FC2ブログ

【回想録】挑戦のとき…6

そしてこの頃、株式市場史に残る誤発注が発生した。

みなさんご存知の『ジェイコム・ショック』。




2005年12月8日。

メジャーSQ前日のことだった。




当時、先物ディーラーと化していた自分はあまり気にしていなかった銘柄『ジェイコム』。




公募価格は61万円。新規上場初日は買い気配でのスタートとなった。

自分が見たのはそこまで。




その後、しばらく先物をバタバタやっていたときに現物株のディーラーから声が上がる。




『何だ!コレ!?』

『ミスだろ、ミス!』




慌てて端末切り替えてみると…67万2千円に差し掛かった9時27分。

『1円まで61万株の売り』という注文が出されていた。


わずか3分でストップ安(57万2千円)まで急落し、約10分間ほどそのまま放置されるという状況が続いた。


その間に各社からバンバン買いが入る。


明らかなミス。

株価と株数を間違えて入力していた…。





その瞬間思い出したことがある。




『電通ショック』




2001年12月3日に起きた誤発注。


電通というメジャー級の上場だけに注目されており、自分も寄り前からずっと見ていた。


公開価格42万円で寄り付いた…と思った瞬間に目を疑うような光景が。


大量の売りが突然出てきて急落。


瞬時にどんな注文が出ていたのかを確認すると16円で61万株の売りという注文だった。


61万円で16株の売りとするべきところを間違えたのは明白だった。


当時の部長に

『取りにいっていいか?』と念のため確認したうえで発注。

チームでも何人かしっかり取れていて結構儲かったのを覚えている。




そのとき誤発注を出したのはUBSウォーバーグ証券。

同日の手口は売りが6万5779株に対し、買いが1万8111株と大量の売り超。

公募・売出株数が17万5千株だったことを考えると、それだけの株を受け渡しまでに調達出来るのか?

と話題になった。




電通の企業価値云々ではなく、UBSウォーバーグが株券を調達出来るかどうか?という点と同社が買い戻さざるをえなくなる、という需給要因だけで株価は急騰していった。




しかし、今回のジェイコムはさらにシャレにならない状況だった。

発行済株式総数が139万920株もあった大企業の電通に対し、ジェイコムの発行済株式総数はわずか1万4500株しかない。




61万株の売りを出し、10分近くも場にさらしてしまっていたため10数万株の約定がついてしまっていた。

最後に48万株買いという注文が出されてその売りは完全に吸収される。




この誤発注を起こしたのはみずほ証券。


後に分かったのが、東証のシステム上の問題で取り消しができない状態に陥っていたとのこと。

結局、自社で48万株の買い注文を入れて取り消せない売り注文を処理せざるをえなかったのだ。




当時、自分の所属していた会社の発注端末は再起動させないと初物は注文出来ないようにロックされていた。


それでも30数名いるチームの中で一人だけそれを取りにいったディーラーがいた。


自分は


『よくやったな』


と言ったのを覚えている。




批判を恐れずにあえて言うが、明らかなミス・プライスを取りにいくことは運用者として決して間違ってはいないと思う。




それにいち早く気づき、収益機会をモノにする。

ジェイコム男ことBNF氏はやはりすごいと感心する。




その後、

『人のミスにつけこんで収益を上げることはいかがなものか?』

とエライ方がおっしゃった。




そして驚いたのは電通ショックで大損こいたUBS証券自身がそこで上げた利益を(基金に)返上すると申し出たこと(一番儲けていたのに…)。




そこで一気に風潮はそちらに流れて、証券ディーラーの多くがそこでの利益を召し上げられた。


会社によって対応は違った。

ディーラーに利益を計上させてくれた会社もある。




リアルマネーが飛び交うマーケットで実際に注文を出すという行為には常にリスクが伴う。

自分も数回、軽い誤発注をしたこともある。

それほど大したロスにはならなかったが(その分、えらいハラハラした…)。




マーケットは我々にとって戦場だ。

そこで間違いを犯す方に根本的な責任がある。




生きるか死ぬかの戦いを真剣にやっていれば、ミスは命取りになりかねない。

そのミスを見つけて利益を上げたことを道義上云々と批判するのはおかしいと思う。

だから自分はジェイコムを取りにいけた後輩を評価した。




もちろん、そういったミスが起こらないことを願うし、そういった管理体制をしっかりと整えることは必要だ。


自分の身を守り、マーケットを守るためにも。




ホンの一瞬。わずかなミスが致命的な損失につながる。

怖いところで仕事をしているのだということを痛感させられた出来事だった。




この事件が今でも尾を引き、東証上場は長引いている。

みずほ証券と東京証券取引所の間で裁判になってしまっているためだ。




今も証券界に影を落とす出来事だった。

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

tetsu219

Author:tetsu219
元証券ディーラーです。
二十数年ディーラーやって、シンガポールにも一時期行ってヘッジファンドを立ち上げてみたりと色々やってきて、とある証券会社でディーリング部長になり、今はシンガポールでヘッジファンドの設立・経営をやっています。

基本仕事ネタです。
更新は気が向いたときだけ(^^;
でもこのブログを通じて運用を志す若い世代の人たちに何か伝えられること、その一助になればと思っています。

初期は限定記事にしていましたが、今は開き直って全部公開にしてますのでお気軽に(笑)

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR