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【トレード】運用者としての道と挫折

この世界に夢を持ってくれる若手。
この道で生きていきたいという志を持った人材。

自分にとっては本当に大事な存在だし、業界にとっても「宝」といっていい。
ぜひその夢を叶えて欲しいと思う。

でも…その多くが道半ばで挫折することになる。
それも現実だ。

一人でも多くの運用者が育ち、成長し、成功できるようにしてやりたいと思う。
採用すれば、一人残らずなんとかしてやりたいと思う。

でもこの世界はそんなに甘くはない。

個人投資家、ディーラー、トレーダー、ファンドマネージャー、クオンツ、HFT(サイエンティストやプロフェッサーなんて肩書の人も多い)…etc。
無数の人たちがこの市場の中でせめぎ合い、戦い、収益を上げようと切磋琢磨している。
その中で生き残り、勝ち残れる強さを身につけるのは容易なことではない。

常に変化し続けるマーケットと向き合い、リスクと向き合い続ける仕事。
あなた達が「すごい」と憧れたような人たちは、きっと水面下では必死に足掻いている。
知らないことをそのままにせず、徹底的に調べたり、勉強したりするのは当たり前。
真摯に、ストイックにマーケットと向き合っているはずだ。

経験も知識も足りない若手が、そんな姿勢も、最低限の努力すらも出来ていなければ、道は開けるものも開けなくなる。
「努力しろ」「勉強しろ」と言われないと出来ないようでは話にならない。
全ては「自分のために」する勉強であり、努力。
そんなものは、やらされるものではなく、自分で必要と判断して稼げるようになるために勝手にやるもんだから。
ただ経験も知識も少ない時期に、その方向性が間違っているともったいないことにもなるから、指導をしてくれる先輩がいた方がよかったりもする。

長いこと未経験者の育成と携わってきてなんとなく感じること。
新卒が成功する確率がなかなか難しい…。
あんまりレッテル貼りたくないけど、学生気分が抜けていないからか、「やらされる」姿勢で取り組む人が多い印象がある。
年収が下がってでもチャンスを欲しいと取り組んできた中途採用組は、相対的には必死にやる印象がある。結果として、成功する確率も高いように思う。

常に結果が求められるこの仕事。
専業であれば、一定の収益を上げ続けなければ生活を維持できなくなる。
ディーラーであれば、毎月・毎年収益を上げ続けなければクビになる。
ファンドマネージャーなら、毎年一定の収益を上げていかないと投資家に解約されてしまう。

無数の人たちがしのぎを削っているこのマーケットで、「勝ち組」に回りたい?
それってすごく大変なこと。

まずは自分の小ささ、非力さ、無力さ、怖さを知ることだろう。
多くの賢人が言う。
「自分は度々間違いをおかす」
凡人である我々が「間違いをおかさない」わけがない。

だからこそ多くのことを知り、学ぼうとする。
少しでも理解できるようになろうとする。

マーケットなんて、結局ワケ分かんないのが当たり前。
でもなぜそう動いたのか、自分なりに納得できる理由を探し求め続ける。
ファンダメンタルズであれ、需給であれ、ニュースであれ、要因は様々な場所にある。

「今日は下がると思っていたのに上がった。」
そんなのはしょっちゅうだろう。
ならなんで想定と異なる動きになったのか?
それを調べたり、その日をうまく乗り切った人たちに聞いて回るなりしながら、少しでも自分が見落としていたものを見つける努力をし続ける。

自分が以前出演したラジオでお話したこと。
朝起きて、その日のシナリオを組み立て、会社に来てからは間違い探し。
そう、間違えていい。
大事なことは間違いにいち早く気がつき、対処し、損失を回避し、さらには収益にすら結び付けられればいいのだから。
ストラテジストやアナリスト、コメンテーターと、リアルマネーでリスクを取る人の決定的な違いだ。

「自分が下がると思っていた。」
その時点で、自分と同じような人は沢山いるはずだ。
市場参加者の投資行動や状況などの需給だって、違和感のあるマーケットの背景には存在している。
もう少し下がるはずなのに下がらない(背景には日銀のETF買いがあったり)。
妙にブレが大きい(CTAが暴れていたり)。

「何かおかしい」
と感じられることは武器にもなる。
でもそれを感じられるのは、真摯にマーケットと向き合い、思考し、シナリオを持てている人だからこそ。

大事なのは思考し続けること。
その思考プロセスにこそ価値がある。

よくあるのが、答えを知りたがる人。
上がる銘柄教えてもらう=教えてくれる人は責任を取ってはくれないし、その情報源がなくなれば収益は上げられなくなる。

稼いでいる人と会話することにすごく価値があるのは、その人が何を見て、それをどう評価し、判断しているのか、その思考プロセスを伺い知ることが出来ることにこそある。

答えの丸暗記。
テストで点取るためなら、それでも通用するだろう。
でも常に変化し続けるマーケットという世界で、それは通用しない。
思考プロセスをどう磨き、さらにはマーケットの変化に合わせて、その思考プロセスすら修正を加えていかなければならないこともある。

