であれば、流動性の高いトレード(短期売買など)を中心に組み立てるべきでしょうし、老後の資金のために貯蓄していく余裕資金ということならば、長期的なトレードの方が望ましいでしょう。またその資金についての損失許容度なども最初に整理しておく必要があります。

ディーラーであれば、会社に認められているルールを理解すること。ファンドマネージャーであれば、そのファンドのルールや目的を理解することも必要です。ディーラーやヘッジファンドであれば、月次でも年次でも基本的にリターンを出すことが求められます。相場が下がったから損してもしょうがない、ベンチマークよりは勝ってるからいい、ということは出来ません。こういった運用目的の違いによってもルールは変わってきます。そういったルールを自分自身でコントロールすることが苦手な人も少なからずいるので、ディーリング部でもファンドでも組織や投資家を守るために、リスク管理ルールやロスカットルールが定められています。

勝負にのめり込みがちで、リスク管理が適切に出来ていない人は、まぁまぁその組織のルールに抵触してしまうこともあったりします。また普段はとても冷静な人でも、実際にそういった損失と直面すると割り切りができなくなり、非合理的な判断や冷静さを欠いた判断をしがちです。ルールによってロスカットを強いられるということは、本人が負けを認めていない状態でルールによってロスカットを強いられるということになります。その悔しい気持ちは分かるのですが、予め定められたルールである以上、そのルールを前提にリスク管理が出来ていなかったという事実は受け止めるしかありません。他人の資金を預かって運用するということはそういったことも求められてくるのですから。

また①については、(その組織のルールにもよりますが)自分自身の収益状況によってもリスク許容度は変化します。儲かっているときと損が先行しているとき。儲かっているときはある程度積極的にリスクテイクしていかないと成長につながりません。一方で、損が先行しているときにはリスクを抑制的に運用していかなければなりません。一番いけないのは「損を取り返したいから」とリスクを取りがちな人です。正直、そういった人は少なくとも他人の資金で相場を張るのはやめて欲しい…と思います。


②については、当たり前のことですが、日計りやスイングぐらいの短期的なトレードと、企業業績の変化や成長を取りにいくような中長期の運用とでは当然ながら期待する株価の変化も違ってきます。それに合わせたロスカットの管理をしていくべきです。先に例を挙げたように長期運用のロスカットルールを短期運用のそれと同じに設定するような過ちを証券会社に長いこといたはずの人ですらしてしまう。運用経験がある人ならちょっと考えれば分かるようなことなんですけれどね…。


③については、結構難しかったりします。一人の運用者でも、それぞれのポジションについてその根拠や狙いが違うことはしばしば起こります。なんでもかんでも一律のルール設定では、そういった場合に柔軟な対応ができなくなる。一方で、そういったあいまいさを残すことで、ロスカットを適切に行えなくなってしまうことにも繋がります。ロスカットを行うということは「負けを認める」という行為です。自信がある人ほど、その行為が遅くなってしまいがちですし、客観的になんらかの基準がないと、それぞれのポジションによってロスカット水準を切り分けたりしながら判断を下していくというのは難しいものです。

ポートフォリオ運用というレベルで分散を利かしている場合は、ポジション全体での損失が一定水準に達した段階で、想定と離れた動きをしているものや、期待値の低いものを切っていくというのも一つの方法です。資金が限られ、少ない銘柄で運用する場合と、ある程度の資金量をベースに分散投資でポートフォリオを構築する場合とでは、またリスクの取り方やロスカットの考え方、求められてくるものが大きく変わってきます。


今回は「ロスカット」としてまとめてみましたが、ポジションを取った際の根拠が否定されたり、想定外に状況が大きく変化してしまったりした場合、それが「ロス(損失)」ではなくても、いったんポジションを解消するというのは大切なことでしょう。そうなってしまっているのにポジションを保持しておく合理性はそこにはあまりないでしょうから。

運用は運頼みではいけません。


合理的な根拠を持つこと。
再現性のある運用を行うこと。
そして確率の勝負に持ち込むこと。


少ない回数や銘柄で大きく稼ごうという勝負をするのも、リスク許容度に見合った行為なら否定はしません。ただ分散を利かせることで確率の勝負に持ち込んでいけば、あなたの考え方がしっかりとしたものであればリスクとリターンは自ずと安定してくるはずです。

もしあなたが資金を10倍、100倍にしたい…なんて考え方なら、それではつまらないと感じてしまうかもしれませんが、長い期間相場で生き残り、成功している人はそれぞれのやり方でリスクと向き合い、この基本が出来ている人だと思います。




プロフィール

tetsu219

Author:tetsu219
元証券ディーラーです。
二十数年ディーラーやって、シンガポールにも一時期行ってヘッジファンドを立ち上げてみたりと色々やってきて、とある証券会社でディーリング部長になり、今はシンガポールでヘッジファンドの設立・経営をやっています。

基本仕事ネタです。
更新は気が向いたときだけ(^^;
でもこのブログを通じて運用を志す若い世代の人たちに何か伝えられること、その一助になればと思っています。

初期は限定記事にしていましたが、今は開き直って全部公開にしてますのでお気軽に(笑)

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