【回想録】挑戦のとき…2
『人を育てる』
これはすごく難しい。
自分はこう考えている。
基本的に育つ力がある子は勝手に育つ。
教えなければいけないのは「稼ぎ方」ではなく、「考え方(見方)」「知識」「在り方」。
「稼ぎ方」は人それぞれ。
特にメンタルな要素が大きい短期運用において、性格の違う人間に自分の戦い方を教えたって意味はない。最終的にはそれぞれが自分にあったやり方を身につけていくしかない。
統計学的なアプローチは多少教えられる要素はあるが…。
「考え方(見方)」は学ぶことが出来る。この材料をどう考えるか?今の相場をどう考えるか?ただそこに絶対的な正解はない。だから色んな人に聞いて回らせること。
上がると思う人に聞き、何をみてそう思うのか?
下がると思う人に聞き、何をみてそう思うのか?
それを学ぶことで視野は広がる。
「知識」も当然教えられる。
自分はほぼ全員にVBAを教えた。厳しい先生だったかもしれないが、完全に独学でやらなければならなかった自分に比べればかなり楽は出来たはずだ。それが出来ればロング・ショートなど、短期運用ではないやり方を身につける近道にもなる。長く生き残るには武器は一つでも多い方がいいから。
マーケットの知識ももちろん教えた。現物株やっていてもデリバティブの知識があれば強いし、デリバティブやっていても基本になる現物株を知る必要がある。
「在り方」というのが一番難しい。
契約化が進み、成功報酬が高騰する中で、ディーラーは個人主義的になりがちだった。バックオフィスの人達とは溝が深まるばかり…。自分が伝えたかったのは『謙虚であれ』ということ。
自分自身に常に言い聞かせてきたことだった。
努力は自分のためにするんだということ。
強制でさせられる努力はどうせ身にならない。
でも彼ら一人一人の努力は見ていてやりたい。
自分が若手の頃、兄貴が自分を見ていてくれたように。
厳しい上司だったと思う。
でみ一人残らず生き残らせたいと思っていた(実際には無理だと分かっていたし、彼らには「お前らの中で生き残れるのは10人いて2人がいいとこだ!」なんてプレッシャーもかけていたっけf^_^;)
もしこの先、ディーラーを諦めなければならない時が来ても、そのときに全力でやりきったという気持ちで終わってほしい。悔しさはあっても、決して後悔はして欲しくなかったから。
でも実際には
自分は朝のミーティングと引け後のミーティングだけをやり、後は仲間に任せることが多かった。
「色んなディーラーの意見を聞いてこい。」
「俺のコピーになろうとはするな。」
個々に壁にぶつかった時、手を差し伸べたり、背中を押してやるのは自分の役目だが、皆を型にはめたくなかった。
とりあえずそんな考え方で育成プロジェクトを始めた。