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【回想録】壊れていく夢

損失を回復し、ここからようやく前に進める…そんな矢先のことだった。



我々を全面的に支えてくれてきたブローカーの友人二人が明日会いたいといってきた。

いつもとは違う、どこか歯切れの悪いコンタクトの取り方に嫌な予感が走った。



翌日の夕方、二人と会社外で会う。



彼らの話は『レビュー』についてだった。

手数料などの(引き上げ方向での)見直しということだ。



プレーヤーが一人抜けたこともあるし、ボラティリティの低迷が続く中で、売買量が伸び悩んでいたこともあるから仕方ないとは思っていた。



しかし、本当の理由はそこにはなかった。



我々の会社のオーナーでもある投資家はシンガポールベースで運用ビジネスを展開していた。

そこに我々と同じように関連するヘッジファンドを複数持っている。

そのうちの一つとそのブローカーとの間で行き違いがあり、わざわざ日本からシンガポールまで出向いたブローカーに対して、かなり不誠実な対応を取ったことに起因していた。



『ビジネスの進め方があまりにもアンフェアで、そういった会社とのビジネスは見直さなければならない。』



という決定が上の方でなされてしまったとのことだった。



短期運用、日計りという手法において、手数料引き上げは致命傷になりかねない。

彼らが提示してくれた破格の条件が我々を支えてくれていたことは確かだ。

それがどの程度まで引き上げられるのか?

恐らく運用手法から考えると、グループ内で一番ダメージを受けるのは我々だった。



しかし、こうなってしまった以上、レビューは避けられない。そして不誠実な対応を取ったことを詫び、誠意を持って対応し、信頼を回復したうえで今後も関係を維持し、どこかのタイミングでまた引き下げを検討してもらえるようにするしかない。



『仕方ないですね。』



と自分はレビューを受け入れる覚悟を決めた。

ただ自分が属するグループが取った不誠実な対応について、放置するわけにはいかない。



翌日、ブローカーと投資家との間での電話会議が終わり、レビューについての連絡が入るのを待って投資家にコンタクトを取り、経緯説明を求める。そして非は詫びたうえで、誠意を示し、そして関係改善を目指して欲しいと伝えた。



しかし、その投資家は思わぬ方向へと走り始めた。



『全面戦争』



もしレビューが実施されるなら、そのブローカーとのビジネスを一切やめさせる。それは全グループだけではなく、その投資家が投資しているだけのファンドも含めて…。



我々のファンドはそのブローカーに全面的に依存していた。格安な手数料を出してもらうかわりに、他のブローカーとのビジネスは事実上していたなかった。



つまり我々の運用は全て停止せざるをえなくなる。



それだけではない。

シンガポールにいる友人たちのファンドまで、この争いに巻き込まれてしまう。



その後、経緯を当事者に聞いていくと、きっかけはつまらない『誤解』のようだった。

それが会社対会社の全面的な問題に発展しかねない状態。



収集を図らなければいけない…。



ブローカーサイドの信頼出来る友人とアンオフィシャルにコンタクトを取り、連日対応策を話し合った。

このまま全面戦争に陥れば、一番傷つくのは何も悪くないのに巻き込まれる人たちだ。



二人で必死にあーでもないこーでもないと議論し、彼も自分の立場を顧みずにブローカーサイドの調整に動いた。



そしてブローカーと投資家(の委任を受けた人物)とのミーティングの日を迎えた。

ブローカーからは『レビューはしない』という提案が行われ、レビューは避けられた。

結果、全面戦争は表面化せずに終わり、誰も傷つくことはなかった。



しかし、我々と投資家の関係はそれを期に大きく悪化していくことになる。

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プロフィール

tetsu219

Author:tetsu219
元証券ディーラーです。
二十数年ディーラーやって、シンガポールにも一時期行ってヘッジファンドを立ち上げてみたりと色々やってきて、とある証券会社でディーリング部長になり、今はシンガポールでヘッジファンドの設立・経営をやっています。

基本仕事ネタです。
更新は気が向いたときだけ(^^;
でもこのブログを通じて運用を志す若い世代の人たちに何か伝えられること、その一助になればと思っています。

初期は限定記事にしていましたが、今は開き直って全部公開にしてますのでお気軽に(笑)

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