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【回想録】動き始めた夢…3

自分はかろうじてプラスを維持していたものの、一人は大きく沈み始め、もう一人も損失が先行し、ファンドは徐々に損失が増えていく状況に陥っていた。



『一ヶ月目は最後にプラスになれればそれでいいから。』



と自分に言い聞かせるように仲間に話す。

しかし、狂い始めた歯車はそう簡単には戻らなかった。



一ヶ月目に▲1000万円超の損失。



ファンドにしてもディーラーにしても、立ち上げや移籍のスタートはとても重要。

そこでつまづくと回復にかなりの時間を労することになる。



二ヶ月目に入る時



『とにかく今月は最低限プラスで終わろう。とにかく損失を取り返そうとか、焦ってもしかたない』



とまた自分に言い聞かせるように仲間に話す。



しかし、悪い流れは変わらなかった。

仲間の一人の負けが大きい。

数十万を勝つのはしっかりと出来ていて、日々の勝率は一番安定しているのに、負ける時に売り上がり、買い下がりをしてしまって結局損失が大きくなる。



もう一人もなかなかリズムがつかめない。

損失額は大したことはないが、ボラティリティに連動して動くタイプの彼にとって、値幅のないマーケットは容易ではなかった。



そして自分。

正直、四苦八苦していた。それでも数百万ずつは積み上げられていたが、取り返さなければという焦り…それを必死に抑えながら、コツコツと積み上げる。しかし、チームとしては突然大きなロスが出てしまうため、自分のリズムを維持できない。ロットのコントロールも出来なくなり、つい大きな玉振り回してロスったり、一進一退を繰り返していた。



二ヶ月目が終わろうとする時、ファンドの損失は▲3000万円を超えつつあった。

ファンドとしては一人5000万円までの損失許容度を投資家は認めてくれていた。

さらに人員増員枠としてもう5000万円。

合計2億円までの損失限度が設定されていたが、それを考えれば決して大きな額ではない。

3人の実績からすれば、調子が戻ってくれば一ヶ月で十分に取り返せる額に過ぎない。



ただ問題は…立ち上げから一度もプラスを出せていないこと。

投資家にとっては過去の数字はあくまで参考に過ぎない。

自分のお金を預けてから、一度もプラスが出ていない運用者にお金を預けるのは不安でしょうがないのも確かだ。



日々、報告を上げ、メールやSkypeで状況報告や説明はしていたが、ある日投資家から直接話そうという連絡が入った。

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プロフィール

tetsu219

Author:tetsu219
元証券ディーラーです。
二十数年ディーラーやって、シンガポールにも一時期行ってヘッジファンドを立ち上げてみたりと色々やってきて、とある証券会社でディーリング部長になり、今はシンガポールでヘッジファンドの設立・経営をやっています。

基本仕事ネタです。
更新は気が向いたときだけ(^^;
でもこのブログを通じて運用を志す若い世代の人たちに何か伝えられること、その一助になればと思っています。

初期は限定記事にしていましたが、今は開き直って全部公開にしてますのでお気軽に(笑)

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