テクニカルを使って、そのシグナル通りにやれば儲かる?
そんな甘いもんじゃない。
自分も若手の頃(90年代w)、それなりにテクニカル分析は研究した。
1700銘柄ぐらいの過去数年分のデータを取得して、プログラム書いてバックテストしたり、パラメータ色々と修正しながらシミュレーションして最適化してみたり、複数のもの組み合わせたり…etc。
そういった知識や経験をもとに冊子を出させていただいたこともある。
でもね…それぞれのテクニカルの長所・短所、優位性や問題点などは見えてはきたけれど、自分にとってはツールの域を出ることはなかった。
ファンダメンタルズや需給、様々なものをしっかりとカバーしつつ、売買のタイミングを計るという道具として使っていた。

企業分析でもそう。
分析力を磨く。その道は非常に多くの人が取り組んでもいる。沢山の人が同じものを見て、「いい」「悪い」を判断している。そこに自分の優位性・アルファを見出すことはできるのか?

無数の人たちが、それぞれに取り組んでいる中で、自分の小ささを自覚したうえで、過信ではなく、自信を持てるレベルまで何かを高めるって、そんなに簡単なことじゃない。

そしてそこまで頑張っても、相場はその通りには動いてはくれない。
なぜ想定とは違う動きになったのか?
見落としていた需給や、様々な要因にも目をやり、思考を修正していかなければならない。

もっと深く掘り下げれば、それなりのものが見つかるのかもしれない。
でも教科書に書いてある程度のことで、簡単にうまくいくなら苦労はしない。
どういったアプローチをするにせよ、徹底的に掘り下げて、自分なりに納得できるだけのものにしなければ、自信を持って使える道具にすらならないだろう。マーケットというリスクだらけの世界の中では、付け焼刃では使い物にならない。

そんな世界で勝ち残りたいと思っているのなら、限られた時間の中で懸命に取り組んで欲しいと思う。
自分の未来や可能性に、誰よりも貪欲であって欲しい。
そして結果がどうあれ、悔いだけは残さないで欲しいと思う。

その道を閉ざされてしまった人。
挫折し、悔しい思いもあると思う。
でも運用の世界でうまくいかなかったからといって、全てが否定されるわけじゃない。

そこで目標に向かって取り組んだプロセスの中で、何かを学び、それを糧にして、自分が生きていくための道を見つけて欲しい。

「お金をもらう(給料・報酬・売上)」
ということは、誰かの役にたっているからこそ正当化される。
自分が社会や会社、組織の中で必要とされる人材になれるかどうか?

自分もある意味同じだ。
かつて稼いだことはあるかもしれないが、それなりの年齢にもなり、ピークをとうに過ぎ、自分自身でも納得できるだけの収益もあげられなくなった自分が中途半端に運用にしがみつくことよりも、より多くの人に役に立てる道は何か?を考えたからこそ、現在の選択がある。
胸を張って、責任感も持って、今の役割を果たそうとしているし、そこに現役時代以上のやりがいを感じてもいる。

つい先日、後輩から「マーケット大好きなのに、現役に戻りたいとか思わないんですか?」と問われた。投資家さんからも結構聞かれる質問だ。
自分の答えは「もっと面白いものがあるから。」
後輩「なんですか?」
自分「お前らだよ。」

過去、懸命にマーケットと向き合ってきた自分にも負けないぐらい、現在の自分が向き合っていることに誇りを持てている。

道が閉ざされた人。
自ら違う道を選んだ人。
一つの挫折ではあるのかもしれない。
でも胸を張って、自分の未来とその可能性と向き合っていってほしいと願う。
プロフィール

tetsu219

Author:tetsu219
元証券ディーラーです。
二十数年ディーラーやって、シンガポールにも一時期行ってヘッジファンドを立ち上げてみたりと色々やってきて、とある証券会社でディーリング部長になり、今はシンガポールでヘッジファンドの設立・経営をやっています。

基本仕事ネタです。
更新は気が向いたときだけ(^^;
でもこのブログを通じて運用を志す若い世代の人たちに何か伝えられること、その一助になればと思っています。

初期は限定記事にしていましたが、今は開き直って全部公開にしてますのでお気軽に(笑)

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