【回想録】変化のとき…4
同時多発テロ。
この忌まわしい事件の後、世界は変わっていった。
2001年10月にはNATOによるアフガニスタン攻撃、2003年3月にはイラク戦争と中東は不安定な状態に陥った。
ニュースでは『地政学的リスク』という言葉がしょっちゅう聞かれるようになり、市場はテロのリスクに神経質になっていた。
ある日、オーバーナイトでロングポジションを残した。NY市場は大幅上昇。CME日経平均先物(シカゴで売買されている日経平均の先物)もしっかり。朝はもう間違いなく儲かるものと信じて出社した。
そして寄りつきが近づく。そのとき『東京証券取引所に爆破予告』とのニュースが…。
仕方なくほとんどチャラでポジション解消。その後、その予告が実行されることはなく、市場は大幅上昇となった。
『ふざけんなよ。このバカ!』
とその予告犯を恨めしく思った…(きっとショート(売り)で捕まっていたヤツに違いない…)。
そんな不安定な中で、いったんは10000円台を回復した日経平均株価も再度10000円を割り込み、ズルズルと沈み始めた。相場は決して楽な状況ではなかった。
それでもデリバティブにシフトしたこともあって、個人としての収益はかなり安定していた。
2002年~2003年にかけて、市場では色々と話題があった。
バブル崩壊後の後遺症(持合い解消)に加え、ITバブル崩壊によって日経平均株価は力なく10000円台を割り込み、このまま市場は底なし沼に落ちていくかに見えた。
そんな中で日銀が動いた。
2002年9月18日に日銀が株買い取りを発表したのだ。持合い解消売りが需給の最大の重しとなっていたこの時期。それに歯止めをかける目的があったと思われるが、これは劇薬だった。
9200円台前半でもみ合っていた日経平均先物は『日銀株買い取り』のニュースが流れた途端、一変した。
一気に特別買い気配となり、9650円の高値をつける。そして乱高下を経て、翌日も上昇スタート。9960円まで迫り、10000円台回復への期待も膨らんだ。
しかし、日銀が株というリスク資産を買い取るということはやはり劇薬。そして規模も市場のトレンドを一変させるようなレベルではなかった。結局、その効果が出たのは一時的。その後、日経平均株価はズルズルと沈んでいき、ITバブル崩壊後の安値7603.76円に向かっていくことになる。
ちなみに日興ソロモンがETF組成で株価操作まがいのことをしたのもこの時期。それでエライ儲けて、とあるお店で豪遊したとかしないとか…(^_^;)
この頃は『引けギャラ(引け値ギャランティ)』と呼ばれる執行方法が目立った(おいしかったでしょうね)。ザラ場でブローカーが買っていって、引け値でお客さんに渡すやり方。うまくやればかなりの収益源になったはず。この一件で、引けギャラの怖さにお客さんが気づいた…のかもしれません。その辺はブローカーサイドの人間ではないので詳細は分かりませんが。
そんなこんながありながら、2003年4月にITバブル崩壊後の安値をつけた日経平均株価はようやく上昇に向かい始めた。
ITバブル崩壊後の相場でも、ある程度のレベル(月2000万程度)の収益を維持できていた自分。そこで培われた地力が目に見えるようになったのはこの頃だ。月5000万円を下回ることはなくなり、ITバブル時の月間最高益を更新することも出来た。
ちなみにこの頃(2003年6月30日)、東証・大証ともに手口情報を非公開にした。
それまでは手口がリアルタイムで公開されており、どこが買っていて上がっているとか、大口で売ったのがどこかなどを確認することができた。
みんな手口情報を見ていた。
外資系証券(ゴールドマンやモルガンなど)の買いが見えれば提灯つけるやつもいた。
大義名分としてはそうやって手口をみて、提灯つけられるから委託で大口の売買やっているところの執行コストが上がる(先回りで買われるとより上の値段を買うハメになる)、ということで委託の不利を改善するため…とか何とか言っていたが、実際これで一番おいしい思いをしたのは実は大口ディーラー。
これまでは手口が公開されていたため、大口でドカンをいけば手の内がバレる。その手口が地場証券なら対抗されることもしばしば…。手口非公開になったため、誰が買ったのかは周りには分からないから、売り板厚いところをドカンを買えば、抜きやすくなった。
インパクト勝負でドカンといって、一文上でさばくというやり方が楽に通りやすくなった。
一方で、これを悪用するプレーヤーも増えた。手口が公開されていれば衆人監視の下であまり悪いことはできない。したら会社が名指しで追及を受ける。それが見えなくなったため、見せ玉行為の増加にもつながった。
個人的には手口は公開しておいていいと思う。
取引所やSECにリアルタイムで悪意ある発注・取消などをフォロー出来るのなら非公開でもいいが、追い切れない現状ならば公開してしまえば、悪質な発注・取消を抑止することも出来るはずだから。
そんな個人の思いは通らないのでおいておいて…。
過去最高益を更新した自分。自信を持ち始め、月間1億円という目標をクリアしたいと真剣に思い始めていた。
でもそこに落とし穴があった…。