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【トレード】今回の下落相場に思うこと

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2月からの相場展開。
そして3月に入ってからの急落。
「リスク」への認識の重要さを思い知らされる状況になっている。

1月下旬。
まだ中国での感染拡大ですら、公表されている数字はそれほど大きなものにはなっていなかった。
しかし、23日に流れは一気に変わる。
『武漢封鎖』
これほどの規模の都市が封鎖されたという事実。
この事実をどう評価し、新型コロナウイルス感染拡大へのリスク認識をどこまで持てるかがカギだった気がする。

まだこの段階では「過剰反応し過ぎだ」「新型コロナウイルスはSARSやMERSよりも致死率が低いから大丈夫だ」と楽観論を語る人も多く、特に「中国の問題」「アジアの問題」という視点で捉えられている印象が強かった。
滑稽なほど過剰な反応をする武漢、中国の人々の行動をみて、失笑している人も多く、それが自分たちの身に降りかかるリスクと感じている人はまだ少数派だったと思う。

実際に、市場は一時的に下落したものの、世界的な超低金利を背景とした過剰流動性に支えられたマーケットはすぐに盛り返し、中国での感染者数拡大の報道があったにも関わらず、米国株は非常に強い動きを示し、高値をトライする動きを示した。
ただその頃(表中の2月10日~14日の週の動き)には、アジアでの感染拡大リスクは認識されてきたのか、米国株の強さに日本株などはついていけない状況が生じている(クルーズ船の問題もあった)。強気相場が続いてきた中で、リスクに鈍感になりきっていた市場参加者(悪材料への奇妙なほどの強さ)、「下げは買い」という人がまだ多数だった気がする。

相場が一気に表情を変えたのは、このリスクが(欧米の投資家にとって)自らに降りかかってくるリスクとして認識されたときだったと思う。それが2月最終週。表中右側の新型コロナウイルス感染者数の推移をみると、この直前の週末に韓国、そしてイタリアや中東での感染者数が急速に増加し始めている(個人的に集計していた数値なので、実際の数値とは相違がある可能性があります)。

欧米投資家の姿勢変化、リスク認識の変化。これは大きな影響を及ぼす。市場への影響度が最も大きい、運用資産規模も大きいのが彼らだからだ。
NYダウは過去最大の下落幅を記録し、VIXなど、ボラティリティ指標も急騰。市場は衝撃的と言っていいほど不安定な動きを示した。
これは多くの市場参加者が、新型コロナウイルスの感染拡大と、それが経済に与えるダメージを軽視し、油断していたことの裏返しでもあるのだろう。

あまりに状況の変化が急であったこともあり、2月最終週の急落は個別株式への実弾売り主体ではなく、記録的な先物への売りという形でそれが表れている(表中、海外投資家動向)。現物▲3656億円に対し、先物は▲1兆4120億円)。この週の動きを現物株への売り金額だけしか見ていないと相場を見誤る。

「先物への売り」となると、よくヘッジファンドの売り仕掛けとかで片付けようとする人もいるが、それはちょっと違うだろう。確かにCTAの売りも相当量出ていたと思うが、それだけでこんな金額にはならないと思う。おそらくは相当なヘッジ・ニーズがあったからこその現象だったのだと思う。それも多くの市場参加者が、これまでこのリスクに鈍感であったことの裏返しともいえる。「リスクを軽視していた人たち」のパニックによって生じた動きだ。結果として、市場は大きく歪みも生じており、リーマン以降の相場しか知らない人にとっては、初めて経験するような状況が生じていると思う。

現在、イタリアに続いて、フランス・ドイツでも感染者数が1000人を超え、欧州はかなり危機的な状況になりつつある。米国でもNYが緊急事態を宣言するなど、予断を許さない状況にある。
その一方で、世界的な感染拡大は各国で感染拡大対策が強力に打ち出されている。それによって経済は停滞し、様々な副作用が生じてもいるが、今は医療崩壊を起こした武漢のようになってしまうのか、それともその手前で抑制できている中国の他の主要都市程度の状況で留められるのかの瀬戸際と考えれば仕方のないところだろう。

今回の下落は、明らかに新型コロナウイルス感染拡大に伴う下落だ。それは認めるべきだろう。
だとするならば、その感染拡大のピークアウトが見えてくるタイミングが重要だ。

相場はそれが期待であれ、不安であれ、感情で動いているときが最も大きく動く。
現実となったときには、相場はある程度打たれ強くなっているだろう。
そのときには巨額なヘッジによって生じた反動、その歪みの是正も早いとは思う。
新型コロナウイルスの感染拡大状況をしっかりとモニターしながら、冷静さを失わずに対応していくことが大事だろう。

もしも、この相場であまりに大きなダメージを受けた人は、『リスクとの向き合い方』をしっかりと見直すべきだろう。『かもしれない』という意識を多少でも持ててさえいれば、そのダメージを最小化できたかもしれないのだから。実際にそれが起きるかどうかは結果論でしかない。ただリスクとの向き合い方において、それが起きるかもしれないという意識を持って取り組めるかどうかは大事なことだ。今回は『巨大都市の封鎖』という具体的かつ驚くような事実がそこにあったのだから。
そして長く相場で生き残っていけるようになるためには、それも大事な『経験』にしていくしかないのだと思う。
プロフィール

tetsu219

Author:tetsu219
元証券ディーラーです。
二十数年ディーラーやって、シンガポールにも一時期行ってヘッジファンドを立ち上げてみたりと色々やってきて、とある証券会社でディーリング部長になり、今はシンガポールでヘッジファンドの設立・経営をやっています。

基本仕事ネタです。
更新は気が向いたときだけ(^^;
でもこのブログを通じて運用を志す若い世代の人たちに何か伝えられること、その一助になればと思っています。

初期は限定記事にしていましたが、今は開き直って全部公開にしてますのでお気軽に(笑)

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