【回想録】挑戦のとき…5
せっかく少し話題に出たので先物ディーラーにとっての月に一度のお祭り『機械受注』について触れてみたい。
2004年9月。
ITバブル崩壊の傷からようやく立ち直り始めた株式市場。
しかし、戻り一巡後、こう着感が強い時期があった。
値動きが限られ、なかなかテンションが上がらない相場。
そんな中、ある経済指標が相場を動かした。
それが機械受注。
元々、ブレが大きい指標であっただけに、あまり注目されていなかったのだが、この日ばかりは違った。
事前予想は▲2.2%。
実際に発表された値は▲11.3%。
その発表は当時14時だった。
それまで鈍い動きを続けていた日経平均株価がこれをきっかけに大幅安となった。
ボラティリティに飢えていたディーラーにとっては最高の贈り物。
それから機械受注を皆が気にするようになった。
しかも大証のシステムが遅かったから、必ずのように遅延する。
瞬間で数十円、多いときなら百円抜けることもある。
発表直前に板を並べている連中はいったん取り消し、上か下かを考えながらEnterキーに指をかけて待つ。
今、自分は夜間の取引などもやっているが、雇用統計などの発表があるときが同じような動きをする。
ちょっとしたイベントだった。
自分も待ち構えてやるつもりはあったが、一瞬のスピード勝負ではなかなか勝てない。
どちらかといえば出た数字、その後のマーケットの動きから逆張りをすることが多かった。
初動の動きをあきらめた理由は『彼』。
当時は隣に座っていたが、自分が30円下まで100枚売りを出したのに空振った。
その原因は『彼』にあった。
となりで50円下まで300枚売りにいっていた…。
板並べているやつらが消しているから、ほぼ根こそぎ持っていかれた。
『コイツとスピード勝負しても勝てんな…。』
と、そこからやり方を切り替えた。
それでもボラティリティがあれば何とかなる。
短期運用者にとってはボラティリティ=酸素のようなもの。
しかし、それも相場が乱高下するからという理由で寄り前(寄り前なだけマシだが…)に発表時間を変更されてしまった。
相場が変動することを『好ましくない』と政治家や当局の人は言う。
しかし、相場が動くからこそ参加者が増え、出来高・流動性も増加し、そして株主も売買しやすくなる。
決算発表や日本でこなすべき材料は積極的に日本の取引時間で消化できるようにするべきだと思う。
引け後に大幅な下方修正の決算発表を行えば、普通の株主は翌朝ギャップダウンに苦しむことになる。
場中なら、一時急落とはなるが売ろうと思えば売れる。
そして下げ過ぎと思った参加者からの買いも入ってくる。
相場が変動することを『悪』と思う風潮は市場の活力を失わせる。
妙な空売り規制で参加者の手足を縛った結果、相場が戻り始めても『踏み上げ相場』にはならない。
相場が一番急激に上がるとき…それは踏み上げ相場(Short Squeeze)だ。
値段がいくらであろうが買い戻さなければならない状態に陥った時の怖さは味わった人でなければ分からない。
何故、最近の相場が下落時ばかり値幅が出やすく、上昇時は緩慢にしか上がらないのか?
投資家は株を保有している中で、上昇しても慌てる必要はない。
でも相場が急落すれば慌てて対応しなければならない。
一方で、売りを制約してしまっているため、上昇時に慌てる人が少ないのだ。
規制でしばり、相場の活力を奪えば出来高は減る。
そして出来高が減り、ボラティリティがなければ参加者はその市場を見限る。
そして今の日本市場の存在感の低さにつながった。
悪意を持った市場参加者の退場については厳しくするべきだが、安易な規制は市場の活力を奪う。
相場ってもっとワクワクドキドキするものだった…ように思うんですけどね(^_^;)