【回想録】混迷の時…7
何もないところにディーリング部創設を託されて移籍した。
たった一人の部長(^^ゞ
一応、過去にディーラー経験があるという子が下につくことにはなっていたが…。
まず何から手をつけるか…。
システムもなければ管理体制もない。
株式ディーリングの管理をロクにしたことがない会社。
元々、商品先物系の会社からの業態転換であっただけに様々なものが異質だった。
かといって、ディーリング部長として入ったからには運用開始までにいつまでも手間取るわけにいかない。
とりあえずトレーディングシステムの選定。
そして管理体制(バックオフィス業務、コンプライアンス体制)の構築。
最低限の環境整備を進めながら、取引所端末での売買で見切り発車することにした。
トレーディングシステムの選定は一カ月弱で片づけたが、実際の導入までは3ヵ月~4ヵ月はかかる。
いまどき取引所端末で売買することにかなり不安はあったが、システム稼働までボーっとしているのは性に合わないし、給料泥棒にはなりたくなかったから(^^ゞ
管理体制の構築も最低限の体制は1ヵ月でメドを立て、翌月からテスト売買を開始し、あとは走りながら…という感じだった。
しかし、問題は思わぬところにあった。
一つは『企業文化』。
自分は全く知らなかったのだが、商品先物系の会社の文化は証券会社とは異質なもの。
一言でいえば『軍隊』だった。
まず朝の朝礼に始まる。
全員がフロアで整列し、社訓を読み上げる。
そして部店長クラスが日替わりで話をする(自分も月に一度回ってきた)。
その内容を社長が横で聞いている。
内容が悪いと後で詰められることになる。
最初に自分に順番が回ってきたときはエライプレッシャーだった。
事前にある程度原稿作って、何度か読み返す。
それなりに(人前で話すことに)場慣れしていたはずの自分だが、無茶苦茶緊張した。
毎朝、全員で読み上げる社訓も結構長い文章。
役員が並ぶ側からは社訓の張り紙が見えるが、自分の方からは見えない。
最初の一週間ぐらい口パクだった。
対面が鬼軍曹的な取締役だったんで、エライドキドキした。
何といっても初日。
自分の下につくはずの子が社章をつけ忘れてきた。
それを見つけた鬼軍曹。
いきなりツカツカと歩み寄り、そいつの胸ぐらをつかむ勢いで全社員の前で怒鳴りつけた。
『マジか…』
その雰囲気、風土にも参ったし、怒鳴られているのが自分の部下になる予定の子ということにも参った…。
ま、それでも一度決めた以上はやるしかない。
しかし、その後もその企業風土は自分が作ろうとしているものの大きな障害になり続けた。
ワイシャツは白。靴とベルトは黒。
それ以外はすべてNG。
ワイシャツの下にはアンダーシャツ(白)着用が社内規定に載せられている。
ついこの間まで、髪型はオールバックか七三分けだったらしい…。
当然、髪の毛の色は黒のみだ。
前職で契約ディーラーだった自分。
正直、ちょっとチャラかった…(^^ゞ
髪の毛は少し茶色っぽくしており、デニムにTシャツで会社に行っていた。
仕方ない。
白いワイシャツを大量購入。
バーニーズで数着買ったが、途中から馬鹿馬鹿しくなり、安い2000円ぐらいのワイシャツで済ませた。
そして髪。
馴染みの美容院に行き、仲良しの美容師に
『真っ黒にして』
と頼んだ。
髪はいつもソイツに任せっきり。
『ちょっと遊んでいいすか?』
『会社に行けなくならない程度ならいーよ。』
そんな軽いノリでいつもやってもらっていた。
『もう遊べないじゃないっすか…』
とても残念そうにソイツは髪を黒く染めてくれた。
そして終わったとき、鏡の前には真っ黒な髪をした自分がいた。
明らかにカツラとしか思えない黒さ。
真っ黒ってそうなっちゃうんだな…。
初めて知りました(>_<)
翌日の昼。
オフィスが近くなんで他社のディーラー仲間とランチをした。
彼は横断歩道の向こうから、自分を見つけるなり笑った…。
マジで凹む…。
かといって服装で仕事するわけじゃない…と自分を言い聞かせながら、トレーディング環境整備を進めていった。
売買開始に合わせてアシスタントも来てくれた。
とても動ける子で、これなら取引所端末でも何とかなる…そう思えた。
まずはやるっきゃない。
そして始めたテスト売買。
落とし穴は別にあった…。