【回想録】混迷のとき…11
外部から即戦力のディーラーを採用することはほぼ無理。
他社をクビになって行くところがないようなディーラーなら来るかもしれないが、それでは意味がない。
かといっていつまでも『一人ディーリング部(優秀なアシスタント(?)はいるけれど)』では先が広がらない。
悩んだ末、前職でもずっとやってきた『育成』を始めることにした。
この会社の(自分からすれば)異質な文化を受け入れている若手をディーラーとして育てる。
それならば会社の人たちにも受け入れてもらえるディーリング部を作れるのではないかと思った。
ただ時間はかかるが…。
入社して数カ月が過ぎたその頃。
ほとんどの社員に敵対視されているような感覚だった入社時と状況は変わっていた。
まだ一部にそういった雰囲気がなかった訳ではないが、多くの人たちが自分の存在を認め、受け入れてくれつつあった。
そして熱意を持って応援してくれる人も出てきていた。
自分も入社当初はカルチャーショックを受けていたが、徐々に彼らを好きになっていった。
『やり過ぎ』と感じることもままあったが、とてもクソ真面目で、仕事を必死にやり、緊張感の塊のような環境下で怒鳴りあいながら仕事をする。
部長であっても、部店長会議などで泣くまで怒鳴られる。
キツイことはキツイ…。
でも仕事がヌルイのもどうかと思う。
必死に頑張っているからより強くなるのだし、この時代にそれだけ熱く仕事をしている彼らを否定することも嫌いになることもできなかった。
彼らが自分を受け入れてくれたのも、良くも悪くも数字がどうの…ではない。
環境が環境だけに数字的には自分が満足いく運用なんて出来ていなかったから。
おそらく口先だけの外部から来た人間が多くて、ずいぶんと腹立たしい思いをしてきたのだろう。
そしてその会社の価値観とは最も反対側にいるディーラーの中でも多少目立つ自分の存在。
営業マンが死に物狂いで稼いできた手数料をすっ飛ばして平然と高い給料もらう…そんなヤツは許さない。
当初の彼らはそんな意識だったんじゃないかな?
でも一生懸命伝えて、向き合う中で、少しずつみんなが受け入れてくれるようになった。
自分も真剣に仕事をし、相場と向き合い、努力をしているんだということを彼らが認めてくれつつあったのかもしれない。
逆に励ましをもらうこともあった。
前の会社ではディーラーの自由度は高く、楽ではあったが、バックオフィスの人からは相当な嫌われ者だったディーリング部。
しかし、今の会社ではバックオフィスの人たちこそが自分を支援してくれるようになっていた。
コンプライアンス部、総務部…。
特に人事担当のみんなは若手ディーラーの採用についてもずいぶんと骨をおってくれた。
彼らの支援もあって
・運用資金がない
・東証会員権がない
・とても外部から来た人間のなじめない企業文化
というほぼ無理としか思えない環境にありながらも、少しずつディーリング部の構成は形を作りつつあった。
しかし、その歩みは恐ろしいほど遅く、遠回りな道程だった。