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【運用】新陳代謝

自分は元運用者(ディーラー)です。
それなりの経験と実績は積んできた…とは思います。
でもそれも全て過去のもの。
現在のマーケットで同じようにリターンを上げることが出来るかどうか?となれば話は別です。

新卒で配属されたディーリング部。
全く経験も知識もない状態でのスタートでした。
たった一枚の先物取引から始まり、怖さと緊張とプレッシャーの中で、あまりの面白さを感じて夢中になりました。
様々なものを見て、必死に考えて、決断を下す。
そしてマーケットが答えを教えてくれる。

とても辛いことが多く、現実と向き合わされる世界でした。
でもそれ以上にワクワクして、夢中になりました。
とても魅力的で面白い世界です。

必死に努力し、勉強もしました。
結果を出せる運用者になりたい。
もっと成長したい。
若い頃の自分は意欲と自分の可能性に対する貪欲さしかありませんでした。

落ちこぼれの学生だった自分が、オプションやるために中学の参考書から数学勉強し直し、プログラミングも覚えました。
それなりの金額を運用するようになり、自身がシンガポールに渡ってファンドの立ち上げに取り組んだり、様々な経験もしてきました。

でも運用者としての自分の限界、年齢や将来の可能性という現実と向き合わざるをえなくなったとき。
現役にこだわるのではなく、これからの可能性を沢山持った若く運用を志す人たちに道を創り、切り拓くための仕事をしようと決断しました。

新陳代謝。

この現実から目を背けず、向き合うこと。
組織をマネジメントしていく中でも、残念ながら毎年のように退場していかざるをえなくなる人が出てきます。結果が全ての世界なのだから、それもしかたのないことです。

そのときに新しい可能性を育てる取り組みをしていなければ、ただ組織は衰え、老いていくだけです。
それは身体と同じ。
新しい細胞が活発に生まれ、新陳代謝が活発だからこそ、若い人は活き活きとしている。
一定の年齢になると新陳代謝が低下し、細胞が衰えていく。組織も同じことです。

運用者って「年齢」が大事?
とよく聞かれます。
自分は必ずしも「年齢」だとは考えていません。

それは個人においても同じだと思います。
「年齢」というよりも「成功体験」が積みあがっていく中で市場に合わせた「変化」が出来なくなっていく、自分の中での「新陳代謝」が出来なくなっていく。それが最も致命的なものなのではないかと感じています。

うまくいった経験からそのやり方を捨てられず、そこにしがみ続けた結果、市場が変化しているにも関わらず、結果が出せなくなり退場させられていく。そんな風にかつて稼げていた運用者が稼げなくなり、退場させられていく姿も沢山見てきました。

年齢を重ね、責任も大きくなり、自分の中にルーティンが出来てしまっている中で、何かを変えることが難しくなっていく。そして新しい知識や物事を学ぶエネルギーや時間が足りなくなっていく。
確かに若い人の方がそういったものに柔軟に対応することが出来るでしょうから、若さも一つの要素かもしれません。

足元のマーケットにおいても感じます。
ここ2年程度の間でうまくいった運用が、昨年末あたりからうまくいかなくなっている。
そういう人は多いんじゃないでしょうか。

スペイン風邪以来のパンデミック。
今、生きている人のほとんどが経験したことがない経済封鎖。
それに対応するために中央銀行が行った金融緩和と流動性供給。
中央銀行が蛇口を全開に開けてきた中で生まれたコロナ下の株高。
仮想通貨だけではなく、NFTやメタバース(仮想空間)など、「現実」のものではなく「仮想」のものにも大量の資金が流れ込んだ。
確かにそれらの未来の可能性には自分も期待していますが、個人的には「いくらなんでも…」と思うような価格がついているものも少なくありませんでした。

そしてその政策の根拠となっていたコロナ禍が克服に向かい、経済活動が正常化に向かう中で生じたインフレ。中央銀行の政策スタンスが大きく変化したのが昨年12月あたりです。
さらにロシアによるウクライナ侵攻が拍車をかけた。
中央銀行は慌てて蛇口を締めにいこうとしている。

コロナ禍に起因した極端な政策が、また極端な変化をしようとしている。
マーケットの土台となるマクロ環境が大きく変わっていったのがこの半年程度の期間です。

コロナ禍のマーケットと同じ目線で、同じ考え方で、同じリスクの取り方をしていれば苦しくなる。
市場は常に変化します。その変化をどう感じ取り、どうそれに自分を合わせていくか。自分の中での新陳代謝を常に意識していないと、マーケットがどんなにシグナルを発していても、それを感じ取り、実際に自分の行動を変化させることは難しくなる。

そのときに邪魔をするのが「過去の成功体験」だったりするのです。「下がったところを買っておけば儲かった」という経験が邪魔をして、市場環境の大きな変化を客観的に受け止めることを阻害し、切り替えることができなくなってしまう。
それでも稼げた時期の収益が十分にあり、多少切り替えが遅れて損が出たとしても、その範囲内で損失が抑制されていて、一度冷静になって客観的に見直したうえで立て直すことが出来れば十分でしょう。ただ損が出ているときに意固地になってしまうとどこかで退場に追い込まれてしまうことになるかもしれない。

そのときに重要なのが「リスク・コントロール」であり、「ロスカット」なんです。
自分のリスク許容度を把握し、過剰なリスクを取らないこと。特にうまくいっていないときほど、自分の感情では損を取り返すためにより大きなリスクを取りたくなります。でも損が出ている時点で、自分の想定とは異なる動きが生じている。その現実を見て、それが何によるズレなのかが見えるまではリスクをしっかりと抑制する自制心。これが「リスク・コントロール」。
いったん負けを認めたうえで、冷静さを取り戻し、客観的にマーケットや自分のトレードを見直すプロセスが「ロスカット」。

個人レベルでも、組織レベルでも、これがリスクのあるマーケットという世界で長く生き残っていくためにはとても重要なんです。
組織であれば、ルールや上司などの第三者がブレーキかけてくれるかもしれないけれど、個人だとそれを自分でやりきる必要があります。

これが出来ていない人が「運用」を「ギャンブル」にしてしまう。
結果、いずれ退場させられることになって「株は危険」「投資≒ギャンブル」というレッテルを貼る。

この世界はリスクと常に向き合うところです。
その結果は全て自分が背負う厳しい世界です。

とても辛いことが多く、現実と向き合わされる世界です。
でもとても魅力的で面白い世界です。

一回の失敗で退場するようなことにならないためにもリスク・コントロールやロスカットを忘れずに、次に繋げることが大切です。
マーケットは逃げていったり、なくなったりはしませんから。
ぜひ長くマーケットと向き合い、この世界を楽しで欲しいと願っています。


プロフィール

tetsu219

Author:tetsu219
元証券ディーラーです。
二十数年ディーラーやって、シンガポールにも一時期行ってヘッジファンドを立ち上げてみたりと色々やってきて、とある証券会社でディーリング部長になり、今はシンガポールでヘッジファンドの設立・経営をやっています。

基本仕事ネタです。
更新は気が向いたときだけ(^^;
でもこのブログを通じて運用を志す若い世代の人たちに何か伝えられること、その一助になればと思っています。

初期は限定記事にしていましたが、今は開き直って全部公開にしてますのでお気軽に(笑)

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