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【マーケット】「だろう」と「かもしれない」

新型コロナウイルス(COVID-19)の影響が広がっている。

自分が住んでいるシンガポールは、MOHによって警戒レベルがコード・オレンジに引き上げられた週末には、トイレット・ペーパーが入手困難になるなど、一時的に緊張が高まる状況にあったが、その夕方には首相がビデオ・メッセージをYou Tubeで流すなどして鎮静化。マスクの着用率も、一時期に比べればだいぶ低下しており、概ね日常を失うことなく過ごせている。

コード・オレンジが継続されている以上、自分も在宅勤務(BCP対応)状態を持続はしているが、シンガポール政府の積極的な行動と、感染経路把握、隔離対策の徹底、水際対策の強化などへの信頼感は強く、水際対策に失敗し、混乱を強めている現在の日本とは対照的な状況になっている。

とはいえ、これも一時的な平穏の可能性も高い。
韓国、イタリア、イラン、日本…感染者が各国で増加する中で、全ての国との往来を止めることは出来ないだろうし、世界的な感染拡大はまだ始まったばかりだ。どこまでこの平穏を維持できるかどうかは正直分からないと思う。
自分も家族が日本にいる。毎日、日本の報道番組を見ながら心配し、連絡を取り合っている。

マーケットにおいては、初期段階は「過剰反応し過ぎだ」「新型コロナはSARSやMERSよりも致死率が低いから大丈夫だ」と楽観論を語る人も少なくなかった。それは市場参加者の不安を安易に煽ったりしないように、落ち着いて行動するようにという意図もあったのだと思う。

ただここで何度も書いているように、リスクと向き合うとき、「だろう」ではなく「かもしれない」で思考するのは基本中の基本だ。
大丈夫という根拠と確信がない限り、最悪のシナリオがどこにあるのかを想定して、そのリスクが顕在化したときに致命的なダメージを負わないようにすることが大切。
耳の痛い話かもしれないが、リスクを軽視するとどういう目に合うのかは、過去のマーケットでも繰り返されてきた事実を直視した方がいい。

超低金利を背景とした過剰流動性に支えられたブル・マーケット。
欧米の投資家にとっては、「中国の問題」「アジアの問題」でしかなかったCOVID-19の初期段階。
リスクに鈍感になりきっていた中で(悪材料への奇妙なほどの強さ)、この(リスクが欧米の投資家にとって)自らに降りかかってくるリスクとして認識されたとき、マーケットは大きく表情を変えた。
それだけ欧米投資家のグローバル・マーケットでの影響力が大きいということだろうが、この数週間は市場心理の複雑さ・奇妙さと怖さを感じる動きになった。

先週の下落を見る限り、短期的にはマーケットは過剰反応にも思えるが、それまでリスクを軽視し続けてきた反動でもあるのかもしれない。
リバウンドはあるかもしれないが、COVID-19の世界での感染拡大はまだ初期段階とみた方がよさそうだ。そしてそれが経済に与えたダメージはこれからどんどん数字になって表れてくる。

日本も正念場を迎えているが、感染が広がり始めた国では経済が停滞してしまっている。
それが生活に与えるダメージは計り知れない。
致死率は少なくみてもインフルエンザよりははるかに高いし、怖い病気ではあるが、それを恐れるあまり、過剰に反応することで生じる経済や生活への副作用の方も心配な状況になってきた。
感染予防は重要だし、それをシンガポールや台湾は積極的に早期に行ってきたから、現時点では日常が失われる事態にはなっていない。初期段階での対応(水際対策)が重要だということを思い知らされる状況だ。

いずれは治療方法も確立され、ワクチンも開発されていくだろうし、そう信じている。
危険な病気ではあっても、インフルエンザやはしかなどと同じような流行性の病気として、受け入れて経済活動を元に戻していかなければいけないときも来るだろう。
人間は生きていくために、仕事をし、活動し、生活の糧も得ていかなければならないのだから。
企業はビジネスを止めれば終わってしまう。そして雇用が失われる。
経済はお金が回ってこそのものだ。
今後は感染拡大を抑制する取り組みと、経済の維持との間で政治決断が求められてくる局面も来るだろう。

楽観は禁物だが、感情的な過剰反応も危険。
起きている現実と、日々変化していく情報をしっかりと把握しながら、将来起こりえるリスクと向き合う。
市場が感情的になり、パニックに陥っているとき、それはそれで過剰反応になりがちだ。
それに振り回されることがないよう、リスクが顕在化していないうちに起こりえるリスクに「かもしれない」で向き合い、リスクが顕在化したときに冷静に対処し、それをチャンスに変えていく。
リスクを軽視し、「(大丈夫)だろう」という楽観でいると、そのリスクが顕在化したときにパニックになり、それに振り回されることになる。

マーケットにおいても、企業のBCPにおいても、家族を守るということにおいても、大事なことだ。
不安や恐怖から感情的になる「臆病」と、客観的かつ冷静に状況を分析し、起こりえる「怖さ(リスク)を知り、それと向き合う」ことは違う。

今はマーケットは感情的になっているが、時間はかかっても少しずつ冷静さを取り戻していくだろうし、COVID-19の存在を受け入れていくことになるのだろう。市場は期待や不安で動いているとき、多くの場合、行き過ぎるものだから。
まだ世界的な感染拡大は初期段階である以上、不安がさらに高まり、終わりが見えないと感じてしまう局面もあるかもしれないが、医療・医学の力で、いつかそれも克服されて日常を取り戻せていくときも来る。
プロフィール

tetsu219

Author:tetsu219
元証券ディーラーです。
二十数年ディーラーやって、シンガポールにも一時期行ってヘッジファンドを立ち上げてみたりと色々やってきて、とある証券会社でディーリング部長になり、今はシンガポールでヘッジファンドの設立・経営をやっています。

基本仕事ネタです。
更新は気が向いたときだけ(^^;
でもこのブログを通じて運用を志す若い世代の人たちに何か伝えられること、その一助になればと思っています。

初期は限定記事にしていましたが、今は開き直って全部公開にしてますのでお気軽に(笑)

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