【回想録】変化のとき…2
合併して運用環境は大きく変化した。
取引所端末で発注していたものが、取引用の端末を付与されて、それで売買するようになった。
伝票を起こさなくていいのは助かったが、そのシステムはあまりにも遅かった。
Enterキーを押下してから何秒もしてようやく板に自分の注文が出るような状態。
取引所端末で発注した方が何倍も早かった。
これでは戦えない…。
部長に取引所端末での発注も認めてもらうように願い出た。
せめて相場が荒れているときだけでもいいから、と。
しかし、それがなかなか認めてもらえない。
「今、上の方で検討している。」
これが部長の回答だった。
3ヶ月目に入った頃だろうか、恐れていたことが起きてしまった。
オプションでボラティリティを売るポジションを持っていたのだが、相場がニュースで崩れた。
先物でヘッジしにいったのだが、30円下まで指値売り→空振り→別注文でもう一度売り→空振り→別注文で成り行きで売り→約定。
なぜ別注文で言ったかというと取消・訂正が異常に面倒なシステムだったからだ。現在のようにワンクリックでは取り消せない。加えて、処理速度も非常に遅い。要するに中途半端なシステム。
結果、100円ぐらい余分に下売るハメになり、かなりのロスを被った。
ポジションをスクエアにした後、椅子蹴っ飛ばして部長に怒鳴ったのを覚えている。
そしその日の引け後に取引所端末の使用許可は下りた。
「今の状態では危ないからお願いしていたのに、一ヶ月以上もノラリクラリしておいて、一日で決められることなのかよ!」
とても悔しかった。
戦場で必死に戦っているのに、血を流すまで動いてくれなかった。
動けば通ることだったのに…。
夕方、部長に謝りにいった。
怒鳴ってしまったことを。
でもそれぐらい悔しかった。
でも今になって思えば…
吸収合併された会社の一部長。
色々と通すのも大変だったのだろう。
ま、それが仕事といえば仕事なんだけど。
バブル崩壊後、そんなこんなありながら決して楽な環境ではない中で、新しい環境に四苦八苦しながらも、少しずつ自分はチームの柱としての実績を残し始めていた。