【マーケット】TOPIX廃止案って…
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52078440S9A111C1000000/
これね、主旨は賛同できるんですよ。
上場基準を厳格化して「東証一部上場」というステータスをより質の高いものにしていくこととか、質の高い流動性のある銘柄群で日本を代表する指数を構成していくこととか。
でも怖いのはその移行プロセス。
これだけパッシブ(指数連動型)運用の規模が拡大している現在、その資産残高は2000年4月をはるかに上回っているはず。
どうにも漏れ聞こえるニュースや記事を見ていると、そういった現実を軽視して「机上の議論」が先行している怖さを感じてしまう。
あのときの市場の大混乱を記憶している人たちは、みんな同じ懸念を持っているんじゃないかな。
現場を知る人(市場関係者)がどれだけ会議に参加しているのか分からないけど、そういった人の意見をしっかりと踏まえて議論を進めて欲しい。
「〇〇は会議室で起きてるんじゃない、現場で起きてるんだ。」
まさにそれ。
TOPIXがここまでベンチマークとして活用されてきた背景。
もちろん取引所関係者の方々の努力もあったと思う。
もう一方の代表的な株価指数である日経平均株価の抱える問題もある。
この指数は「修正単純平均」という方式で計算されているため、指数の算出が比較的簡単だし、裁定取引なども行いやすい(1バスケットあたりの金額が明確かつ、少ない金額で連動性を担保できる)。それもあって90年代はTOPIXに比べて高い流動性を持ち、活用が進んできた。しかし、(特に最近は)指数構成銘柄に偏りが多く、日本の株式市場の実態を表す指数として適切なのかどうか(これはNYダウなんかも同様)?
JPX日経400という指数を作ってみたり(それまでもいくつもの指数を作ってはなかなか機能しない状況が続いてきた)、色々な取り組みはされてきたと思う。
ただその活用が思ったように進まない。
「TOPIXを廃止しないから、ほかの指数が使われない。市場代表性を備えた指数を新しく作り、TOPIXを廃止すれば、それを使うしかなくなる」
そりゃそうかもしれないけどね、いきなり廃止になった場合の市場への影響度(インパクト)をちゃんと試算したうえで言ってます?
もしこのまんまの言葉だったとするなら市場への影響を軽んじた「暴論」と感じてしまう。
せめて数年~10年ぐらいの移行期間は必要だと思う。
規制やルールの変更は市場に大きな影響を与える。
それによって市場参加者の多くがダメージを受けることにもなりかねない。
もちろん指数計算の仕組みや、パッシブ運用の実態をしっかりと把握し、分析できている人にとってはとても大きな収益機会にもなるけれど。
2000年4月に日経新聞社が行った「日経平均採用銘柄の大量入れ替え」。
その当日、とてつもない規模での売買が行われ、市場では大きく稼いだ人もいたし、大きく傷ついた人もいた。まぁロクに調べずに負ける側が悪いっちゃあ悪い世界でもあるけれど。
でもあれがどれだけ市場に大きな傷を残したのか。
日経平均株価という株価指数はTOPIXに比べて、大きな下落をする羽目になり、それをベースに運用している人にはダメージを受けた人も多かっただろう。
そのコストを、指数連動型の運用に投資をしていた一般の投資家が背負わされた側面もある。
方向性が正しくても、やり方が悪ければ、それは悪しき改変として認識されてしまう。
市場を守る立場として、取引所の方とかは現場の声を届ける努力はしてくれてはいるのだろうけれど、ホント現場のことをしっかりと考慮しながら、議論を詰めて欲しいと願います。
あとせっかくの機会なんで、指数にあんまり興味がなかった人も、市場関係者を自負するなら、株価指数の算出方法とか、構成銘柄の状況とか、パッシブ運用や裁定取引の実情とか、色々と調べて勉強してみるといいかもしれません。
2000年4月は、それが市場にどういった影響を与えるか?を理解している人と、理解できていない人とではとんでもなく(収益に)差がつきましたから。