【回想録】混迷のとき…10
とりあえずプラ転して12月テスト運用開始の月を終えることが出来てホッとするのも束の間…自分はまた企業文化の違いに直面することとなる。
大納会と大発会。
かつては一般的な証券会社でもそれなりにイベントやっていたが、近年ではとりあえずデスク周りと片付けて、年末年始のご挨拶やって、軽く飲む程度が多い。
しかし、その会社では一大イベントになっていた。
全員一同に集まり、酒・つまみを交わし、そして社長以下、役員のところに行列してお酌してまわる…。これが全従業員でやるもんだから、一巡するまでが長い。
ようやく一巡して一息つきながら本部メンバーで飲んでいると
『部長、七三かオールバックにしてないけどいいの?』
と元役員の方に声をかけられた。
(さすがにそれは勘弁してくれ…)
とマジで思った。
全てが終わった頃、慣れない神経を使ったせいか疲れ果ててディーリングルームに戻る。ようやく帰れるかな…と思っていたら、総務から内線がかかってきて
『部長、社長室においでください。』
とのこと。
そして扉を開けて入ると、そこにはワインとつまみの山が…。
終わることのない飲みは延々と夜まで続く…。
路上でしばらく動けない状態になったのは十年以上振りのことだった…。
そこからも企業文化の壁が常にディーリング部構築の前に立ちはだかり続けた。
ある意味、証券業界のディーラー達は良くも悪くも自由奔放。
契約ディーラーが多いこともあり、服装まで自由。
自分もデニムにTシャツで会社に行っていた口だ。
そんな彼らが自分の変わり果てた姿を見て、
『○○さんとは一緒にやりたいんですけど、さすがにそれは厳しいです…。』
と何人に言われたことだろう。
ディーラーは個性を生かす仕事。
個性を殺して柔軟性を奪ってしまったら、刻々と変化する相場には適応できない。
また精神的な部分が非常に重要な仕事でもある。
だから相場以外でのプレッシャーは出来る限り軽減すべき。
一方で、その会社は徹底した組織管理。
軍隊的なノリで統率を重んじる。
どちらがいい悪いの問題ではなく、個人営業主体(お客様相手)の業務と運用(相場相手)の業務では本質が異なる。
だから会社の文化に染まらないものは排除する風潮では仲間は呼べない。
これではいつまで経っても一人ぼっちのディーリング部長だ(-_-;)
しかも運用に回せる現金は最初に聞いていたものの3分の1程度しかなく、東証の会員権もない。
次の段階にどう進んでいいのかが見えてこなかった。