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【回想録】動き始めた夢

6月から運用開始。



自分にとっては久しぶりの実戦。

このところ『ビジネス』ばかりで、戦場からは遠ざかっていた。

3人の運用者の中で一番不安を感じていたのは自分自身に対してだった。



前職ではディーリング部の立ち上げを担ったものの、『空気読んでくれ』の一言以来、本来の勝負が出来なくなり、完全にまともな戦いをしてきていない。

そしてシンガポールに渡って間もなく、ファンド立ち上げを実現すべく、しょっちゅう日本に出張してスーツにカバンで都内を奔走する日々。



『俺が足を引っ張るわけにはいかない。』



直前までシミュレーションは十分やった。

あとはリスク量のコントロールをしっかりやる。

最悪でも3ヵ月あれば本来のリズムが取り戻せるはずだ。

そこまでどうしのぎ、勘を取り戻すか。



運用開始の目前の5月には例の『フラッシュ・クラッシュ』が米国市場で発生していた。



正直、不安の塊だった。

初日はエラク緊張していた。

それがみんなに伝わらないように妙にリラックスした顔をしていた(つもり)。



そして迎えた寄り付き…



大阪証券取引所の225先物の板が異常な状態になる。



『誤発注!?』



瞬時に手が出そうになるが…

自分じゃないだろうな…

仲間じゃないだろうな…



慣れない端末。

久しぶりの売買。

ミスを犯す条件は揃っている。



嫌な予感が頭をよぎる。

すぐにみんなに確認し、立ち会ってくれていたブローカーにも確認してもらい、自社でないことは確認した。



そしてホッとするのも束の間、それなら勝負にいかなければ…と思いながらも、フラッシュ・クラッシュが頭をよぎる。

異常な注文は指値で出てきていた。値段も下げてきている。もしこれが成行に変更されたら…。



ボタンにかけた指が止まる。

実際に注文を出せたのは指値売りが取り消され始めてからだった。



その後、その注文の背景はすぐに分かった。

ドイツ証券のある部門が出した誤発注。

自分は気づかなかったが、かなり下の値段で現物株には大量の買い指値が入っていたようだ。

自動的な裁定取引システムの暴走。

フラッシュ・クラッシュ同様、システムに依存した今の売買の危険性を感じさせる出来事だった。



『しかし、何も俺たちの初日にやらなくても…なぁ(^_^;)』



えらいビビッタし…。

挙句の果てに地場証券の後輩たちや情報系の人たちは、今日が自分たちの初日と知っていたから、ウチがやったと思い込んでいたヤツも多かったようだ。



『ホント、勘弁してくれよ…(^_^;)』



そんなとんでもない洗礼を初日に浴びたものの、3人ともプラスでのスタート。

一人が400万超のプラス。

自分も250万ぐらいプラス。

もう一人も数十万のプラス。



三人で700万強のプラス。

10億円のファンドとしては一日で0.7%のプラスは悪くないスタートだった。

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無題

あの日にスタートだったんですね。
異常な板状況でしたね、ホント。
とんだ災難でしたね^^;

Re:無題

>yyy1980さん
とんだ災難でした…(^_^.)
プロフィール

tetsu219

Author:tetsu219
元証券ディーラーです。
二十数年ディーラーやって、シンガポールにも一時期行ってヘッジファンドを立ち上げてみたりと色々やってきて、とある証券会社でディーリング部長になり、今はシンガポールでヘッジファンドの設立・経営をやっています。

基本仕事ネタです。
更新は気が向いたときだけ(^^;
でもこのブログを通じて運用を志す若い世代の人たちに何か伝えられること、その一助になればと思っています。

初期は限定記事にしていましたが、今は開き直って全部公開にしてますのでお気軽に(笑)

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